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ポール・クルーグマン「テキサスで経済的奇跡が起きたってホント?」

Paul Krugman, “Did Texas Really Experience an Economic Miracle?,” Krugman & Co., March 7, 2014.


テキサスで経済的奇跡が起きたってホント?

by ポール・クルーグマン

Michael Stravato/The New York Times Syndicate

Michael Stravato/The New York Times Syndicate

『ワシントン・マンスリー』誌の上級編集者をつとめるフィリップ・ロングマンは,最新号でとてもいい記事を書いている.テキサス経済について吹聴されてるインチキを反駁する記事だ(同記事はここで読める).ぼくが知らなかったこともいろいろ書かれている.たとえば,テキサスに流入してるアメリカ生まれのアメリカ人はかなり少数だって事実はこの記事で知った.

ただ,ある一点について,補足をしておきたい:近年,石油とガスが果たしている役割についてだ.同記事で,テキサスですら,こうした〔エネルギー〕産業が経済に直接に占める割合はとても小さいと是認しつつも,その急速な成長に乗数効果が合わさって,テキサスの成長に関してはもっと大きな要因になっているとロングマン氏は論じている.

たしかにね.これについて,いくらか数字を挙げてみよう.州ごとの国内総生産に関して経済分析局が出しているデータが出典だ.このデータをみてすぐにわかるのは,テキサスが採掘の拡大をつづけているってことだ.全米で見ると,2007年から2012年にかけて,採掘の産出量は2005年のドルで数えて290億ドル拡大している.テキサスはそのうちの227億ドルを占めている.全米でみると,採掘の拡大は2007年に GDP の 0.2 パーセントだった.テキサスでは,それが10倍の2パーセントに及んでいる.

この採掘の拡大には乗数効果も伴ったにちがいない.採掘事業とその労働者たちは地域経済でお金を使っているわけで,そのため,所得の増加と需要のさらなる増加がもたらされることになるからね.経済学者エミ・ナカムラとジョン・スタインソンによる芸術的なまでの地域乗数の推計(彼らは防衛支出の増減を自然実験に利用している)から得られる結論によれば,乗数はだいたい 1.6 だ.ということは,採掘ブームがGDPに占める 2パーセントという数字は,テキサス州の GDP を 3パーセント引き上げたはずってことになる.全米との比較では 2.7パーセントの増加だ.

その一方で,テキサスの GDP 全体は2007年から2012年にかけて 13パーセント上昇している.かたや,全米の GDP はたった 2.6 パーセントしか伸びていない.この計算からうかがい知れるのは,石油・ガスのブームはこの経済成長の差の4分の1以上を説明するらしいってことだ.たいした数字だ.ただ,それで話はおしまいじゃない.

残りの話はなに? ひとつには,いまぼくらが目にしているのは,人々と雇用がアメリカのサンベルト地帯に長期的に流入し続けてる様子だってこと.経済学者のエド・グレイザーはよく好んで次の点を指摘する――州の成長をいちばんうまく予測する単一の要因は,真冬日の数だ.それに加えて,テキサスはある一点に関しては正しいことをやっている:それは土地区画規制の緩和だ.この規制をゆるめると,住宅は豊富で安価なままにとどまる.

さて,それじゃあもっと一般的な自由市場資本主義の奇跡って話はどうなのかって? そんなものは,あると信じてる人にはあるように見えてるってだけの話だよ.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

石油ブームと人口

by ショーン・トレイナー

近年,アメリカでは保守系の評論家たちがテキサスのッ経済政策を取り上げて,「テキサスにとどまらず全米の経済にとってお手本となる」と持ち上げてきた.

この10年にわたって,テキサスが記録した雇用の伸びはアメリカ全体をはるかにしのいでいる.また,テキサス州は,他の大きな州と比べて低い失業率をたたき出している.テキサス州知事のリック・ペリーはこうした動きを指して,公の場で「テキサスの奇跡」と称した.ペリー知事はテキサス州の成功を導いた理由をいくつか挙げている.そのなかには,低税率と規制の緩さが含まれる.ペリー氏をはじめ,多くの保守派は,こうした経済的好環境を利用するために外から企業や人々がテキサス州に流れ込んでいるのだと推論している.

評論家のなかには,この筋書きを疑問視する人たちもいる.また,テキサスの現状がほんとうに「奇跡」と呼ぶにふさわしいのかどうか,疑う向きもある.

『ワシントン・マンスリー』誌の3-4月号で,フィリップ・ロングマンはこう主張している――テキサス州の経済成長は,なるほど人口の伸びに促されたものだが,しかしその人口増加はメキシコからの移民と同州の出生率の高さによるものだ.

「その要因がどうであれ,人口増加は経済成長を促すものだ」とロングマン氏は記す.「2000年から2013年にかけてテキサスの人口が24パーセント以上もふくれあがったのに伴って,住宅からハイウェイ,さらにはショッピングセンターまで,ほぼありとあらゆるものの需要が伸びた.そして,石油・ガスのお金が新たに流れ込んだことに加えて,メキシコとの貿易が増加したこともあって,テキサスは堅調な雇用創出の数字にめぐまれることとなったのだ.」

ロングマン氏は,人口増加がいくらか実入りのいい仕事を創出するのに成功していることを記しつつ,これを労働統計局のレポートの観察と対比している.同レポートによれば,テキサスは最低賃金で働く労働者の率が他のどの州よりも高い.また,テキサスは健康保険に加入していない住民の率もいちばん高く,高卒資格をっもつ成人の割合は最低となっている.

テキサス州は所得税をとっていないが,その一方で,売上税と財産税をとっている.この2つの税は,圧倒的に貧困層と中流階層によって負担されている.ロングマン氏によれば,「この経済発展のモデルに,きわめて逆進的な税制度と最低水準の公共投資と組み合わさって,テキサス州は一人当たり所得と〔社会階層の〕上方への流動性で最上位の実績をもつ州に後れをとっている.」

© The New York Times News Service


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