大躍進(The Great Leap Forward)は、その実、大後退であった。1978年時点における農地の生産性は、共産党が中華人民共和国を建国した1949年当時よりも、低くなってしまったのである。ところで、1978年のある日のことだ。小岗村の村人たちの間で秘密の会合が開かれた。その会合では、集団所有となっている土地を細かく分割して、村人一人ひとりに土地の区画を割り当てる密約が交わされた。自分で育てた農作物のうち、あらかじめ割り当てられた一定の量(quota)を政府に対して納めねばならない点はこれまでと変わらないが、その割り当て量を上回る分の農作物に関しては、すべて自分のものとすることができるようになったのである。この密約は、共産党政府の方針に反するものであり、政府に気付かれてしまえば、投獄されたり、場合によっては命を落とす危険性もあった。そこでその会合では、万一村人の誰かが投獄されたり、殺害されてしまった場合、その村人の子供が18歳になるまで仲間で協力して面倒を見ることも取り決められたのであった(密約の血判状の実物が以下の写真)。
小岗村の18の農家の間で取り交わされた、命懸けの密約の血判状。この密約では、集団的な営農に終止符を打つ旨が取り決められた(From Cowen and Tabarrok 『Modern Principles: Macroeconomics』)。