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ポール・クルーグマン「むかしの住宅はもっと立派だったってホント?」

Paul Krugman, “Were Homes Really Built Better in the Past?,” Krugman & Co., July 11, 2014.
[“These Ages of Shoddy,” The Conscience of a Liberal, June 27, 2014.]


むかしの住宅はもっと立派だったってホント?

by ポール・クルーグマン

Michael Appleton/The New York Times Syndicate

Michael Appleton/The New York Times Syndicate

エンジニアですぐれた文章家でもあるヘンリー・ペトロスキーが,先日,『ニューヨークタイムズ』の論説欄で嘆きをつづっている.アメリカで,すぐれた建設が減少してきてるんだそうだ.いい文章だ.彼の前提を自分が信じたものかどうか,いまちょっと調べてる.

1つはっきりしてることはある:公的投資がもっとはるかにたくさんなされるべきだってのに,実際の公共投資は言い訳がきかないほどおどろきの減少をみせている.建設労働者は,高い失業率にくるしんでいる.公的借り入れ費用〔金利〕は歴史的な低水準になってる.本質において,アメリカ経済には余剰の労働と資本がたっぷりありあまっていて,使われるのをいまかいまかと待ってる状態なわけだ.さて,公共建設でいまなにが起きてるかってグラフをごらんいただこうか:

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ただ,ペトロスキー氏は民間建設もひどいことになってると主張してる.安い建材とおそまつな腕前でつくられるようになってるというのが彼の言い分だ.

そういう趣旨の逸話をあれこれと集めるのはかんたんなことだ.ほぼ誰だって,昔はもっとしっかりと建設してたって感覚をもってるよね.ほんの数年前,ニューヨークのウェストエンド・アベニュー86番街に分譲マンションが建設中だった.そこにかかげられた横断幕にはこう書かれていた――「21世紀の戦前スタイル生活」.ニューヨークを知ってる人なら,これが言わんとしてることがわかる.天井が高くて,カベが分厚いってことだ.

ぼくがニュージャージーのプリンストンにはじめて移り住んだとき,妻とぼくはできたばかりの大仰で粗悪なマクマンションにしばらく暮らしていた.バカでかい家で,部屋はバカ広くて,初日からもう壊れ始めていた.

ただ,これだとサンプルが偏ってしまってるんじゃないかと心配だ.たしかに,ぼくらが知ってる古い建物は,新しいやつよりしっかりした作りになってる.でも,そこには生存者バイアスがかかってないかな? 昔の安普請は,しっかりしてる建物と比べて,とっくに壊れちゃってる見込みが高い.というか,壊れる前に解体されてそうだ.ってことは,いまぼくらが目にするものは,玉石混合あったなかでの玉なわけだ.南北戦争後の数年は,「まやかしもの時代」と言われる(もともとは,戦争でボロ儲けした連中が製造した安っぽい織物を指す言葉だった).当然,ひどいつくりの安アパートもたくさんあったはずだ.

ぼくが若かった頃――学生時代と助教授時代の両方――友人とぼくはボストン地域のトリプルデッカー(三階建てアパート)にすんでいた.まあちょっと聞いてくださいな,あれはいい建物なんかじゃなかった.友人のなかには,冷蔵庫にロープをくくりつけてるやつまでいた.そうしないと,床が傾いてるせいでドアが開いちゃったからだ.

それに,やる値打ちのあることがなんでもいい具合になるってもんでもない.土地利用が変わって豪勢なつくりの建造物があっさりと廃れてしまうんじゃないかって疑ってるときには,安っぽい建物を建てておくのは意味をなす.

そのうえで言うと,ペトロスキー氏が間違ってるかどうかは,ぼくにはわからない.もしかすると,アメリカではほんとに建物がひどくなってきてるのかもしれない.でも,それにはもっといい証拠が必要だ.

© The New York Times News Service


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