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ポール・クルーグマン「漁場再生:政府介入が役に立ちましてよ」

Paul Krugman, “When Government Intervention Works,” Krugman & Co., May 15, 2014.
[“Economies of Scales,” May 8, 2014; “Abusing Relativity,” May 10, 2014]


政府介入がうまく機能する場合

by ポール・クルーグマン

Max Whittaker/The New York Times Syndicate

Max Whittaker/The New York Times Syndicate

今月,Vox の編集者ブラッド・プルーマが,重要だけどほとんど知られてないお話をしてくれてる.このお話では,はじめに物事がひどいことになる:「かつて1980年代から90年代にかけて,アメリカの漁師たちは深刻な問題にはまっていた.魚群が急激に減少していたんだ.ニューイングランド最高の底魚ストックの一部は――カレイとかタラとかハドックも含めて――壊滅してしまっていた.そうした地域の沿岸コミュニティでは,何億ドルものコストが生じてしまった.」

そこで政府が割って入った.でも,みんなご存じのとおり,政府なんていつだって問題であって解決になんかなりっこないですわよね.だから,お次がどうなったかおわかりでしょ?

いや,わかんないかも.実際には,政府介入は大成功をおさめた.多くの漁場は息を吹き返し,漁師たちも消費者も便益を得ることになった.(プルーマ氏の記事「アメリカはこうして漁場の崩壊を食い止めた」はここで読める(英文))

気候変動と戦うのだって,漁場を救うのとそれほどかけはなれたことじゃない.やるべきとわかりきってることをちゃんとやりさえすれば,いまどんな人が予想してるのよりも,首尾よくかんたんにやれるんだ.

© The New York Times News Service


相対性理論の誤用

全米気候評価に対して『フォックスニュース』の「オールスター・パネル」がなんだかんだ言ってるのを,先日,『ニューヨーク』誌のジョナサン・チェイトが長文で批判している.ここでは要約しないでおこう.ただ,1点だけ掘り下げたい.チェイト氏は,保守派コラムニストのチャールズ・クラウトハマーを引用してる.クラウトハマーが科学的な合意を否定する理由は,こんなものだ――「特許事務所で働いていたアインシュタインが相対的だと示すまで,時間と空間は固定的だと99パーセントの物理学者は信じていた」からなんだって.

チェイト氏が述べているように,この論理でいくと,すべての科学を却下することになってしまう――なあ,もしかして明日誰かが「病気の細菌説は大間違いだ」って論文で明らかにするかもしれないだろ,だったら病院で治療器具を消毒するのなんかやめちゃえばいいじゃん,なんてね.

でも,ここには他にも間違いがある――アインシュタインがやったことを完全に誤解しちゃってるんだ.

そうだね,たしかにアインシュタインは空間と時間が相対的な概念だってことを明らかにした.でも,それまでに物理学者たちがやってきたことがなにもかも間違いだったってことをアインシュタインは示したの? もちろん,んなことはない――古典物理学は信じられないくらい有用で成功を収めた分野だったし,古典物理学で言われていたことで,相対性理論に照らして変えなくちゃいけなくなったことなんて,ほとんどないんだよ.はいはい,アインシュタインはそれが特殊な場合だって示しましたとも――だけど,その特殊な場合ってのは,ぼくらが普段の状況ででくわす速度や加速度にほぼ完璧に当てはまるんだよ.

というわけで,気候科学でアインシュタインに相当する人が登場したとしても,その人が発見するのは,既存モデルが断定していることの 99.9 パーセントは正しいってことだろう.ただ,極端な条件のもとでは,そうしたモデルは間違った答えを導くかもしれないってだけでね.

いや,もっと単純な言い方をしようかな:クラウトハマー博士,あんたはアインシュタインじゃないよ.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

アメリカの漁場の復活劇

by ショーン・トレイナー

世界中で,乱獲によって多くの漁場が衰退しつつある.2006年に学術誌『サイエンス』に掲載された研究によれば,いまの傾向が続けば,世界的な漁場の大半が,2048年までに崩壊しかねないそうだ.ところが,アメリカの領海内でその例外がいくらか起きている.保護規制が敷かれた場合に,魚群が回復しているのだ.

アメリカの漁業振興を進めるマグナソン=スティーブンス法 (Magnuson-Stevens Act) を1976年に議会が可決してからの20年で,多くの漁場が乱獲された.漁獲量減少への対応策として,1996年に議会はマグナソン=スティーブンス法を改正し,保護策を追加した.さらに2006年には,乱獲されてきた地域で毎年とってよい魚の数をきびしく制限する義務を課した.

「それまで,漁場の管理者たちは乱獲を防ごうとしてもっとおだやかな手法を使うことが多かったんです」と,天然資源保護協議会の弁護士セス・アトキンソンは解説する.これは,Vox の編集者ブラッド・プルーマによる最近のインタビューでの発言だ.「そうした管理者たちは,漁師たちが漁に出ていい日数を制限しようと試みたり,漁に出ていい漁船の数を制限しようと試みたりしました.しかし,これには制限を守っていることを説明する厳しい責任はなかったんです.」

大半の基準で見て,この新規制は成功をおさめている.1999年に,アメリカの漁業資源で「乱獲されている」に分類されたものは98件だったのが,2013年には40になっている.過去10年間で漁獲量の記録がもっとも高くなっているのは,2011年と2012年だ.

気候変動によって,アメリカの漁業には新たな難題が生まれつつあるなか,状況は不安定に見える.アメリカ海洋大気庁によれば,海水温度が上昇すると「捕食者がその捕食対象から分離されて生態系の混乱が起こりうる.また,そうした生態系の混乱から,魚群の繁殖力が落ちたりその魚群をとる漁師たちの漁業範囲から出て行ってしまうことになれば,経済的な混乱も生じうる.」

© The New York Times News Service


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