経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

フェイクニュースとファクトチェック: 事実を正せば意見も正せるか (2017年11月2日)

From VoxEU, “Fake news and fact checking: Getting the facts straight may not be enough to change minds

Oscar Barrera, Sergei Guriev, Emeric Henry, Ekaterina Zhuravskaya (02 November 2017)

「フェイクニュース」は今や欧米の政治を語る上で欠かせない要素となった.このコラムでは,2017年の仏大統領選挙期間中に実施された実験を題材に「代替的事実(オルタナティブファクト)」が高い説得力を持つことを示す.ミスリーディングな数値データに基づく物語に触れた有権者たちはポピュリストの主張する方向に意見を変え,ファクトチェッキングはこの効果を打ち消す役に立たない.それどころか,デリケートな論点(たとえば欧州の難民危機)に関して,公的な事実だけを有権者に伝えるのは場合によって逆効果で,極右への支持を増すおそれがある.

[Read more…]

サイモン・レン-ルイス 「緊縮という強迫観念を理解する」2016年3月2日

Understanding the austerity obsession (Mainly Macro, Wednesday, 2 March 2016)

Posted by Simon Wren-Lewis

よく言われる,ケインズをちょっと真似た言葉: 経済学者は医者のようであるべきだ.

マーティン・ウルフが書いている.「緊縮という強迫観念は,借り入れコストがこんなに低い時でさえも(原文ママ)気違いじみている.」 IMF, OECD, そしてちゃんとわかっている人たちはみんな賛成である.ところが,この緊縮強迫観念にかられている人たちこそが公共投資に関する決定権を持つ階層の人々なのである.米国で,ドイツで,英国で.興味深い質問が一つ浮かぶ.この人々が罹患しているのはみな同じ病気なのだろうか? [Read more…]

サイモン・レン-ルイス「緊縮を定義する(再論)」(2017年9月6日)

Defining austerity redux  (Mainly Macro, Wednesday, 6 September 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

どちらかというと退屈な,定義に関する投稿.

以前の文章邦訳)で,緊縮が何を意味するか明確な定義は存在しないこと,人によってどういう意味で使ってるかが異なることを論じた.私の「一般理論」論文の文脈では,通常の用法の1つを精密化する定義を試みた.ただ,以前の投稿のコメント欄を見ると,納得しなかった人もいるようだ.

ツイッターでの最近のやり取りから,明確な定義が未だに待望されていること,一方で私の以前の定義は改善の余地があることを確信した.その以前の投稿では,私は緊縮をある種の財政健全化 — 公共支出の削減 — に等しいと定義するのは2つの理由から不十分だと主張した.1つ目: 単に「公共支出削減」と言えばいいじゃないか! 2つ目はより重要で,この定義だと,景気過熱の高みにおける(経済に害をおよぼさない)財政健全化と,不況のどん底における支出削減を同じように扱ってしまうというものだ. [Read more…]

サイモン・レン-ルイス 「なぜBrexitがもう実質賃金の低下をもたらしたのか」(2017年8月31日)

Why Brexit has led to falling real wages

(Mainly Macro, Thursday, 31 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

一見,簡単に見える.ポンド安がBrexit後すぐ生じ,その後1ポンドで買えるユーロの数が減り,それが輸入価格を押し上げ,消費者物価に(タイムラグを伴って)影響して実質賃金を減少させた,と.しかし,実質賃金は物価だけでなく名目賃金にも依存している.なぜ名目賃金は,物価上昇にも関わらず変化しないままなんだろう?

[Read more…]

サイモン・レン-ルイス インフレ目標を引き上げる (2017年6月16日)

Raising the inflation target
(Mainly Macro, Friday, 16 June 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

もっと高いインフレ目標をという議論を理解するのは簡単だ.ただ2つのことさえ理解すればよい.第1に,もっとも効果的で信頼できる金融政策手段は実質金利に影響を与えることである.実質金利とは,名目金利から期待インフレ率を差し引いたものだ.第2に,名目短期金利にはゼロ近辺に下限(ゼロ下限)があるということだ.この2つをあわせると,不況の際に深刻な問題が生じる.不況に対処するには実質金利をマイナスの領域に動かす必要があり,どこまで負にできるかはゼロ下限によって制限されてしまう1からだ.つまり,金融政策だけでは不況から抜け出すことができないかもしれないということになる. [Read more…]

  1. 訳注: 名目金利を0まで下げても,実質金利は0-期待インフレ率までしか下げられないという制限がある. []

サイモン・レン-ルイス メディアの自己改革には権力の自覚が不可欠 (2017年8月7日)

The media cannot reform itself until it acknowledges its power
(Mainly Macro, Monday, 7 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

いつも読んでくださっている方々ならば,私がこの2〜3年の間えんえんと,メディアが世論形成に果たす影響力の重要性について書き続けてきたことをご存知だろう.(私がSPERI/News Statesman賞受賞記念講演で話した内容も主にその話題だった.) これは,メディアが特定の方向に政治的に偏向しているかどうかなどという党派的な話ではない.そうではなく,メディアは主要な政治的事件に影響をあたえ得るし,実際,時として重要な影響を与えていると主張しているのである.公平のために言っておこう.こうした主張はしばしば否定される — 特に,他ならぬメディア自身からは.

[Read more…]

サイモン・レン-ルイス 日本とその公的債務負担 (2017年8月18日)

Japan and the burden of government debt  (Mainly Macro, Friday, 18 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

日本について十分書いているとは言えない.今となっては,私の投稿の一部がありがたいことに日本語に翻訳されている1のだから,その埋め合わせをしてみるべきだろう.実際,ちょうど日本経済について書くべき大変よい理由がある.それは,非常に強かった2017年第2四半期のパフォーマンスである.年率換算した成長率は4%で,それに比べて英国は1.2%だ.最近の日本の成長に関して特に励まされる点は,貿易でなく内需に主導された成長であるという点だ.過去において日本は,英国と正反対の問題を抱えていたように思われる.すなわち,成長が貿易依存であり,内需が弱かった.

[Read more…]

  1. 訳注: こちらをどうぞ []

サイモン・レン-ルイス ネオリベラリズムと緊縮 (2016年10月21日)

Neoliberalism and austerity, (Mainly Macro, Friday, 21 October 2016)

Posted by Simon Wren-Lewis

ネオリベラリズムというものは首尾一貫した政治哲学などではなく,むしろ人々が議論を重ねるうちに広まった,相互に関連したアイデアの寄せ集めだと思っている.『民間セクターの起業家こそが富の創造者であって,国はただ彼らの邪魔をするだけだ』とか.『民間のビジネスにとってよいことイコール国の経済にとってよいことだ』とか(たとえ独占力を増したりレントシーキングを伴うものだったりしても).『民間ビジネスや市場に,国や労働組合が介入するのは常に悪である』とか….こうした考え方が支配的なイデオロギーとなっている現在では,誰もわざわざ自分たちのことをネオリベラルと呼んだりする必要はない.

[Read more…]

サイモン・レン-ルイス ヘリコプターマネーと財政政策 (2016年5月20日)

Helicopter money and fiscal policy, (Mainly Macro, 20 May 2016)

Posted by Simon Wren-Lewis

ジョン・ケイ とジョージ・ビボウ は2人とも政府の公共投資支出はよいアイデアだと思っており,そしてヘリコプターマネー(ヘリマネ1 )は目眩まし(ビボウ)ないしはごまかしによる財政政策(ケイ)だと思っているようだ.彼らは公共投資については正しいが,ヘリマネについては間違っている. [Read more…]

  1. 訳注: 原文ではHM []

サイモン・レン-ルイス 緊縮を定義する (2015年12月7日)

Defining austerity  (Mainly Macro, Monday, 7 December 2015)

Posted by Simon Wren-Lewis

最近のダブリンでの講演で私が示した緊縮の定義は,一般に広く使われているものではないが,よい定義だと自分では思っている.もっとも一般的な定義では,単に国家予算の赤字を削減しようとして財政支出を切り詰めたり増税したりすること,ということになるだろう.この定義の問題点は,ニック・ロウが不平を唱えていた(邦訳)通り,これでは財政健全化 (fiscal consolidation)という用語と同じになってしまうということだ.緊縮とは単に大幅な財政健全化のこと,と言ってもよいかもしれないが,これでは弱いように思う.

[Read more…]