タイラー・コーエン 「著名な経済学者は長寿な傾向にある?」(2009年4月6日)/ アレックス・タバロック 「モーリス・アレ」(2010年10月10日)

●Tyler Cowen, “He forgot about Hawtrey”(Marginal Revolution, April 6, 2009) [1]訳注;原エントリーのタイトルは、「ホートレーを忘れてるぞ」(He forgot about … Continue reading


エズラ・クライン(Ezra Klein)が、読者から寄せられたコメントを紹介している

著名な経済学者は、物凄く長生きな気がします。私の思い違いでしょうか?

  • ミルトン・フリードマン(享年94歳)
  • ミーゼス(享年92歳)
  • ジョン・ケネス・ガルブレイス(享年98歳)
  • ハイエク(享年92歳)
  • レオンチェフ(享年93歳)

・・・(略)・・・ケインズ(享年62歳)なんかは――リカードだとかセイだとかの大昔の経済学者も――例外ですが、著名な経済学者で80歳を迎える前に亡くなった例というのは、なかなか見つからないのです。

サミュエルソンは90歳代だし [2] 訳注;サミュエルソンは、2009年12月13日に亡くなっている。享年94歳。、ケネス・アローは87歳だ [3] 訳注;アローは、2017年2月21日に亡くなっている。享年95歳。。ブキャナン、タロック、コース、バーノン・スミスもまだまだ健在だし [4] … Continue reading、ゲーリー・ベッカーなんかは不死身なんじゃないかとさえ思えてくる [5] 訳注;ベッカーは、2014年5月3日に享年83歳で亡くなっている。。例外(80歳を迎える前に亡くなった著名な経済学者)として真っ先に思い浮かぶのは、フランク・ラムゼー(享年26歳)だ。ミゲル・シドラウスキー(享年28歳)も。比較的最近で言うと、フィッシャー・ブラック(享年57歳)だとか、エイモス・トベルスキー(享年59歳)だとかもそうだ。亡くなるのが早すぎた著名な経済学者の例については、こちらの論文(pdf)を参照されたい(全部で16名が取り上げられている)。

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●Alex Tabarrok, “Maurice Allais”(Marginal Revolution, October 10, 2010)


モーリス・アレが(2010年10月10日に)亡くなった。享年99歳。フランス生まれの物理学者であり、ノーベル経済学賞の受賞者でもある。アメリカの経済学者の間では「アレのパラドックス」でその名が知られているが、アレは非常に幅広い分野で業績を残している博識家だ(こちらも参照)。しかしながら、その多くは見過ごされがちだった。彼が母国語(フランス語)で書いた論文なり書籍なりが英語に翻訳されずにいたからだ(残念なことに、今でもすべてが英訳されてるわけじゃない)。

アレについてあまり知られていないことを一つ挙げよう。彼は、「金本位制」と「オーストリア学派の景気循環論」を大いに支持していた。論文の中で、ミーゼスやロスバードを引用しているくらいなのだ。その証拠を出せというなら、彼が1987年に執筆している「信用メカニズムとその含意」(“The Credit Mechanism and its Implications”)と題された論文――George R. Feiwel(編集)『Arrow and the Foundations of the Theory of Economic Policy』に収録――を確認してみるといい。フランス語で書いている論文でも、ミーゼスやロスバードを引用しているのだ(その件については、こちらを参照されたい)。

博識家ということからも予想されるかもしれないが、アレがどういう考えの持ち主だったかを端的に要約するのは難しい。例えば、私的所有権や市場経済を強く支持していた一方で、「保護主義」や「移民の流入制限」も支持していた。私的所有権なり市場経済なりを社会の根幹に据えることに対して国民から合意を取り付けるためには、貿易なり移民の受け入れなりに制限を課す必要があると考えたのだ。

驚くことに、アレは、1959年にフランス航空宇宙協会からガラベール賞を贈られている。振り子についての画期的な実験が高く評価されたのだ。アレが発見した現象は「アレ効果」と呼ばれていて、一般相対性理論の分野におけるアノマリー(うまく説明できない異常現象)の一つになっている。

References

References
1 訳注;原エントリーのタイトルは、「ホートレーを忘れてるぞ」(He forgot about Hawtrey)。ホートレーも長生きした経済学者の一人で、95歳で亡くなっている。
2 訳注;サミュエルソンは、2009年12月13日に亡くなっている。享年94歳。
3 訳注;アローは、2017年2月21日に亡くなっている。享年95歳。
4 訳注;ブキャナンは、2013年1月9日に享年93歳で亡くなっている。タロックは、2014年11月3日に享年92歳で亡くなっている。コースは、2013年9月2日に享年102歳で亡くなっている。バーノン・スミスは今も健在。
5 訳注;ベッカーは、2014年5月3日に享年83歳で亡くなっている。
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