クルーグマン「(すんごい)お金持ちはいっそう(すっごく)お金持ちになってる」/「有害な格差」

Paul Krugman, “The (Very) Rich Are Getting (Much) Richer”, September 20, 2013.


(すんごい)お金持ちはいっそう(すっごく)お金持ちになってる(2013年9月20日)

by ポール・クルーグマン

Ozier Muhammad/The New York Times Syndicate
Ozier Muhammad/The New York Times Syndicate

格差談義大好きさんたちは,Piketty-Saez のデータ更新を心待ちにしている.経済学者 Thomas Piketty と Emmanuel Saez によるデータは,所得税申告をもとに合衆国における所得が頂点に集中している度合いを推計している.

最新版は,期待を裏切らない内容だ:データからは,予想通りとはいえ確証がなかったことが見て取れる.大多数のアメリカ人がいまだに苦しんでいるなか,すんごいお金持ちは大不況から回復してお元気そうだ.それどころか,超エリートは――トップ 0.01 パーセントは――2012年の所得がバブル絶頂期よりも高くなっている.

また,この新データは,格差をめぐる議論であまりにしょっちゅう見過ごされてる重要な事実を強調するきっかけもくれる:いま話題になっているのは高度な教育を受けた労働者という広範な階層が台頭してきてるってことじゃなく,ほんのわずかなエリートが台頭してきてるってことなんだ.トップ 10 パーセントの所得シェアは,記録的な高さにまで達してる.でも,このトップ 10 パーセントが同質な集団だと思ったなら,見取り図を完全に見失ってる.

トップ 10 パーセントがえている利得のうち,彼らの 90 パーセントから 95 パーセントにはほとんどなんにも分け前がいかない.実は,トップ 1 パーセントに利得の大多数は流れ込んでいる.ひるがえって,そのトップ 1 パーセントの利得の大半は,トップ 0.1 パーセントに流れる.そして,そうした利得の大半はトップ 0.01 パーセントに行く.

実のところ,いま話題にしてるのは,ほんのわずかなエリートの繁栄なんだ.

© The New York Times News Service


有害な格差(2013年9月20日)

先日,『ニューヨークタイムズ』に,極端な格差で社会がむしばまれてる様子を描いた実に興味深い記事が載った.その社会は,原則の上ではきわめて実力主義的だ.実際問題としては,受け継いだ財産やコネがとてつもなくものをいう.上層に生まれなかった人たちは大きく不利になってるし,当人たちもそのことはわかってる.さらに,格差のコストはそれ以外にもあって,そちらははっきりと目に見える――たとえば,支出のカスケードがそうで,あまり恵まれない人たちは,現状を維持してやっていくためにはどうしても借金を抱えなくちゃいけないって気持ちになってしまう.

「その社会ってどこの社会よ?」 ハーバード・ビジネススクールだよ.社交的な機会にたっぷりとお金を払えない学生たちは,事実上,劣等階層に入ることになる.そして,あちこちの場に顔を出すために借金をするのは,どうやらよくあることらしい.

要点は,ハーバード・ビジネススクールの中流階級の学生たちのお話に涙を流すべきだってことじゃあない.彼らの大半は,それでもアメリカの圧倒的多数よりも恵まれてる.そうじゃなくて,要点は,ハーバード・ビジネススクールで起きてることは,アメリカで起きてることの縮図だってこと.極端な格差がなしうる害がどういうものか,これは見事に具体例を示してくれてる.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

格差,なお拡大中

by ショーン・トレイナー

先進国のなかで,アメリカは最高水準の格差がある.新しい証拠からは,お金持ちと貧乏人の格差は2008年の金融危機からずっと開き続けているのがうかがい知れる.

第二次世界大戦のあと,アメリカが謳歌した繁栄は,国民に広く共有されていた.当時,ほぼすべてのアメリカ人はだいたい同じ率で所得が増えていっている.ところが,1970年代から,所得の伸びが人口の多くで停滞し始めた.その一方で,すごいお金持ちの所得はロケットのごとく上昇していった.2008年から,トップ 1 パーセントがえている所得割合が到達した水準は,金ぴか時代以来見られなかった.金ぴか時代には,極端な格差があり,その後まもなく大恐慌が到来した.

近年の危機の前から,所得の格差はすでに劇的なまでに上昇していたものの,経済学者 Thomas Piketty と Emmanuel Saez のデータからは,経済回復の利益は,その大半が超富裕層に向かっているのがわかる.反響の大きかった2003年の論文「合衆国における所得格差1917-1998」の情報を更新して,Piketty氏と Saez氏はこう説明している.景気後退がどん底だったとき以後,稼ぎ手のトップ 1 パーセントの所得は 31.4 パーセントの成長を見せている一方で,それ以外の国民の所得はたった 0.4 パーセントしか成長していない.そのわずかな成長にしても,大半はそれほどお金持ちでないだけの人たちに集中していて,アメリカ人の大半は実質で見るとむしろ減少している.

インフレに調節すると,下位 90 パーセントのアメリカ人労働者たちは,1966年とくらべて所得が少なくなっている.その一方ではトップ 1 パーセントの所得は同時期に3倍増となっているにも関わらず,だ.

この格差の開き方について,専門家たちはさまざまな理由を挙げている.そのなかには,技術進歩とグローバリゼーション,労働組合をはじめとしてニューディール時代の制度が衰退したこと,社会の超富裕層メンバーにとって平均的な税負担を大幅に軽減した税制政策といった理由が含まれている.

© The New York Times News Service

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