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デビッド・ベックワース 「ECBの代役としてのFed」(2011年11月14日)

●David Beckworth, “The ECB Needs the Fed Now More Than Ever”(Macro Musings Blog, November 14, 2011)


ECB(欧州中央銀行)は、これまで以上に、Fedを必要としている。とは言っても、通貨スワップ協定を通じたドル資金の融通額を、今よりも増やす必要があるという意味ではない。ECBは、Fedを代役として必要としているのだ。その意味するところを、これから説明するとしよう。Fedは、マネタリー・スーパーパワーの地位に君臨している(pdf)。Fedは、世界の主要な準備通貨たるドルを管理しており、数多くの新興国は公式・非公式に自国通貨をドルにペッグしている。その結果として、Fedによる金融政策は方々の新興国に「輸出」されることになるのだ。それと同時に、その他の通貨大国たる、ユーロ圏にしても、日本にしても、米国の金融政策には無関心ではいられない。というのも、ECBも、日本銀行も、ユーロや円が、ドルに対してだけではなく、ドルにペッグしている通貨に対しても、高くなり過ぎないようにと注意を払わねばならないからである。そういうわけで、Fedによる金融政策は、ユーロ圏や日本にも、ある程度は「輸出」される格好となるのだ。

Fedによる金融政策がユーロ圏にいかなるかたちで「輸出」されているかは、以下の図から見て取ることができる。まずは一枚目の図をご覧いただきたいが、この図では、FedとECBがそれぞれ操作している政策金利の推移が(ユーロの導入が決まった)1999年以降の期間を対象として跡付けられている。ECBは、まるでFedの後を追う(Fedを真似る)かのようにして、政策金利の変更に乗り出しているように見えるが、「Fedはマネタリー・スーパーパワーなり」ということを踏まえると、ECBによるこの行動も納得いくところだ。ECBが(マネタリー・スーパーパワーたる)Fedへの反抗を試みたかに見えた瞬間もあるにはある。ECBは、2011年中に(Fedが政策金利を引き上げたわけでもないのに)2度にわたる利上げに踏み切ったのだ。しかしながら、その反抗も長続きはせずに、結局のところは、Fedの強大な力の前に膝を屈したかに見える。

次に二枚目の図をご覧いただきたいが、この図では、米国とユーロ圏の名目GDP成長率(前年比)がそれぞれ跡付けられている。図の中に矢印が書き込まれているのにお気付きかと思うが、「米国の後を追うユーロ圏」という関係性を強調する意味が込められている。米国の名目支出(名目GDP)の伸びが勢いづくと、それからややあって、ユーロ圏の名目支出(名目GDP)の伸びも勢いづき、米国の名目支出が落ち込むと、それからややあって、ユーロ圏の名目支出も落ち込む。そのような関係性が見られるのだ。

「米国の後を追うユーロ圏」という関係性の確かさ(頑健性)を(VARモデルを使って)検証した結果をまとめたのが三枚目の図である。この図では、米国の名目GDP成長率に対するショック(米国の名目GDP成長率に生じた予想外の変化)が米国およびユーロ圏のその後の名目GDP成長率に及ぼした効果がそれぞれ跡付けられているが1、1999年~2011年の間に米国の名目GDP成長率に生じた典型的なショックは、米国およびユーロ圏のその後の名目GDP成長率に似たような反応を引き起こしている様が見て取れる。

Fedはマネタリー・スーパーパワーであり、米国内における金融政策の行方だけではなく、ユーロ圏内における金融政策の行方にも影響を及ぼしている。そのように考えると、「米国の後を追うユーロ圏」という関係性(両者の名目GDP成長率の間に見られる順序関係)も難なく説明できる。2000年代の初頭から中頃にかけて、Fedによる金融緩和が行き過ぎた結果として、米国内においてだけではなく、ユーロ圏でも、名目支出が急増することになってしまった。それとは反対に、2008年にFedが「受動的な金融引締め」2に拘泥した結果(この点についてはこちらこちらを参照)として、米国内においてだけではなく、ユーロ圏でも、名目支出の伸びが失速した。そのように解釈できるのだ。

つまりはこうも言えるだろう。Fedが何かしらのラディカルな行動に踏み切れば――例えば、米国の名目GDPを危機以前のトレンドに引き戻すことを意図して、名目GDP水準目標(NGDPLT)の採用に踏み切ったとしたら――、ユーロ圏内における名目支出の反転(V字回復)を後押しする一助となり得るに違いないのだ。Fedが積極果敢な金融緩和に乗り出せば、ドル安圧力が働く。そうなれば、頑迷なるドイツも黙ってはいないだろう。ドイツは、インフレの動向だけではなく、輸出の動向にも気を揉んでいるようだが、そうだとすれば、輸出に不利に働くドル安(ユーロ高)には抵抗を感じることだろう。その結果、ドイツからの圧力もあって、ECBもお金(ユーロ)の出る蛇口を開く(一層の金融緩和に乗り出す)ことに本気になることだろう。つまりは、Fedが積極果敢な金融緩和に乗り出せば、その結果として、ECBが後回しにしてきた仕事の肩代わりが果たされることになるのだ。

言うまでもないだろうが、世界各国の中央銀行が協調し合えば、もっと効率よく事を運ぶことができる。例えば、ラルス・クリステンセンがこちらのエントリーで提案しているように、世界中の主要な中央銀行が、それぞれの国内の名目GDPを危機以前のトレンドに引き戻すべく、一致団結するというやり方もある。しかしながら、そのような協調に向けた合意がすぐにも取り付けられそうかというと、どうもそうとは思えない。それよりも、マネタリー・スーパーパワーの地位に君臨するFedが先陣を切って、世界全体の名目支出の回復の後押しを図るのが自然な行き方であるように思われるのだ。

  1. 原注;図示されているインパルス反応関数は、米国の名目GDP成長率に、ユーロ圏の名目GDP成長率、そして定数項を変数とする、VARモデルから導き出されたものである。ラグ数は5であり、コレスキー分解が用いられている。 []
  2. 訳注;一層の金融緩和が必要とされているのに、ただただ傍観するだけで、新たな緩和策に乗り出さなかった、という意味。 []

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