アレックス・タバロック 「冥銭」(2007年6月19日)

●Alex Tabarrok, “Hell Money”(Marginal Revolution, June 19, 2007)


この種のジョークは大好物だ。

パディー・オブライエン(Paddy O’Brien)の死を受けて、彼の葬式が粛々と執り行われていた。葬式に参列した人々は、アイルランドに古くから伝わる習わしに従って、棺の中に次々とお金を投げ入れていたが、その時である。町中のみんなから煙たがられている、ケチで知られる男が次のように大声で叫んだのである。「俺はオブライエンを愛していた。だから、他の連中が棺の中に何をどれだけ納めようとも、俺はその倍を納めてやる!」。彼は少し酔っ払っているのだろう。他の参列者たちはそう考えたが、彼を懲らしめるいい機会だと捉えて、手元にあるだけのお金をすべて棺の中に納めたのであった。その結果、オブライエンの棺は、総額3012ドルものお札と硬貨で埋め尽くされることになったわけだが――こんなにも多額のお金が納められたことはかつてなかった――、そのけちん坊の男は、棺の中のお金を数えるなり、自分のポケットから1枚の小切手を取り出したのであった。そして、小切手に「6024ドル」と書き入れると、それを棺の中に納めたのであった。

お金を死者とともに埋葬する習わしは中国にも伝わっているが、Big white guyがこちらの興味深いエントリー [1] 訳注;リンク切れ――このエントリーはMises Economics Blog経由で知った [2]訳注;Mises Economics Blogで引用されているBig white … Continue reading ――で説明しているように、上に出てくるけちん坊と同様に、中国人も貨幣経済学のことをよく理解しているようだ(シグナリング理論についてはどうだかわからないが) [3]訳注;ちなみに、「世界でただ一人のお笑い経済学者」を自称するヨラム・バウマン(Yoram … Continue reading

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References

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1 訳注;リンク切れ
2 訳注;Mises Economics Blogで引用されているBig white guyの文章を以下に訳しておく。「中国では、死者の魂は死後の世界で生き続け、死者はそこでこの世とまったく同様の生活を送るものと信じられている。この世に残された近親者たちは、死者が死後の世界でできるだけ快適な生活を過ごせるようにと願って、死者と一緒に色々なギフトを埋葬する。ギフトの例としては、家や車、衣服、時計、携帯電話、家電製品、メイド(お手伝いさん)など――いずれも、紙で作られたもの――が挙げられるが、中でも一番人気なのが冥土銀行券(Hell Bank Notes)である。冥土銀行券を燃やせば、死者の許に届けられると信じられているのだ。・・・(中略)・・・私の興味を引いてやまないのは、冥土銀行券の額面の種類が多岐にわたっていることだ。米ドルに換算すると、1セント札から数十億ドル札にわたるまで、何でも揃っているのだ。このことは何を意味しているか? 次の2つのうち、どちらかの可能性が考えられるだろう。死後の世界では、死者たちは、想像がつかないほど豊かで贅沢な生活を送っている。あるいは、死後の世界では、ハイパーインフレーションが発生している――そのため、1923年のドイツにおけるレンテンマルクの例のように、死後の世界では、パン1つ買うのに10億ドル札を支払う必要がある――かのどちらかだ。」
3 訳注;ちなみに、「世界でただ一人のお笑い経済学者」を自称するヨラム・バウマン(Yoram Bauman)が、2013年に開催されたアメリカ経済学会の年次総会(のユーモアセッション)で、冥銭をテーマにした報告(タイトルは、「死後の世界におけるハイパーインフレーション」(”Hyperinflation in Hell”))を行っている。その時の様子を収めた動画はこちら
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