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アレックス・タバロック「高校の授業に Zoom爆撃してみた」(2020年4月10日)

[Alex Tabarrok, “Zoom Bombing a High School Class,” Marginal Revolution, April 10, 2020]

現代マクロ経済学の原理』を使っている高校の授業に「Zoom爆撃」してみた.ウイルス感染の経済学を通常の経済学に関連づけるとお役に立つんじゃないかと思ったんだ.そこでぼくが言ったこと:

コロナウイルスへの対応はなんでこんなにもお粗末なんだろう? 指数関数的な増加,稀な事象,経験ではなく理論を使う必要性.

コロナウイルス感染は,抑制されないかぎり3日後とにほぼ倍増していく.最初に感染者が 1,000人いるとしたら,そこから倍増を10回繰り返すと,たった30日で感染者は100万人にまで増える(1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 256, 512, 1024).早期に対策をとってこの倍増を1回減らすだけで,50万人を感染から救える.速度がなにより肝心だ.でも,それには問題が小さく見えているうちに行動を起こす必要がある.それには観察じゃなくて理論を使う必要があるけれど,それは自然なことでもかんたんなことでもない.

試行とすばやいフィードバックを繰り返すと,物事を上手にできるようになる.バスケのシュートは繰り返して練習すると上手になるよね.でも,世の中にはシュートを1回しかできない意志決定もある.韓国・香港・台湾がコロナウイルス対応をうまくやってる理由のひとつに,こうした国々には SARS や H1N1 インフルエンザ・パンデミックに見舞われた近年の記憶があって経験を築いているから,というのがある.合衆国やヨーロッパはこういうかつてのパンデミックにそれほど見舞われていなくて,対応もあんなに上手にやっていない.生涯に1回くらいしかない事象への対応では,なんども試行を繰り返せない.

コロナウイルスが中国とイタリアを席巻したあとになっても,多くの人々は「自分たちはどこかちがう」と思ってその脅威を甘く見ていた.でも,ちがってなんかいなかった.合衆国内ですら,「いやいやニューヨークの事情はちがうから」と思ってる人たちがいる.ちがわないのに.物事を学ぶにしても,たいていの人たちは自分の経験から学んで,他人の経験からは学ばない――自分と似てる他人の経験ですら学ばないんだ.自分の失敗や経験から学ぶことそのものは,すぐれた技能だ.なんども同じ失敗を繰り返してしまう人たちは大勢いるものね.でも,他人の失敗や経験から学ぶのは,すごい威力をもつ偉大な技能なんだ.そんな技能はめったにない.ぜひ,この技能を磨いてみて.

さて,こうした問題を,みんなの生活に近い問題に応用してみようか.貯蓄と退職だ.貯蓄も,指数関数的なプロセスにしがたう.ただし,ウイルスがらみのプロセスほど急速でも確実でもないけどね.それでも,同じ原理が当てはまる.ただ,貯蓄の場合には,目指すのはウイルス感染みたいに最後の結末を回避することじゃない.早いうちから貯蓄をはじめて,退職年齢が近づく50代や60代に大きな利得を手に入れるのが目標だ.退職もそうそう試行する機会なんてないから,経験じゃなくて理論を使う必要がある.そして,試行する機会があんまりないから,失敗も含めて他人から学ぶ必要がある.そうやって,今日,貯蓄の意志決定の手引きにするんだ.

生徒たちはいろいろといい質問をしてくれた.さらに,総需要と総供給や経済危機の考え方についても話し合った.

多謝: Joel Cohen & Dr. Brian Dille.

P.S. ほんとに Zoom爆撃したわけじゃないよ.招待を受けて参加したんだけど,生徒にとっては予定外の登場だったって話.


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