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ポール・クルーグマン「石油価格:急落の影響」

Paul Krugman, “Oil Prices: The Impact of the Plunge,” Krugman & Co., December 12, 2014.
[“Is Russia 2015 Venezuela 1983?” December 8, 2014; “A Note on Oil Prices and the Economy,” December 4, 2014]


石油価格:急落の影響

by ポール・クルーグマン

TUNIN/The New York Times Syndicate

TUNIN/The New York Times Syndicate


石油価格急落の影響をめぐる話題についていこうとがんばってる.なかでもとくに重要なニュースの1つは,ウラジミール・プーチン大統領のロシアで起きている.

当たり前だけど,ロシアで近年起きてるあれこれの問題は石油価格以外のことから生じている.つまり,ウクライナの状況とその影響だ.とはいえ,金融の状況がどれほど早く展開してるかってところには目を見はる.国債自警団は,モスクワではちゃんと登場してる――10年もの国債の利回りは,今年のはじめあたりには8パーセント未満だったのが,先日,12.67 パーセントにまで上がった

こんな疑問が浮かぶ人がいるかもしれない:「どうしてロシアはこれほど脆弱なの? ずっと巨額の経常黒字を続けてきたじゃないの.それに,なによりロシアは債権国であって債務国じゃないのに.」 でも,ロシアはこれまでずっと巨額の対外債務を抱えてきた.これには,民間部門の借り入れが反映している――そして,外貨準備は急速に減ってきている.ひとつには,民間の資本逃避のせいだ.

これを見ると,1980年代のラテンアメリカ危機でおきた紆余曲折の1局面を思い出す.1982~83年にワシントンにいた頃,ぼくはこの問題に夢中になっていた.いまのロシアと同じように,当時のベネズエラは石油経済で,つねに対外黒字をあげていた.ところが,それにも関わらずベネズエラは債務国だった.なぜかって言うと,事実上,そうした対外黒字のぜんぶを(というかそれ以上の額を),腐敗したエリート連中が所有する海外資産にリサイクルしていたからだ.

もちろん,ベネズエラには原発なんてなかった.

© The New York Times News Service


石油価格とアメリカ経済についてのメモ

メディアのインタビューを受けることがあったら,きっと石油価格の急落がアメリカ経済にどんな影響をもたらすかって質問されるだろうから,ちょっと時間を割いて,その質問になにかおもしろいことを言えるかなって考えてみた.で,どうやら,街角の声よりはもうちょっと他に言えることがありそうだ.

いまの石油価格急落が起こる前のビッグニュースと言えばもちろん水圧破砕採掘法,別名「フラッキング」だった.アメリカ国内の石油採掘量は長らく減少を続けていたけど,このフラッキングによって急に増加に転じた.

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「ってことは,この石油産出量の急増によって輸入は減少して,アメリカは石油ショックから比較的に守られるようになったんだろう」って思う人がいるかもしれない.だけど,ここで1つ思い出す必要がある.今回の価格急落の前夜,実質の石油価格はこれまでの歴史で見てすごく高い水準になっていたし,GDP に占める石油輸入の割合はかなり高いままだった.

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だから,今回の価格下落が経済に及ぼす影響は,みんなが思ってる以上に大きくなるかもしれない.それと同時に,シェール開発によって,いくつか重要なかたちで,その影響の性質を変えていると言えそうだ.ふたたびアメリカ国内の石油産業が存在感をもつようになったために,価格下落はアメリカ国内で勝者と敗者をつくりだす.価格下落の利益は損失を上回る.もし限界消費性向が同様なら,総需要に対してものを言うはずだ.実際,かつて国内石油といえばテキサスの億万長者だった時代には,石油価格が下落したときに内的再分配によってさらに需要が押し上げられたと考えられる.

ただ,フラッキングが使われるようになって,産出者の一部はかつてと大きくちがっている.なにより,彼らはたくさん投資支出をしている.だから,かつてほど石油価格の下落は〔GDPの〕拡張にはたらかないだろうし,ことによると縮小にはたらくかもしれないとすら言えるだろう.

これは思いついたままの雑な話ではある.ともあれ,貿易への影響以外にも,事態は動いてるのかもしれないよ.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

原油価格の下落

by ショーン・トレイナー

この数週間で,石油価格が出来的に下がっている.6月に115ドルの高い値をつけていたところから,原油価格はいまや70ドル以下になっている.

アナリストのなかには,石油価格はさらに下がると予想する向きもある.その理由は,非伝統的な産出方法によって,アメリカ産石油の供給が増え,OPEC諸国が市場シェアをめぐって競争しているためだ.

アメリカにおける在来型資源の産出は1980年代にピークを迎えた.近年,アメリカで石油ブームが起きているのは,水圧破砕技術(通称「フラッキング」)のような非伝統的な産出技術ができた結果だ.

こうした技術のおかげで,あらたに大量の石油が採掘できるようになったが,コストがかさむために実用的でないというのが大方の考えだった.だが,2000年代中盤に石油価格が急上昇する.その結果としてフラッキングへの投資が急速に進み,アメリカを世界第一位の石油産出国に押し上げた.

11月下旬,石油輸出国機構 (OPEC) は会合を開き,価格引き上げのために輸出を制限できないか協議した.

だが,加盟国は現行水準で産出をつづけて市場シェアを維持する方を選んだ.これにより,価格はさらに下落を続けた.今回の協議結果は,価格戦争によってアメリカ国内の石油採掘企業を市場から追い出す試みだと見るアナリストたちもいる.アメリカの国内採掘企業は,いっそうかさむ採掘コストに直面している.

石油価格が下がってくれれば消費者にとってはありがたい話だが,その一方で,石油輸出にたよっている国々のなかには,危機に追いやられたところもある.OPEC加盟国ではないが,ロシアはとくに打撃を受けている.

石油と天然ガスはロシアの輸出市場で68パーセントを占めている.また,通貨価値の下落と,今年ウクライナのクリミア半島併合に対する国際的な制裁措置の影響から,すでにロシアは景気後退におちいる見通しに直面している.

© The New York Times News Service


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