経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

アレックス・タバロック「ワクチン接種の現状バイアス」(2021年8月4日)

[Alex Tabarrok, “Status Quo Bias,” Marginal Revolution, August 4, 2021]

ワクチン追加接種に関する CNN のリード文に,こう書かれていた:

コロナウイルス・ワクチンの3回目接種を提供するのを検討する頃合いかもしれないと生物薬剤企業ファイザーが発表した.だが,2回接種を終えている人々に追加接種を行うよりも,いまワクチン未接種の人たちに接種を行う方がより便益が大きいと,多くの医師や公衆衛生当局は主張している.

3回目の接種を後回しにして2回目の接種を増やすのは,完璧に理にかなった見解だ.ここで面白いのは,今日,3回目接種を後回しにするのは通説になっている一方で,その主張こそまさに,ぼくが2回目接種を後回しにしようと言ったときと同じ主張だってというころだ.つまり,さかのぼること2020年12月に,「初回接種優先」(first doses first; FSF) を主張したときとまったく同じことが言われているわけ.とはいえ,ここで言いたい要点は,「初回接種優先」論が勝利したってことじゃない.ここでの要点は,あのときもいまも,ぼくらが目の当たりにしてるのは現状バイアスだってことだ.

去年の12月時点では,現状バイアスとはつまり,2回接種に固執すべき理由をなんとか見つけようとしたがるってことだった.そのため,2回目の接種を後回しにするのは「リスクが大きい」とそうした人たちは主張していた.今日,やっぱり人々は現状に固執したがって,3回目接種は「リスクが大きい」と主張してる――つまり,3回目接種を後回しにするリスクの方が小さいと言ってる.その主張,つまり「より少ない接種回数でより多くの人々を保護する方が賢明だ」という主張は変わっていないけれど,そのことを認識すらしないままで,人々はかつて自分が否定した主張をいま述べている.

あのときもいまも,この論理は人々を説得していない.でも,あのときはこの論理は現状維持に反していたのに対して,いまは現状維持を支持している.それで,かつて否定されたものがいまは受け入れられているわけだ.12月にはリスクが大きいと言われていた選択肢が,いまやより安全な選択肢になっている.動機先行の理由付けがなされるとき,動機が変わると理屈も変わる.

多謝: Iamamish

追記: コメント欄で反論が来るだろうね,「でも,実際,あのときといまでは状況が異なるじゃないか」.たしかに,事情も状況も変わってる.でも,それは唯一の主要要因ではない,というか主要要因ですらない.かりにアメリカが3回接種体制で出発していたとしたら,3回目接種後回しは,2回接種体制での2回目接種後回しと同じくらい「リスクが大きい」ように思われていただろう.

追記2: 今日,ワクチン接種国が拡大するまで追加接種を一時停止するよう WHO は呼びかけた


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください