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アレックス・タバロック「フェイスブック公聴会を理解する勘所:ペルツマンの規制モデル」

[Alex Tabarrok, “The Peltzman Model of Regulation and the Facebook Hearings,” Marginal Revolution, April 11, 2018]

フェイスブック公聴会について理解したければ,プライバシーやテクノロジーについて考えるよりも,政治家たちがのぞむことについて考える方が役に立つ.ペルツマンの規制モデルでは,利潤(企業ののぞみ)と低価格(地元有権者たちののぞみ)とのトレードオフをとるのに政治家たちは規制を使って,じぶんたちののぞみを最大化する.つまり,再選だ.ここでカギを握るのは,利潤と低価格のどちらでも政治家たちへのリターンは逓減する,という点だ.競争の働いている産業を考えてみよう.競争の働いている産業は,政治家にとって得るものはあまりない.そこで,彼らはその産業を規制して価格を上げたり企業利益を上げたりしたがるかもしれない.そのおかげで利潤をあげるようになった企業は,そうしてくれた相手〔政治家〕に報いるべく,選挙資金を出したり,その産業の利益の一部を政治家にとって最重要の選挙区への助成に回すだろう.価格が上がって消費者たちは腹をたてるだろうけれど,競争が働いている場合の価格からあまり上がりすぎなければ,政治家にとっての差し引き正味の利得はプラスになる.
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アレックス・タバロック 「車検は安全性を高めない」

[Alex Tabarrok, “Vehicle Safety Inspections Don’t Increase Safety,” Marginal Revolution, March 22, 2018]

2003年に書いたポスト「政治家と修理工が共謀してぼくからふんだくってる」で、年1回の自動車検査は安全性を高めずただ時間とお金を無駄遣いしながら不必要な修理をつくりだしていることを示す研究を引用した(別の研究もある)。その後ずっと、こうした無駄政策についてなにかとぶちまき続けている。

でも、今日はちょっといいニュースがある。自動車の品質が向上しつづけていることで、アメリカの一部の州でこうした「安全」検査を本当に打ち切るところがでてきている。たとえば、コロンビア特別区(2009年)、ニュージャージー(2010年)、ミシシッピ(2015年)が車検をやめている。とはいえ、車検の撤廃をめぐって、いまなお多くの州で熱い論戦が交わされている。

「もし[車検の撤廃が]可決されると、夜もおちおち寝ていられなくなりますよ」とテキサス州の上院議員 Eddie Lucero は言う。「どうして[撤廃案を]可決して自分やほかのテキサス人を危険な目に合わせようなんて気を起こしたんです?」 同様に、ユタ州の下院議員 Jim Dunnigan はこう主張する――彼の地元住民は「ブレーキが壊れ、マフラーが外れ、タイヤがどこかにいくまで、運転しつづけるでしょうよ。」潜在的な安全面の懸念事項に自動車の所有者が確実に対処するようにする唯一の方法は車検なのだと彼は言う。こうした主張は、大半の自動車サービスステーションが支持している。総じて彼らは車検の実施で利益を得ており、車検制度の撤廃は「確実に事故を増やす結果になる」と主張している。

これは、Hoagland & Woolley の新論文からの引用だ。この研究では、車検制度を撤廃したニュージャージーを使って、撤廃が事故増加につながるかどうかを検証している。アメリカ全土から集められた死亡事故率の精密なデータと合成統制法 (synthetic control methodology) を使って、Hoagland & Woolley はこういう結論を導いている:

(…)〔車検の〕義務を取り除いても、1人あたり交通事故死も、とくに自動車による1人あたり交通事故死も、自動車による交通事故頻度も、有意に増加しない結果となった。したがって、自動車安全性検査は政府予算の効率的な使い方とは言えず、交通事故における自動車の故障が果たす役割になんら有意な減少効果をもたらすようには見えない。

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そろそろ、年1回の車検をやめて、車検制度をまるまる無くしてしまうなり、メリーランドのように自動車譲渡時にのみ安全性検査を課す制度に移行するなりしていい頃合いだ。譲渡時の検査も、ぼくには必要だと思えない。譲渡時こそ、義務があろうとなかろうと買い手が検査を実施する場面にほかならないからだ。ともあれ、少なくともその制度でも車検回数は大幅に減るだろう。

Hat tip: Kevin Lewis.

アレックス・タバロック 「囚人の食料費を懐に入れた保安官が告発者を牢屋に入れる」

[Alex Tabarrok, “Sheriff Takes Food from Prisoners, Locks up WhistleBlower,” Marginal Revolution, March 20, 2018]

アラバマ州の郡保安官が、囚人の食費予算を使って住宅を購入した。一週間前にこの新聞見出しを見かけた時には、「またホワイトカラーのありきたりな不祥事ネタか」と思って受け流した。その後の展開に促されて、昨日になってもっと調べてみた。実情は、想像していたのよりもずっとひどかった。保安官がやったことは、完璧に合法なんだそうだ。
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アレックス・タバロック「インドには正式の月給雇用が欠落している」

[Alex Tabarrok, “India Lacks Formal, Salaried Jobs,” Marginal Revolution,
February 24, 2018]

アメリカでは、労働者の大多数はとても大きな企業で働いていて、自営業はほんの10パーセントにすぎない。一方、インドでは、大きな企業で働いている労働者はほとんどいなくて、80〜85パーセントが自営業者だ。この点は以前のポストで指摘した(「インドはアメリカより起業の盛んな社会だ(そして,それが問題だ)」)

LiveMint が要約している世界銀行の報告書草稿に掲載されているデータによると、インドには正式な月給稼ぎの雇用が少ない。アメリカのような先進国と比べて少ないだけでなく、そこまで発展していない他の多くの国々と比べても少ないのだ。

この問題の解決は、労働者の人数が急速に増えているインドにとって最大の課題だ。土地改革と労働市場の規制緩和が最初の一歩だ。ここでいう規制緩和には、企業の成長を抑制するオウンゴールを止めることや、馬鹿みたいに「気前のいい」育児休暇手当をもとめる法制化をやめることなども含まれる。

アレックス・タバロック 「猫はお好き?」(2006年1月22日)/「トキソプラズマという名の人形使い」(2009年7月18日)

●Alex Tabarrok, “Do you love cats?”(Marginal Revolution, January 22, 2006)


トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)はその驚くべき特性のために進化生物学者の間でもてはやされている寄生虫の一つだ。トキソプラズマの住まいは猫の腸内。トキソプラズマは猫の腸の中で卵を産み、その卵は糞に付着して外に排出される。そしてその糞はネズミに食されることが多い。さて、問題はネズミから再び猫(新たな宿主)の体内にどうやって戻るかだが、驚くべきはここだ。トキソプラズマは(猫の糞を食べた)ネズミの脳に感染してネズミの行動をそれとなく――己の繁殖力を高めるような方向に――変化させる。トキソプラズマに感染したネズミは猫をそれほど怖がらなくなり、その結果として猫の餌食となる(猫に食べられる)可能性が高まることになるのだ!1

まさかの展開がもう一つ。トキソプラズマは多くの人間にも感染するらしい

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●Alex Tabarrok, “The Return of the Puppet Masters”(Marginal Revolution, July 18, 2009)


数年前のことになるが、「猫はお好き?」と題した拙エントリーで次のように語った。

トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)はその驚くべき特性のために進化生物学者の間でもてはやされている寄生虫の一つだ。トキソプラズマの住まいは猫の腸内。トキソプラズマは猫の腸の中で卵を産み、その卵は糞に付着して外に排出される。そしてその糞はネズミに食されることが多い。さて、問題はネズミから再び猫(新たな宿主)の体内にどうやって戻るかだが、驚くべきはここだ。トキソプラズマは(猫の糞を食べた)ネズミの脳に感染してネズミの行動をそれとなく――己の繁殖力を高めるような方向に――変化させる。トキソプラズマに感染したネズミは猫をそれほど怖がらなくなり、その結果として猫の餌食となる(猫に食べられる)可能性が高まることになるのだ!

まさかの展開がもう一つ。トキソプラズマは多くの人間にも感染するらしい

さて、最新の研究結果を紹介しておこう。

大半の国ではその国の2~6割の人間がトキソプラズマに感染する可能性を秘めている。・・・(略)・・・本研究はトキソプラズマに感染すると(反応速度が鈍ることで)交通事故に遭うリスクが高まることを前向きコホート研究を通じて初めて立証したものである。我々の研究によると、・・・(略)・・・抗トキソプラズマ抗体価の高い感染者は交通事故に遭う確率がおよそ16.7%――トキソプラズマに感染していない人物の6倍以上の値――に上るとの結果が得られている。

Rh陽性の血液型の人物はトキソプラズマに感染しても交通事故に遭うリスクがいくらか抑えられるようだ(詳しくはリンク先の論文を参照されたい)。ところで、トキソプラズマに感染した人間は(ネズミがそうであるように)猫に食べられやすくなったりするのだろうか? リンク先の論文ではこの点について何も語られていないが、きっとそうに違いないというのが私の見立てだ。

  1. 訳注;そしてトキソプラズマはネズミを食べた猫に感染することになる。 []

タイラー・コーエン 「花の数は愛の深さを示す尺度?」(2015年2月13日)/ アレックス・タバロック 「一経済学者が愛する妻に贈ったバレンタインデーのプレゼント」(2008年2月14日)

●Tyler Cowen, “How much should you spend on Valentine’s Day flowers?”(Marginal Revolution, February 13, 2015)


すべては相手を思いやっていることを目に見えるかたちで伝えるため。

「毎年のように記録が塗り替えられるんです」。そう語るのは(ニューヨーク市の)フラットアイアン地区でフラワーショップの「ベル・フルール」を経営するメレディス・ワガ・ペレス。バレンタインデーに花を買い求めにくるお客の中には5000ドル(およそ53万円)もの大枚をはたくのも厭わない強者もいるという。

昨年のことだ。アレクス・デグチャレフは付き合って3年と少しになる彼女(ルル)に結婚のプロポーズをするためにフラットアイアン地区にある「オーデ・ア・ラ・ローズ」にバラの配送を注文した。デグチャレフがそのために支払った金額は6000ドル(およそ64万円)。

「1114本のバラを手に入れたかったんです」とデグチャレフ。(ニューヨーク市の)ベイ・リッジ暮らしの33歳。「僕たちが付き合ってからの日数と同じ数なんです」。

友人にも手伝ってもらってモンタークの岬一面に1000本を超えるバラをばら撒き、その場で彼女にプロポーズしたという。

リンク先では他にもバレンタインデー絡みの逸話が色々と紹介されているが、全体的な印象としては逆効果になりかねないんじゃないかと思われるところだがどうだろうか? カウンター・シグナリングの支持者1じゃなくてもあるいは革命的非モテ同盟の一員じゃなくても私と同意見なんじゃなかろうか。

情報を寄せてくれたDに感謝。

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●Alex Tabarrok, “What an Economist gets his Wife for Valentines”(Marginal Revolution, February 14, 2008)


「こんな品2をプレゼントしても平気でいられるのは君のことを心の底から本当に愛している人間だけなんだよ」。いくらそう説明しても妻はこちらが期待したほどには心を動かされてはいないように見受けられたものだ。

私に倣いたいようなら(それだけの覚悟をお持ちのようなら)こちら3で適当な品物を見繕うことができる。

  1. 訳注;「カウンター・シグナリング」については本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●タイラー・コーエン 「パジャマを着て交渉、スーツ姿でブログ書き」/「カウンター・シグナリング」(2017年12月9日) []
  2. 訳注;「あでやかなダイヤモンドのネックレス」(stunning diamond necklace)というタグが付いているだけのネックレス []
  3. 訳注;リンク切れ。代わりに例えばこちらを参照されたい。 []

アレックス・タバロック「Uber運転手報酬の男女差」

[Alex Tabarrok, “The Uber Pay Gap,” Marginal Revolution, February 7, 2018]

Cody Cook, Rebecca Diamond, Jonathan Hall, John A. List, & Paul Oyer の論文では、100万人以上の Uber 運転手と何百万件もの走行にもとづくデータを使って、女性の Uber 運転手の方が男性運転手に比べて報酬が 7% 少ないことを明らかにしている。ただ、この論文の新しいところは、Uber の大量データのおかげで、報酬の落差が存在する理由について非常に詳しく理解できるようになっている点だ。差別ではないんだよ:
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アレックス・タバロック 「われはエンピツ」(2018年1月14日)

●Alex Tabarrok, “I, Pencil Revisited”(Marginal Revolution, January 14, 2018)


レオナルド・リード(Leonard Read)が物した “I, Pencil”(「われはエンピツ」)と言えば、鉛筆のようなごくシンプルな代物でさえも出来上がるまでには世界中の大勢の人々――お互いに顔を知りもしなければ、一体自分が何の生産に関わっているのかさえもはっきりとは気付いていない大勢の人々――の協力と連携が欠かせないことを鉛筆目線(鉛筆が主人公の物語仕立て)で物語ったエッセイだ。リードの鉛筆の喩え話を一躍有名にしたのはミルトン・フリードマン。テレビで放映された「選択の自由」シリーズの中で紹介されたのがそのきっかけだが、「この鉛筆を独力で一から作れる人は世界中どこを探してもいないのです」とはフリードマンの言だ。リードの「われはエンピツ」にロマンチックな捻りを加えたのがコーエンと私が出演している(動画の)“I, Rose”(「われはバラなり」)だ。

こういった経緯を踏まえた上でというわけではなさそうだが、あたかも「見えざる手」に導かれるかのようにしてと言うべきか、ニューヨーク・タイムズ紙で鉛筆工場の内部の様子が報じられている。鉛筆の製造工程が一連の写真に生き生きと収められているが、鉛筆が出来上がるまでの工程が驚くほど複雑である様が伝わってくる。

アレックス・タバロック 「『自動車を作る小麦』に『鋼を作るビーバー』」(2018年2月4日)

●Alex Tabarrok, “How Do Beavers Make Steel?”(Marginal Revolution, February 4, 2018)


国際貿易に関するデイビッド・フリードマン(David Friedman)のものの見事な説明を一躍有名にしたのはスティーヴン・ランズバーグ(Steven Landsburg)の『The Armchair Economist』(邦訳『ランチタイムの経済学』)だ。「アイオワでの自動車の収穫」と題された章(pdf)での紹介がきっかけで一挙に有名になったのだ1

アメリカでは「二通りのテクノロジー」を頼りにして自動車の生産が行われているというのがデイビッドの発見だ。二通りのテクノロジーとは? デトロイトで「製造する」というのがまず一つ。アイオワで「栽培する」というのがもう一つ。デトロイトで「製造する」という一番目のテクノロジーについては誰もが知るところなので説明は不要だろうが、アイオワで「栽培する」という二番目のテクノロジーについてはいくらか説明させてもらうとしよう。まずはじめにやるべきことは小麦の種を蒔くことだ。これが自動車の「原料」になる。それからしばらく小麦の成長を見守る。数ヶ月ほど経って小麦が実ったら収穫して船に乗せる。小麦を積んだその船は太平洋を西に向かって突き進む。数ヶ月もするとその船は「トヨタの車」を積んで戻ってくるというわけだ。

つい最近ロバート・アレン(Robert Allen)の『Global Economic History』(邦訳『なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか』)を読んで知ったのだが、どうやらデイビッド・フリードマンは300年以上も先を越されていたようだ。フランスの貿易商を相手にした毛皮貿易が隆盛を極めている最中にミクマク族の一介のインディアンが次のように語っているのだ2

我らが兄弟たる「ビーバー」は万事をうまく運んでくれる。我々のためにやかんに斧、剣、ナイフを作ってくれるだけではない。地面を耕すという苦労をせずとも食べ物も飲み物も与えてくれるのだ。3

  1. 訳注;以下の引用は拙訳 []
  2. 訳注;以下の引用は拙訳 []
  3. 訳注;フランスの貿易商に「ビーバーの毛皮」を売る(引き渡す)のと引き替えにやかんに斧、剣、ナイフ、飲食料を手に入れる、という意味。 []

アレックス・タバロック「多様性 vs. 平等: 女性への厚遇差別」

[Alex Tabarrok, “Diversity versus Equality,” Marginal Revolution, January 28, 2018]

「オーストラリア行動経済学チーム」が,雇用に関する無作為化実験をしている (pdf).実験では,オーストラリア行政府の上級職応募者が調査され,ランクをつけられた.性別・マイノリティ地位・先住民地位が推測できる場合の扱いと応募者の素性が伏せられた場合の扱いを比較することで,研究チームは素性を伏せることの効果と偏見を検証できた.
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