アメリカは、血漿の OPEC と呼ばれている。何億ドル相当もの血漿を他国に輸出しているからだ。どうして血漿業界でアメリカがこれほど独占的になっているんだろう? なぜなら、アメリカではドナーにお金を払うのが合法だからだ。対価を払えば、ドナーからの供給は増える。カナダだと、州によって有償での献血が許されているところもあるけれど、カナダ人が利用する血漿の8割はアメリカからの輸入ものだし、さらに悪いことに、州によっては有償での献血を禁止していたり、これから禁止しようか検討中だったりする。こうした禁止に反対するすばらしい書簡が公開されている:
我々は、医療倫理学、ビジネス倫理学、および/または規範倫理学や、個人の行動に影響するインセンティブなどの仕組みを研究する大学の経済学者です。我々は、社会的厚生を改善しようという目標を共有しています。
血漿の提供に対する補償を禁止するいかなる法律・法案(以下「法案」)についても、強い留保をつけます。(…)血漿の提供を得て PDMP を製造することに反対する議論は、倫理的なものも、経済的なものも、ともに脆弱です。さらに、さまざまある重大な倫理的な事項を考慮すれば有償モデルが支持され、したがってこうした法案の反対する根拠にもなっております。
書簡は、「有償での提供によって無償提供が駆逐されてしまう」といったいろんな反対論も注意深く論じている:
有償モデルでは、ドナーがみずから対価を辞退する余地を残していますし、無償モデルが並行して機能することも可能となっています。アメリカ合衆国はまさにそのようにしている国で、カナダに比べてアメリカでの自発的な無償の血漿提供はおおよそ50パーセント上回っています。血漿ドナーに対価が払われるドイツ・オーストリア・チェコ共和国でも同様で、1人あたりでみた自発的で無償の血液提供率はいずれもカナダを上回っています。
「でも、有償で提供された血漿って安全面で劣るんじゃないの?」――
カナダ血液サービス (Canadian Blood Services) の CEOグレアム・シャー博士によれば、「有償ドナーから得られた血漿タンパク質製品が安全面で劣ったり危険であったりするという話は、明白に虚偽です。対価を払われない無償のドナーの血液から製造されたものと同じく安全です。」
書簡に署名している面々は、ノーベル経済学賞の受賞者 Alvin Roth と Vernon Smith や、哲学者の Peter jaworski(執筆作業の大半を担当)や、Nicola Lacetera と Mario Macis のようなインセンティブと血液提供を深く研究してきた専門家たちだ。ぼくも署名している。
市場やお金を敵視する人々の大好きな神話として「献血にお金を払う/売血は、無償で献血する人々の意欲を下げてかえって献血量を減らす&意識の低い人の金目当ての売血で血液の質が下がる」というのが蔓延しているので、こういう記事は有益です!
どうもです.タバロックはこのネタはちょいちょい書いてますね.これとか: http://wp.me/p1ydPE-6ZP