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タイラー・コーエン 「サマータイムが導入されると電力需要(電力消費量)はかえって増える?」(2008年2月27日)

●Tyler Cowen, “Daylight savings time increases energy usage”(Marginal Revolution, February 27, 2008)


少し前(2006年)に(アメリカの)インディアナ州全域でサマータイムが導入されるという「自然実験」が行われた(それまではインディアナ州では一部の地域(郡)だけでサマータイムが実施されていた)。その実験の結果についてマシュー・コチェン(Matthew Kotchen)& ローラ・グラント(Laura Grant)の二人が次のように報じている(pdf)1

サマータイムは――政策意図とは反対に――(インディアナ州における)一般家庭の電力需要を高めたというのが我々が見出した結果である。具体的にはサマータイムの導入に伴って電力需要は全体で1~4%ほど高まったとの推計結果が得られているが、サマータイムが電力需要に及ぼす効果はサマータイムの期間を通じて(季節ごとに)違いがあることも見出された。サマータイムが始まったばかりの春の間は電力需要は抑制される傾向にあるが、そのような省エネ効果は時とともに(春から夏、夏から秋へと季節が移りゆくにつれて)徐々に弱まっていってやがては電力需要は抑制されるのではなく高められる方向へと向きを転じることになる。そして電力需要が高められる効果は秋を迎えてサマータイムが終わる頃にピークに達する傾向にあるようなのだ。我々が見出した結果はサマータイムに備わるトレードオフ――照明用の電力需要を抑制する一方で冷暖房用の電力需要を高めるというトレードオフ――を考慮に入れたシミュレーション結果とも整合的である。我々の(サマータイムの期間が延長された2007年以前のデータに依拠した)推計結果によると、サマータイムはインディアナ州の住民全体が支払う電気代を一年あたり860万ドルだけ上乗せする効果を持っただけではなく、(電力需要を高めるのに伴って)二酸化炭素や大気汚染物質の排出量を増大させることで一年あたり160万~530万ドルに上る社会的費用を生み出すに至ったと見積もられている。

つまりは、サマータイムが導入されると照明が使われる機会は減る(照明の使用に伴って支払う電気代の額は抑えられる)一方で、エアコンが使われる機会は増える(エアコンの使用に伴って支払う電気代の額は増える)というわけだ。コチェン&グラントの研究についてはウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載のこちらの記事でも概要が紹介されているが、文中での次の指摘には注意を払っておきたいところだ。

サマータイムには二人(コチェン&グラント)の研究では考慮されていない社会的な便益も備わっているかもしれない。エドワード・マーキー上院議員が中心となってサマータイムの期間延長が提案された際にその論拠として(サマータイムの実施に伴って)夕方に日が照っている時間が伸びると「犯罪や交通死亡事故の抑制、余暇時間の増大、経済活動の活性化」につながると説く研究結果が引き合いに出されている。

  1. 訳注;学術誌に掲載されたバージョンはこちら。なお、もう少し詳しい内容については本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●マシュー・コチェン&ローラ・グラント 「サマータイムは省エネにつながるか? ~インディアナ州における『自然実験』の結果は何を物語っているか?~」(2018年8月21日) []

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