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アレックス・タバロック「安全性不足な車だって人命を救える」

[Alex Tabarrok, “Unsafe Cars Can Save Lives,” Marginal Revolution, May 23, 2016]

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Jalonik: 安全性評価で星ゼロなのをみてもまだ怖じ気づかないとしても,その自動車がグシャグシャになってるところを見ればさすがに怖じ気づくだろう.安全性の仕様が最低限になっているインド向けに設計された5車種が,ちょうど衝突テストで星ゼロ評価を与えられたところだ.

テスト結果を出したのは,ロンドンを拠点とする「グローバル新車評価プログラム」(Global New Car Assessment Program) だ.(…)同グループはインド市場向けに製造された7車種をテストして,そのうち5車種に成人の安全性に関して星5つ中の星ゼロの評価を下した.対象の5車種とはルノー KWID,マルチ・スズキ「セレリオ」,マヒンドラ「スコルピオ」,ヒュンダイ「イオン」で,いずれもエアバッグ非搭載.

「グローバル新車評価プログラム」の事務総長 David Ward は『ウォールストリートジャーナル』にこう語っている

「世界のどこの地域であろうと,ここまで明らかに基準を下回る新モデルをメーカーが開発していてはならないと,「グローバル新車評価プログラム」では考えています」と彼は言う.「自動車メーカーは,新モデルが確実に UN の最低衝突テスト規制を通るようにすべきですし,エアバッグも搭載すべきです.」

もっと詳しくみてみよう.この5車種は,すごく安価だ.たとえばルノーの KWID は4000ドル未満で手に入る.インド市場では,こうした車種がバイクと競合している.インドの家計のたった6パーセントしか車を所有していないのに,バイクなら47パーセントが所有している.全体でみると,インドでは車よりもバイクの方が5倍以上もある

また,バイクは車よりもずっと危険でもある

[アメリカの]連邦政府による推計では,2013年に,1マイルあたりの死者数でバイクはクルマの26倍を超えている.

同様の比率は,イギリスやオーストラリアでも見られる.インドでこの比率が低くなってよさそうな理由はいくつか思いつく――たとえば,スピードが遅いことが挙げられる.他方で,比率がもっと高くてもよさそうな理由もいくつか思いつく(上の写真をごらんあれ)

インドの車の一部にエアバッグが搭載されてないのを GNCAP は懸念しているけれど,インドのバイクのどれⅠ台としてエアバッグなんて搭載してないってことを忘れてる.星ゼロの車だって,バイクよりはずっと安全だ.エアバッグはだいたい200ドルから400ドルのコストがかかる(いくぶん古い推定だけど,右を参照:a, b, c).それに,ものすごく効果的なわけでもない.(たとえば,レヴィットとポーターの計算によると [PDF],1997年にエアバッグが救った人命は550人だったのに対して,シートベルトは15000人を救ってる.) 250ドルのエアバッグを搭載したとすると,5000ドルの車のコストが5パーセント上がることになる.自動車の価格が上がれば,比較的に安全な自動車の数は減り,比較的に危険なバイクの数は増える.よって,エアバッグを義務化すると,もっと重大な死傷者数を増やす結果になりかねない.

もっと視野の広い論点を言えば,今日のインドで,250ドルといえば1人あたり GDP (購買力平価で5700ドル)の約 5 パーセントにあたる.エアバッグでえられる限定的な人命保護に支払うにしては高い対価だ.アメリカでも,1人あたり GDP の 5 パーセントにあたる2750ドルをエアバッグに払おうという人は多くないだろう.だったらなぜインド人だけ別扱いになる理由がある? (Mannering と Whinston の推計によれば,1990年代にアメリカ人が払ってもよいという気になった金額はおよそ500ドルだった).インドの所得が上がるにつれて,車を求める人は増えていく.すると,その人たちはもっとすぐれた安全な車を求めるようになるだろう.だけど,それくらいなら払ってもいいやって気にならないうちから人々に強制してオプションを買わせても,人々の境遇がよくなる見込みは薄い.

安全性は相対的なものだから,グローバル基準で判定して「安全でない」とされた車だって,インドでは人命を救える.もっと大きな教訓を言えば,時と場所の事情がちがうのを考慮せずにグローバル基準を押し付けるのはいつだって危険だってことだ.


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