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サイモン・レン-ルイス「緊縮を定義する(再論)」(2017年9月6日)

Defining austerity redux  (Mainly Macro, Wednesday, 6 September 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

どちらかというと退屈な,定義に関する投稿.

以前の文章邦訳)で,緊縮が何を意味するか明確な定義は存在しないこと,人によってどういう意味で使ってるかが異なることを論じた.私の「一般理論」論文の文脈では,通常の用法の1つを精密化する定義を試みた.ただ,以前の投稿のコメント欄を見ると,納得しなかった人もいるようだ.

ツイッターでの最近のやり取りから,明確な定義が未だに待望されていること,一方で私の以前の定義は改善の余地があることを確信した.その以前の投稿では,私は緊縮をある種の財政健全化 — 公共支出の削減 — に等しいと定義するのは2つの理由から不十分だと主張した.1つ目: 単に「公共支出削減」と言えばいいじゃないか! 2つ目はより重要で,この定義だと,景気過熱の高みにおける(経済に害をおよぼさない)財政健全化と,不況のどん底における支出削減を同じように扱ってしまうというものだ. [Read more…]

サイモン・レン=ルイス「格差是正か貧困対策か」(2017年4月18日)

Simon Wren-Lewis, “Inequality or poverty, (Mainly Macro, 18 April 2017)

トニー・ブレアの有名な言葉にこういうものがある:

人々の収入に開きがあるのを気にかけていないということではない。大金を稼ぐ人々がいるかどうかでもない。それらは私の関心ごとではない。私が気にかけているのは、機会に恵まれず、不遇で、貧しい人々だ。

労働党政府を含めほとんどのひとは、ブレア元首相が格差是正ではなく貧困対策に注力するつもりだと解釈しただろう。格差是正の歴史的トレンドと、その他さまざまなものとともに労働党が推し進めた貧困削減プログラムがそこに与えた影響(そしてこのプログラムが近い将来取り消されるかもしれない可能性)については、リックの素晴らしい議論を参照してもらいたい。 [Read more…]

サイモン・レン-ルイス 「なぜBrexitがもう実質賃金の低下をもたらしたのか」(2017年8月31日)

Why Brexit has led to falling real wages

(Mainly Macro, Thursday, 31 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

一見,簡単に見える.ポンド安がBrexit後すぐ生じ,その後1ポンドで買えるユーロの数が減り,それが輸入価格を押し上げ,消費者物価に(タイムラグを伴って)影響して実質賃金を減少させた,と.しかし,実質賃金は物価だけでなく名目賃金にも依存している.なぜ名目賃金は,物価上昇にも関わらず変化しないままなんだろう?

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サイモン・レン=ルイス「独立している中央銀行は助言役でありうるか?」

[Somon Wren-Lewis, “Could independent central banks be advisory? ” Mainly Macro, September 4, 2017]

いまや財政審議会(あるいは独立財政機関)は先進国でありふれたものになった〔財政審議会とは政府から資金提供されるが政府から独立し財政問題について公的な助言を行う機関のこと〕.こうなると,新たな疑問がわいてくる――「こうした審議会がみんな助言役なのはどうしてだろう,中央銀行は金融政策をみずから行っているじゃないか?」 財政政策に関しては助言を〔政府外の組織に〕委任している一方で [1],金融政策に関しては管理運営を委任している.今回のポストでは,政策手段の変更方法の管理に関心を集中して,政策目標の管理は脇に置く.話を明快にするために,政府はなおも金融政策(e.g. インフレ目標)と財政政策(e.g. 5年後の赤字目標)の最終的な目標を管理していると想定する.
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サイモン・レン-ルイス インフレ目標を引き上げる (2017年6月16日)

Raising the inflation target
(Mainly Macro, Friday, 16 June 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

もっと高いインフレ目標をという議論を理解するのは簡単だ.ただ2つのことさえ理解すればよい.第1に,もっとも効果的で信頼できる金融政策手段は実質金利に影響を与えることである.実質金利とは,名目金利から期待インフレ率を差し引いたものだ.第2に,名目短期金利にはゼロ近辺に下限(ゼロ下限)があるということだ.この2つをあわせると,不況の際に深刻な問題が生じる.不況に対処するには実質金利をマイナスの領域に動かす必要があり,どこまで負にできるかはゼロ下限によって制限されてしまう1からだ.つまり,金融政策だけでは不況から抜け出すことができないかもしれないということになる. [Read more…]

  1. 訳注: 名目金利を0まで下げても,実質金利は0-期待インフレ率までしか下げられないという制限がある. []

サイモン・レン=ルイス「イギリスで緊縮の過ちはどうやって起きたのか」

[Simon Wren-Lewis, “How did the UK austerity mistake happen,” Mainly Macro, August 14, 2017]

グローバル金融危機 (GFC) とその帰結としておきた不況が進行中だった当時,労働党政府は財政刺激を使ってその影響をやわらげることはできないかと検討した.財政刺激を打てば,すでに不況の結果として増加しつつあった財政赤字をいっそう増やすことになる――だが,金利引き下げだけではこの危機に対応するのに不十分なのも彼らはわかっていたし,景気後退期の赤字を人が気にかけないのも知っていた.これは「経済学101」つまり基礎的なマクロ経済学だ.そして,この中身は 100% 正しい.
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サイモン・レン=ルイス「マクロ経済学におけるミクロ的基礎づけヘゲモニーを医学になぞらえると」

[Simon Wren-Lewis, “Medicine and the microfoundations hegemony in macroeconomics,” Mainly Macro, August 25, 2017]

主に経済学者向けの話.
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サイモン・レン-ルイス メディアの自己改革には権力の自覚が不可欠 (2017年8月7日)

The media cannot reform itself until it acknowledges its power
(Mainly Macro, Monday, 7 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

いつも読んでくださっている方々ならば,私がこの2〜3年の間えんえんと,メディアが世論形成に果たす影響力の重要性について書き続けてきたことをご存知だろう.(私がSPERI/News Statesman賞受賞記念講演で話した内容も主にその話題だった.) これは,メディアが特定の方向に政治的に偏向しているかどうかなどという党派的な話ではない.そうではなく,メディアは主要な政治的事件に影響をあたえ得るし,実際,時として重要な影響を与えていると主張しているのである.公平のために言っておこう.こうした主張はしばしば否定される — 特に,他ならぬメディア自身からは.

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サイモン・レン=ルイス「医者としての経済学者」(2017年4月6日)

Simon Wren-Lewis, “Economists as Medics” (Mainly Macro, 6 April 2017)

先日、経済学はいろんな点で医学に似ているという私の長年の見解についてツイッターで絡まれた。もちろん経済学は正確には医学のようではない。ダニエル・ハウスマン曰く、経済学は不正確な遊離科学だ。しかしほとんどの医者が何に時間を費やしているか考えてみてほしい。彼らは高度に不確かな環境で問題解決の仕事をしていて、限られたヒントみで先に進まなくてはならない。彼らは一部の問題に対する解決策を持っているが、そうした解決策が信頼できる度合いはさまざまである。 [Read more…]

サイモン・レン-ルイス 日本とその公的債務負担 (2017年8月18日)

Japan and the burden of government debt  (Mainly Macro, Friday, 18 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

日本について十分書いているとは言えない.今となっては,私の投稿の一部がありがたいことに日本語に翻訳されている1のだから,その埋め合わせをしてみるべきだろう.実際,ちょうど日本経済について書くべき大変よい理由がある.それは,非常に強かった2017年第2四半期のパフォーマンスである.年率換算した成長率は4%で,それに比べて英国は1.2%だ.最近の日本の成長に関して特に励まされる点は,貿易でなく内需に主導された成長であるという点だ.過去において日本は,英国と正反対の問題を抱えていたように思われる.すなわち,成長が貿易依存であり,内需が弱かった.

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  1. 訳注: こちらをどうぞ []