アレックス・タバロック 「ペルツマン効果」(2010年7月6日、2014年3月29日)

●Alex Tabarrok, “The Peltzman Effect”(Marginal revolution, July 6, 2010)/“The Peltzman Effect in Children”(Marginal revolution, March 29, 2014)


.CSVブログでペルツマン効果の例が紹介されている。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がボランティアを募って、走行中に車線から逸脱すると自動的に進路を修正する性能を備えたテスト車の試験運転を行い、試験終了後にボランティアにテスト車の印象についてインタビューしている。NHTSAが公表している報告書には、試験運転に協力した20歳前後の女性が語ったコメントの要旨が記載されている――インタビューを担当した検査官の顔には「これはまずい」と焦りの色が見え隠れしていたに違いないが、報告書ではそのことについてはもちろん触れられていない――。

その女性ドライバーは、テスト車の性能を高く称えて、自分の車にも是非とも同じ性能が搭載されて欲しいと語った後に、次のようにコメントしている。「車で街まで出てきてお酒を飲んだ夜は、友人の家に一泊しなきゃいけなかったけれど、この性能があればもうその必要はないわ」。

ペルツマン効果は、安全性(ないしは、リスク)の変化に対する人々の反応を見過ごすなかれとの忠告を与えている。 「安全性を高めるような試みは無駄」(安全性が高まっても、常に無効化される運命にある)ってことをまで意味しているわけではないけれどね。

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ミドルセックス大学でリスク管理の研究に取り組んでいるデイビッド・ボール(David Ball)は、公園(をはじめとした遊び場)での子供の事故の実態を探るために、統計データの調査に乗り出した。その調査の結果はというと、イギリスでもアメリカと同様の現象が確認されたという。「衝撃吸収マットの導入をはじめとして、公園の安全を確保する試みが積極的に進められているにもかかわらず、これといって効果は出ていません。子供の身がこれまでよりも安全になっている様子はないのです」とボールは語る。ところで、公園での事故としては頭部の怪我よりも長骨の骨折の方がずっとありふれているわけだが、ボールの調査結果によると、長骨を骨折するケースが増加傾向にあるという。このような事実は、「リスク補償」(あるいは、ペルツマン効果)と呼ばれる理論によって説明可能である。「下には衝撃吸収マットが敷いてある。だから、遊具から落っこちてもどうってことない」。子供たちはそう考えて、これまでほど慎重ではなくなり、そのせいで怪我が増えるというわけだ。

ハンナ・ロージン(Hanna Rosin)がアトランティック誌に寄稿している「保護され過ぎな子供たち」(“The Overprotected Kid”)と題された記事より引用。

ペルツマン効果については、Wikipediaも参照されたい。

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