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タイラー・コーエン「新しい《フリーランチ》経済学」

[Tyler Cowen, “The new “free lunch” economics,” Marginal Revolution, August 19, 2016]

スコット・サムナーの記事から抜粋:

(…)2009年以降の出来事に関わっているブードゥー経済学は1つだけではない.少なくとも5タイプの新種が関わっている:

1. 賃金を強制的に高くしようとする人為的な試みによって総需要が高まり雇用が促進されるという主張.

2. 失業手当の給付期間延長は――働かないように人々にお金を渡す期間の延長は――総需要を高めて雇用を増やすという主張.

3. 政府支出の増加は総需要を高め経済成長を促進することによってむしろ財政赤字を減らせるという主張.単純なケインジアンモデルでは,クラウディングアウト・金融的な相殺などがないとしても,これはありえない点に注意.

4. 総需要が高まれば生産性が向上するという主張.古いケインジアンモデルでは,総需要の増加は雇用を増やすことで成長を促進するのであって,生産性を高めることによって成長を促進するわけではない.

5. ゼロ下限にないときにも財政刺激は総需要を高めうる.なぜなら…?

上記の5つの主張のどれをとってみても,新ブードゥー主張を支持する理論的・経験的な根拠はほぼなく,否定する根拠は多い.1930年代には賃金を高めようとの試みが5つあったが,5つとも回復を促進するのに失敗している.延長された失業保険給付が2014年のはじめに終了したとき,ケインジアンの予測に反して雇用創出は加速した.ケインジアンの予測に反して,2013年の緊縮が成長を遅らせることはなかった.大不況のあいだ,主要経済のうちイギリスはおそらく最大の赤字財政を行い,雇用の伸びは堅調だったが,いまの生産性は2007年の第4四半期を下回っている.

リンク先にはもっと書かれている.コメントからスコットの発言を引こう:

ぼくが記憶するかぎり,1930年代に生産性は堅調だった.なぜだろう? もし総需要の低下で生産性が弱まるのだとしたら,1930年代に生産性はすごくひどいことになっていたはずでは?

ぼくの以前のポスト「すべての不平が同時にすべて正しいわけがない」も参照.

いまぼくにとってなによりいらだたしいのが,財政刺激策の提言日本語〕だ.経済がいま完全雇用にあるかその手前にあるのではないかとさして考慮することもなく,刺激策が失業中のリソースを対象にしているのかどうかにいたっては,いっそう考慮せずに財政刺激策を主張している.

ぼくらにいま必要なのは,総需要ベースのすぐれたマクロ経済学だ.この話題はあまりに重要なので,こんな風に政治化させていてはいけない.


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