タイラー・コーエン「暗号通貨界隈の人たちが勘違いしてること」(2021年6月21日)

Tyler Cowen “What crypto people get wrong” Marginal Revolution, June 21, 2021

というのがBloomberg掲載の僕の最新コラムのトピックだ。以下はその抜粋。

どちらかというと、暗号通貨はすごくまずい状況にある国、たとえばベネズエラなどの通貨に悪影響を及ぼす可能性の方が高い。不換通貨がなくなるということはないだろうから、長期的には暗号通貨はドルの潜在的な競争相手を圧迫し、実際にはドルの価値を高めることになるかもしれない。

もうひとつは、これは暗号通貨界隈ではたいてい見ないふりをされていることだけれど、暗号通貨の価格が永遠に上がり続けるということはないということだ。このことは、暗号通貨のシステムにマネーサプライに起因するデフレが組み込まれていたり、毎年暗号通貨の新しい有用な使い道が発見されるとしても変わらない。どこかの地点で市場は暗号通貨の価格に折り合いを見つけて、その情報を高い水準にあるこうした資産の価格に組み込むだろう。それ以降期待収益率は、こう言うのははばかられるけれども、ふつうのものになるだろう。

暗号通貨市場を芸術品市場と比べてみよう。芸術品市場は、長い間アンディ・ウォーホールの絵の潜在的価値を把握できなかった。何年にもわたって価格は大きく上がり続けた。でも今も市場の流動性は高いままだけれど、ウォーホールへの投資による期待価値はほかの有名な芸術作品への投資価値と比べて良くも悪くもない。

市場がまだ暗号通貨の完全な価値を把握できていないという見方は、まったくもって擁護しうるものだ(争いはあるが)。この状態は今後もある程度の間は続くかもしれないけれど、数十年続くようなものじゃない。

皮肉なのは、暗号通貨推しの人たちの主張の非常に多くが暗号通貨の特に金銭的な収益率の低さを示していることだ。暗号通貨が担保や流動性といった用途で有用であればあるほど、暗号通貨を保有したいという気持ちは高まり、そのために求める金銭的な収益率は低くなる。これは、現金を保有したいと思ったり、米国債が担保として使われることで米国債の価格が上がって期待収益率が下がるのとちょうど同じことだ。

今後、株式の年間の期待値上がり率が例えば5%から7%で、ビットコインのそれが1%とかっていう世界に到達したならば、それは暗号通貨の成功の証だ。より一般的に言えば、暗号通貨は誕生からこれまでとても変わった資産区分であったが、いつまでもとても変わった資産区分のようにふるまうことはないだろう。

ここも注目

サトシ(・ナカモト)やヴィタリック・ブテリンはすごいイノベーターというだけでなく、今の世で最も重要な貨幣経済学者二人なのだ。

おすすめなので全文を読んでみてほしい。

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