マーク・ソーマ 「期間限定のお買い得品ですよ! ~『一時的なセール』と『価格の粘着性』~」(2013年9月1日)

●Mark Thoma, “‘Limited Time Offer! Temporary Sales and Price Rigidities’”(Economist’s View, September 01, 2013)


価格は粘着的なのだろうか? カローラ・ビンダー(Carola Binder)が、「価格の粘着性」に関する興味深い研究を紹介している(ミクロレベルおよびマクロレベルの「価格の粘着性」について実証的に検証している先行研究としては、例えばこちらを参照されたい)。

Limited Time Offer! Temporary Sales and Price Rigidities” by Carola Binder:価格が頻繁に改定されるからといって、その価格の伸縮性は極めて高いとは必ずしも言えないと主張しているのは、エリック・アンダーソン(Eric Anderson)エミ・ナカムラ(Emi Nakamura)ダンカン・シメスター(Duncan Simester)ジョン・スタイソン(Jón Steinsson)の四人だ。“Informational Rigidities and the Stickiness of Temporary Sales”(「情報の粘着性と、一時的なセールの粘着性」)と題された彼らの論文によると、個別商品の名目価格(以下、「個別価格」と表現)がどのくらいの頻度で改定されるかを分析する場合であれ、マクロ経済ショックの発生に応じて個別価格がどのように変化するかを分析する場合であれ、「一時的なセール」による価格改定と、「定価」の見直しによる価格改定とを区別することが重要だという。

「価格の粘着性」に関する学術的な研究は、「価格」の粘着性それ自体を問題にするか、「情報」の粘着性(「情報の粘着性」は、「計画の粘着性」を生む原因となる)を問題にするかのどちらかに大別できる。実際のデータによると、個別商品の「実売価格」はかなり頻繁に改定される傾向にあるわけだが、そうだとすると、「実売価格」は経済環境の変化に応じて即座に改定されると見なしていいのだろうか? それとも、「実売価格」をどうするかの決定の一部(例えば、セールをいつ行うか)は、前もって計画されていて、その計画はそう簡単には見直されない(計画が「粘着的」だ)とすると、経済環境が変化しても「実売価格」はなかなか改定されないってことになるのだろうか? ・・・(略)・・・・

彼らの論文では、「一時的なセール」や「特売」に備わる興味深い特徴についても詳細に取り上げられている。

・・・(中略)・・・

「定価」はそう頻繁には見直されないという意味で粘着的であり、一時的なセールの内容については「粘着的な計画」に従って決められている(それゆえ、一時的なセールの内容はマクロ経済ショックが発生してもすぐには見直されない)、というのが彼らの結論だ。

個別商品の「定価」は、そう頻繁には見直されないという意味で粘着的だが、原油価格の急騰・急落といったマクロ経済ショックが起きるとすぐに見直される。その一方で、一時的なセールの内容――「定価」からどのくらい割り引いて売るか、セールをいつ行うか――については「粘着的な計画」に従って決められていて、一時的なセールの内容はマクロ経済ショックが起きてもすぐには見直されない。「定価」は「粘着的な価格」であり、「セール価格」は「粘着的な計画」に従って決められるわけだが、この区別は、「実売価格」の伸縮性(あるいは、粘着性)をめぐって繰り広げられている論争を大いに前進させるだけではなく、マクロ経済ショックの発生に応じて「実売価格」がどのように変化するかについて一段と深い洞察を得る助けにもなってくれることだろう。

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