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アレックス・タバロック 「リンコノミクス ~スケートリンク上における自生的秩序~」(2011年1月2日)

●Alex Tabarrok, “Skating Lessons”(Marginal Revolution, January 2, 2011)


昨日のことだ。息子を連れて近所のアイススケート場に足を運んできたのだが、アイススケートを楽しんでいる最中も経済学のことがあれこれと頭をよぎっていた。正確には、ダニエル・クライン(Daniel Klein)が執筆した現代の古典とも言うべき「リンコノミクス:自生的秩序に関する一つの視座」(“Rinkonomics: A Window on Spontaneous Order”)が頭から離れなかったのだ1

誰もスケートのことについて何も知らない。そういう時代があった。ずっと昔のことだ。さて、あなたもその時代に生きる一人だと想像してもらいたい。友人があなたのもとに近付いてくる。そして、「新しいビジネスのアイデアを思い付いた!」と興奮気味にこうまくしたてる。

「堅い木でできた滑らかな床が一面に広がる広場を作るんだ。その周囲には、広場に降りるために手すり付きの階段を用意する。そして、お客さんには底に車輪が付いた靴を履いてもらって、広場をグルグルと滑ってもらうんだ。ヘルメットも、ショルダーパッド(肩パッド)も、ニーパッド(膝パッド)も、装着する必要はない。滑るのが上手いか下手か(滑りの能力)をあらかじめ審査することもないし、レーンで区切るようなこともしない。飛ばし屋も、のろまも老人も、みんなごちゃ混ぜになって自分の好きなように滑るんだ。みんなさぞかし楽しむことだろう。そして、おいらは大儲けできるってわけだ。」

スケートのことなど何にも知らないあなたは、「大混乱必至だ」と直感的に感じ、少しきつめの口調で友人に答える。

「ガイドも指示もないのに、どうやって100人もの人間が無事に広場をグルグル滑ることができるっていうんだ? あちこちで衝突が起こって、怪我人がたくさん出るにきまってる。それに、人が詰まって全然進まないぜ。そんなことにお金を払う人間なんているものか。」

・・・(略)・・・

あなたの友人が語った話は、現代ではローラースケートと呼ばれているわけだが、ご存知のように、ローラースケート場での日常は何とか無事平穏に過ぎている。時折アクシデントが起こることもあるが、大抵はみんな怪我をすることもなくスケートを楽しんでいる。あまりにも楽しいので、大勢の人がお金を払ってでもローラースケート場に通っているほどだ。このような状況は直感に反するように思えるが、一体全体どうしたわけだろうか?

・・・(略)・・・

衝突には、「相互性」(mutuality)という重要な性質が備わっている。スケートをしていて私があなたとぶつかったとしたら、あなたも私とぶつかることになる。一方で、私があなたとぶつからなければ、あなたは私とぶつかることはない。「あなたとぶつからないようにする」というのは私にとっての利益であり、「私とぶつからないようにする」というのはあなたにとっての利益だが、私が自らの利益(「あなたとぶつからないようにする」)を追求する場合には、同時にあなたの利益(「私とぶつからないようにする」)も促進することになるわけなのだ。

かような(私とあなたとの間での)「利害の一致」coincidence of interest)こそが、ローラースケート場(のリンクの上)での秩序を支えている主要な力なのだ。私は、あなたの利益を促進するつもりは毛頭ない。あなたの利益の存在に気付いてすらいないこともあろう。しかしながら、私は自らの身の安全を守ることで、同時にあなたの身の安全を守ることにもなっているのだ。私の行動は、(知らず知らずのうちに)あなたの利益を促進しているのである。

ローラースケート場のリンク上で大勢の人々が秩序正しくスケートに興じる光景は、ハイエク(Friedrich Hayek)が言うところの「自生的秩序」(spontaneous order)の例の一つなのだ。

ジョン・ストッセル(John Stossel)が出演しているこちらの映像もあわせてご覧になるといいだろう。スケート場に中央集権的な管理を持ち込んだらどうなるかが印象的なかたちで実演されている。

  1. 訳注;「リンコノミクス」は、昨年(2013年)出版されたクラインの次の本の中にも収録されている。 ●Daniel B. Klein 『Knowledge and Coordination: A Liberal Interpretation』 []

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