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アレックス・タバロック 「当選者は『該当者なし』?」(2013年9月28日)

●Alex Tabarrok, “None of the Above Wins!”(Marginal Revolution, September 28, 2013)


ウォール・ストリート・ジャーナル紙が次のように報じている。

投票所に向かうインドの有権者に、新たな選択肢が。投票用紙に、「該当者なし」の欄が追加されることになったのだ。

世界最大規模の民主主義国の有権者は、投票用紙に名前が載っている立候補者全員を否認する権利を持っている。先週の金曜日、インド最高裁判所は、そのような判決を下した。この判決は、各政党に対して、立候補者選びにもっと慎重になるよう促す圧力となる可能性がある。

「今回の判決によって、国民は、各政党に明確なメッセージを送ることが可能になったと言えるでしょう」。そう語るのは、「市民の自由のための住民連合」(PUCL)の書記を務めるマヒ・パル・シン(Mahi Pal Singh)氏。「市民の自由のための住民連合」は、「該当者なし」という選択肢を認めるよう、最高裁に対して嘆願書を提出していた人権団体の一つ。

今回の判決が、「拒否権」( “right to reject”)のさらなる拡大に向けた最初の一歩となることを願うばかり。市民活動家の間からは、そのような声が上がっている。インドでは、今年度中に5つの州選挙が行われ、来年の5月には、国政選挙が実施される予定となっている。

何とも素晴らしいニュースだ。ついでに、次の事実も忘れないでおきたいところだ1

ニューデリーを拠点とする、市民団体の「民主改革協会」(ADR)によると、インド議会の下院議員のおよそ3分の1は、何らかの犯罪の容疑をかけられているという。

インド議会が抱える上記のような特殊な問題はとりあえず脇に置くとしても、民主主義は多くの問題を抱えている。そのうちの一つは、合理的無知だとか、選択肢のバンドル化だとかが原因となって、有権者と議会(議員、政党)との間でのフィードバックや情報交換があまりにも少ないことである。「該当者なし」という選択肢は、決して万能薬ではないが、有権者と議会との間のフィードバックの改善にいくらかは役立つことだろう。また、投票に行く人の数は多いものの、鼻をつまみながら投票せざるを得ない2 状況にある。一方で、投票に行かない人の数も多い。投票に行かない理由は、現状に満足しているからだろうか? それとも、投票しないことで、不満の意思表示をしているのだろうか? 「該当者なし」という選択肢が認められることになれば、現状に不満を抱いている有権者の意見が埋もれずに、明確なかたちとなって表現される可能性が生まれることになる。そうなれば、選挙に出ようと思う立候補者の数も増えるかもしれないし、立候補者の質の向上にもつながるかもしれない。

現段階では、「該当者なし」への投票は、あくまでも情報収集、情報顕示の意味合いしかない。つまりは、「該当者なし」が過半数の票を得たとしても、「該当者なし」が「当選する」なんてことはあり得ない――「該当者なし」という選択肢が存在することで、選挙結果に違いが生まれる可能性はあるけれどね――。「該当者なし」が過半数の票を得れば、選挙がやり直される。今はまだそうなってはいないが、将来的にはそうなるかもしれない。

インドは、世界最大規模の民主主義国だ。「該当者なし」という新たな選択肢がどういう帰結をもたらすか、その経過を興味深く見守りたいところだ。

情報を寄せてくれたReuben Abrahamに感謝。

  1. 訳注;この点については、次の記事もあわせて参照あれ。“インド議会「犯罪汚染」に打つ手なし”(ニューズウィーク日本版, 2013年8月28日) []
  2. 訳注;適当な候補者が見つからないので、誰に投票するかを消去法で決めている、という意味。 []

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