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リチャード・ヴァーグ「マネーサプライの急激な増加はインフレを引き起こさない」(2017年1月16日)

Rapid Money Supply Growth Does Not Cause Inflation
By Richard Vague

マネーサプライの急激な増加はインフレを引き起こさない
政府債務の急激な上昇、金利の低下、中央銀行バランスシートの急激な増加も同様である

マネタリストの理論は、1980年代からその後数十年間にかけて支配的な経済思想となった。マネタリストの理論では、マネーサプライの急上昇はインフレの原因になるとされている。しかしながら、この理論は、入手可能な証拠で実際に検証すると棄却される。1960年代以降の47カ国を対象に広範な調査を行った我々の調査によると、マネーサプライの急増加に引き続いての高インフレはほとんど観測されない。逆に、高インフレが勃発しても、先触れとしてのマネーサプライの急増加は高い頻度で観測されなかった。

本論文の目的は、これら最新の研究結果を提示することで、我々のデータ、手法、結論についてのフィードバックを求めるものである。

この問題を分析するために、我々は、世界のGDPの91%を占めている47カ国のデータベースを作成し、マネーサプライの急激な増加を各エピソードごとに調査し、それが高インフレに繋がっているかどうか調べた。ほとんどの実例において、インフレには繋がっていなかった。事実は逆となっており、高インフレとなった実例の大部分で、先行する高いマネーサプライの増加は起こっていない。我々が調べた全47カ国は、GDPで計測した経済規模で上位70位以内にランクされており、GDPの上位20カ国を全てを含んでいる。特定の国が含まれていない場合は、その国に関する過去のデータが十分に入手できなかったのが原因である。

インフレの原因をより理解しなければならない必要性はいくつか存在している。現在、日本やヨーロッパの中央銀行は、デフレの進行を食い止めれば、雇用や経済成長がプラスになるとの判断から、マイルドな水準のインフレを発生させる試みを行っている。また、一部の政策立案者は、公的債務と民間債務が共に対GDP比で高水準に達していることから、レバレッジ解消のために見込みある手段を検討し始めており、インフレはその手段の1つとなっている。最後に、多くの国が、許容範囲外の高すぎるインフレをマイルドな水準に押し下げようとしている。こういった国々にとっても、インフレのメカニズムをより深く理解することは重要だ。

我々の分析は、以下のように構成されている。我々は、マネタリー〔指標〕が急速に増えている時期を、以下の異なる3つの状況に定義し、検証を行った。

1つ目は、マネーサプライ(M2)が、国内総生産(GDP)比率で、5年間で20%上昇した状況。

2つ目は、マネーサプライ(M2)が名目値で、5年間で60%増加した場合。

3つ目は、マネーサプライ(M2)が名目値で、5年間で200%増加した場合。(このような急激な増加期を、「沸騰(ブーム)」と我々は呼んでいる。)

次に、高インフレを、以下の2つの状況で定義した。

1つ目は、3年連続して5%以上のインフレが続いた期間(消費者物価指数CPIを使用している)。

2つ目は、5年連続して5%以上のインフレが続いた期間。

以上定義によって〔マネタリー指標の3つの事例 × インフレ状況の2の事例 = 6つ事例で〕、以下の6つの事例の想定が可能となり、我々はこれを検証した。

事例1:マネーサプライが対GDP比で20%上昇した後に、3年連続して5%以上のインフレが続いた事例。
事例2:マネーサプライが対GDP比で20%上昇した後に、5年連続して5%以上のインフレが続いた事例。
事例3:マネーサプライ(M2)が名目値で60%に増加した後に、3年連続して5%以上のインフレが続いた事例。
事例4:マネーサプライ(M2)が名目値で60%に増加した後に、5年連続して5%以上のインフレが続いた事例。
事例5:マネーサプライ(M2)が名目値で200%に増加した後に、3年連続して5%以上のインフレが続いた事例。
事例6:マネーサプライ(M2)が名目値で200%に増加した後に、5年連続して5%以上のインフレが続いた事例。

以上6つの事例それぞれに基づいて、我々は47カ国全てのデータを検証し、「マネーサプライ(M2)が増加した後に高インフレが起こった回数」、もしくは「高インフレが起こったが、マネーサプライ(M2)が急増しなかった回数」を観察した。我々は、マネーサプライ(M2)の急増が、高インフレに先行していた期間として、「インフレ期間の直前に、マネーサプライ(M2)が急増していた期間」あるいは「インフレの高進と、マネーサプライ(M2)が急増が同時に発生した期間」を想定した。例えば、もし1960年から1967年にかけてマネーサプライ(M2)の急増が記録され、1960年から1968年にいずれの時点で高インフレの期間が始まっていれば、我々は、そのマネーサプライ(M2)の急増が、高インフレ期のトリガーになったと想定した。

我々は、以上6つの事例全てにおいて、マネーサプライ(M2)の急増は、インフレの信頼できる予測因子でないことを発見した。

結果は以下となっている(表1参照)。

事例1:マネーサプライ(M2)がGDP比で5年間で20%以上となった実例が54件確認された。この内、5%以上の高インフレが3年間続いたのは3件だけあり、残りの51件では高インフレになっていなかった。この54件とは対照的に、マネーサプライ(M2)の急増が先行してない、高インフレ(3年5%以上)が49件確認された。

事例2:マネーサプライ(M2)がGDP比で5年間で20%以上となった54件の実例の内、1件のみ5年連続して5%以上の高インフレの後進が確認された。残り53件では、高インフレ(5年5%以上)となっていない。この54件とは対照的に、マネーサプライ(M2)の急増が先行してない、高インフレ(5年5%以上)が37件確認された。

事例3及び4:両事例は、「マネーサプライ(M2)が名目値で60%に増加」と定義されている。この定義下では、M2増加後に、高インフレが進行した実例が幾分多く観察されている。マネーサプライ(M2)が60%の水準で先行増加した場合、高インフレの実例は幾分多く観察され、若干のポジティブな結果が得られた。しかしながら、60%の増加が生じても、依然として高インフレとならない非常に多くの実例が観察され、マネーサプライ(M2)の急増を、インフレの原因や予測因子と見なすのは困難となっている。

事例3:我々は、マネーサプライ(M2)が名目値で60%増加した後、3年続けて5%以上のインフレとなった実例を25件発見した。しかしながら、名目値で60%増加した後、3年5%のインフレとならなかった事例を43件発見した。
以上に加えて、我々は、マネーサプライ(M2)名目値で60%増加せずとも、3年5%のインフレとなった実例を6件発見した。

事例4:マネーサプライ(M2)が名目値で60%増加し、5年連続して5%以上のインフレが続いた場合と定義されている。この事例では、マネーサプライ(M2)が名目値で60%に増加した68件中、続けて5年5%の高インフレとなった実例は22回である。一方、残りの46件では5年5%の高インフレは確認されていない。このマネーサプライ(M2)の名目値での60%膨張が先行しない、5年5%のインフレの勃発は8度確認されている。1

事例5及び6は、高インフレと急速なマネーサプライ(M2)増加との間に因果関係がないことが強調されることになっている。なぜなら、名目マネーサプライ(M2)の5年間の増加の基準値を、60%から200%に引き上げると、インフレの発生は、事例3と事例4よりも、さらに低い頻度となるからである。むろんこれは、「マネーサプライ(M2)の高増加が、高インフレを引き起こす」予測の真逆となっている

事例5では、マネーサプライ(M2)の高増加を5年間で名目値で200%増加、インフレ率は3年連続して5%以上と定義した。このようなマネーサプライ(M2)の膨張期は、30件確認されたが、高インフレとなっているのは7件だけである。残りの23件では、高インフレは確認されていない。以上とは対照的に、マネーサプライ(M2)の高増加が先行していない、高インフレの実例は45件確認されている。

事例6では、マネーサプライ(M2)の高増加を5年間で名目値で200%以上増加、インフレ率は5連続で5%以上と定義した。このようなマネーサプライ(M2)の膨張期は、30件確認されたが、高インフレとなっているのは7件だけである。残りの23件では、高インフレは確認されていない。以上とは対照的に、マネーサプライ(M2)の高増加が先行していない、高インフレの実例は30件確認されている。

表1:マネーサプライの急増加

高インフレ:5年間で5%を超えるインフレ、3年間で5%を超えるインフレ


高インフレに繋がった(合計)― M2の膨張が引き起こしたインフレ実例の総数(1つの膨張が、複数の高インフレに繋がっている可能性がある)― 高インフレに繋がった実例(実例ごと)― M2の膨張が数実例の高インフレを引き起こした総数

3年5%の名目値の事例に関しては、データが完全でないにも関わらず、高インフレを引き起こした実例が2件あることに注意されたし。これは、GDP比20%にカウントされていない。

以上結果は、検証事例の国家規模を、大・中・小に分けて検証しても、結果に大きな変化は見られなかった。例えば、我々のデータベース全47カ国の内、GDP上位の10カ国だけを観察してみても、結果はほぼ同じであった。GDP上位の10カ国において、マネーサプライ(M2)が5年間で20%以上増加した15件の内、高インフレが続いたのは1件だけであり、残り14件ではインフレとなっていない。逆に、マネーサプライ(M2)の高増加に先行しない、高インフレは11件確認されている。

5年間で、名目マネーサプライ(M2)の増加が60%以上であった12件の内、6件で引き続いての高インフレがあり、残りの6件はそうはなっていない。対照的に、M2の60%以上の高増加が先行していない、高インフレが2件あった。また、名目マネーサプライ(M2)が5年間で200%以上増加した5件の内、2件は高インフレの期間が続いているが、3件はそうはなっていない。対照的に、M2の200%以上高増加が先行していない、高インフレが10件あった。

以上結果は、マネタリストの理論が示差するものと正反対となっている。さらに、我々は、調査結果を用いて、「急速なマネーサプライの増加が、少なくとも穏やかなインフレに繋がっているか」を調べた。これを分析するために、我々は穏やかなインフレをCPIで2%の上昇と定義した(むろんこの定義では、高インフレも含まれることとなる、その場合も単に「穏やか」と表記している)。以上によって、以下の結果が得られた。

  • 事例7では、マネーサプライ(M2)が5年間で対GDP比で20%以上増加した54件の内、8件の穏やかなインフレの期間が後続しているが、残りの46件ではそうはなっていない。対照的に、対GDP比で5年20%のM2の増加が先行してない、穏やかなインフレが27件あった。
  • 事例8では、マネーサプライ(M2)が名目値で5年間に60%以上増加した68件の内、17件の穏やかなインフレの期間が後続しているが、残りの51件ではそうはなっていない。逆に、名目値で5年60%のM2の増加が先行してない、穏やかなインフレが14件あった。
  • 事例9では、マネーサプライ(M2)が名目値で5年間に200%以上増加した30件の内、4件の穏やかなインフレの期間が後続しているが、残りの26件ではそうはなっていない。逆に、名目値で5年200%のM2の増加が先行してない、穏やかなインフレが32件あった。

表2:急速なマネーサプライの増加

穏やかなインフレ:5年で2%を超えるインフレ

したがって、マネーサプライの急速な増加が、穏やかにインフレに繋るという証拠ですら、我々は発見することができなかった。

(上の図表で、高インフレに比べて穏やかなインフレの件数が少ないのは、穏やかなインフレの実例について入手可能がデータが少ないことに起因している。)

我々の調査を裏付けている詳細は、privatedebtproject.org/inflationstudyで確認可能である。追加して、論点となっている47カ国の、より頑健な一連のデータについては、debt-economics.org/review-data.phpで入手可能だ。一連のスプレッドシートのデータの大部分は、国際決済銀行、連邦準備銀行、世界銀行、CEIC、国際通貨基金などの情報源から容易に入手可能なデータを纏めたものである。

〔我々が集めた〕一連の要因に基づいて、上記で示されていない多くのバリエーションを試してみたが、常に似たような結果が得られた。例えば、ある事例では、マネーサプライの急速な増加の定義を、M2の名目値で5年間に2400%としてみた。また別の事例では、マネーサプライの急速な増加の定義を、「実質値」で5年間に45%としてみた。また、「マネーサプライ(M2)の高増加にインフレが後続していると」と、想定するために、インフレの開始時期の想定を、早めたり遅くしたりする詳細な違いをいくつか定義として使用した。これら代替え定義の事例いずれにおいても、結果は似たようなものであった。すなわち、マネーサプライの高増加の後に高インフレが発生することはほとんどなく、逆に、高インフレが起こった場合、マネーサプライの高増加が先行していないことが頻繁であった。我々は全てのデータを保持している国の事例でだけ計測を行っており、むろん、一部の国の一部の期間に関しては完全データを保持していない。全体的には、我々は、マネーサプライ(M2)が急増加を示した54件のそれぞれのインフレのデータを入手している。一方、上記で定義したように、65件の高インフレに関しては、その内の39件のマネーサプライ(M2)のでデータを入手した。

さらに、我々はマネーサプライの定義を変えても同じ分析を行ったが、この場合も常に同じような結果が得られた。M2の代わりに、データベース内の国において過去のデータが幅広く入手可能な、M1を用いて分析を行った。また、M0やマネタリーベース(流通貨幣+中央銀行の準備預金残高)を用いても分析を行った。こういった事例においても、上記のケースと同様に、マネーサプライ〔M1、M0、マネタリーベース〕の急増加に引き続いての高インフレは起こっておらず、マネーサプライ〔M1、M0、マネタリーベース〕の急速な増加に先行してない高インフレが頻繁に起こっている。

政府債務の増加、金利の引き下げ、中央銀行のバランスシートの拡大

マネーサプライの増加ほど議論されないが、経済評論家らは、インフレの原因として、政府債務の急増をよく挙げている。また最近は、この案件の変異バージョンとして、中央銀行による積極的な政府債務や銀行ローンを購入(いわゆる量的緩和)と、その結果による中央銀行のバランスシート急拡大がある。一部のエコノミストは、これもインフレを招くだろう、と主張している。またエコノミストよっては、急速な金利低下や低金利は、高インフレの原因になる、と指摘している。我々は、この3つの理論を全て検証した。

政府債務の急激な増加がインフレに繋がるかどうかを算定するため、我々は上述での手法を踏襲した。我々は、政府債務の急激な増加の期間を、以下の2つ方法で定義している。1つ目の定義は、政府債務が実質GDP比で5年間に20%以上増えた場合である。2つ目に定義は、政府債務が、名目GDPで5年間に200%以上増えた場合である。高インフレの定義として、我々は5%以上のインフレが5年連続で続いた期間とした。以上定義に従って、各国のデータを再調査し、「政府債務の高い増加に引き続いて高インフレが何度起こったか」、そして「政府債務の急増加が先行していない高インフレが何度起こったか」を調べた。

政府債務における、我々の調査結果は以下となっている。

事例10:政府債務が〔実質GDP比で〕5年で20%以上増えた47件の内、6件では高インフレが続いているが、残りの41件ではそうはなっていない。以上とは対照的に、政府債務の急増に先行していない高インフレの実例は25件確認された。

事例11:政府債務が名目GDPで5年間に60%以上増えた85件をの内、17件では高インフレが続いているが、残りの68件ではそうはなっていない。公的債務の膨張が先行していない、9件の高インフレが確認された。

事例12:政府債務が名目GDPで5年間に200%以上増えた40件をの内、8件では高インフレが続いているが、残りの32件ではそうはなっていない。政府債務の高水準の増加が先行していない、23件の高インフレが確認された。

表3:公的債務の急増加

急激な金利の低下

我々は、金利の低下がインフレに繋がるかどうかを算定するのにも、以上の手法を踏襲した。具体的には、我々は、金利低下期間の定義として、5年連続して金利が5%pt低下した期間とした。金利は、現行市場貸し出し金利を使用したが、データが入手できなかった場合は、国債金利(通常は満期1年未満の割引短期国債)を使用した。繰り返しとなるが、我々は、高インフレを、5%以上のインフレが5年連続で続く期間と定義している。以上定義に従って、各国のデータを再調査し、「金利の低下に引き続いて高インフレが何度起こったか」、そして「金利の低下が先行していない高インフレが何度起こったか」を調べた。

調査結果は以下である。5年連続して金利が5%pt以上低下した70件の内、高インフレは4件だけであった。残りの66件では、高インフレとなっていない。この定義水準ではない金利低下が先行してない高インフレは17件確認された。

また、我々は、実質金利が5年で3%pt以上低下した実例について調査した。全115件の内、11件は高インフレとなっているが、残り104件では高インフレとなっていない。一方、この定義水準でない実質金利低下が先行していない高インフレは17件確認された。

中央銀行

大規模な中央銀行は数少ないため、中央銀行のバランスシートの拡大を分析するためのデータセットは、多く存在していない。ここでは、米連邦準備制度理事会(FRB)、ヨーロッパ中央銀行(ECB)、中国人民銀行、日本銀行、イングランド銀行の5大中央銀行のみを取り上げ、バランスシートのデータを、それぞれ1915年、1999年、2002年、1999年、1706年まで遡って使用している。我々は、バランスシートが対GDP比で5年間に10%以上増加した場合について観察を行った。このようなバランスシートの拡大は7件起こっているが、高インフレの後続はゼロ件であった。一方、バランスシートの拡大に先行しない高インフレが6件観察された。

我々は、中央銀行の名目総資産が5年間に100%以上増加した場合についても観察を行った。このような実例12件の内、1件は高インフレが後続しており、10件では高インフレとなっておらず、残り1件はインフレのデータが存在していなかった。一方、この水準での名目資産の増加が先行していない、高インフレが5件確認された。

読者は、本サイトでここまで言及してきた研究について分析していただきたい。我々は、ここでの分析を修正するための、いかなるコメント、意見、提案を歓迎する。なんらかのコメントがある場合は、著者(rvague@gmail.com)へのメールの送信が可能となっている。

インプリケーション(示唆されるもの)

もし我々の観察が正しい場合、いくつかのインプリケーションが得られる。その内、最も重要度が高いのは、中央銀行によって現在行われているインフレを誘発させる試みは成功する可能性が低いであろうことである。

中央銀行には自家薬籠中の公理が1つある。曰く「貸し出しの増加を高めれば、経済成長に寄与する」。たしかに民間投資の増加は、経済成長の中核的決定要因である。しかしながらほとんどの状況下で、金融政策は、民間投資に対して相対的に低い影響しか与えていない。金融政策の影響は、「借り手の実需(これは、借り手がどれだけレバレッジを掛けられるか、つまりは、より多くの負債を抱えることができるかの効用関数の一部)」、「貸し手の与信枠方針」、「それら借し手への〔金融規制等による〕資本要件」よりも下位に位置付けられる。

本稿では、「何がインフレの原因となるのか?」との疑問には未回答のままとなっている。むろん、この論題に関しては、膨大な文献が存在している。我々の調査が示唆しているのは、インフレは非先進国で頻繁に発生していることである。個々の実例において原因は様々であるが、大抵は、サプライショックや、民間の信用需要の誘発等の「需要と供給の不均衡」が要因となっている。その他では、輸入インフレの引き起こす可能性がある為替レートや、該当国の政治や政治的安定性に関しても考慮事項となっている。債務のデレバレッジにおけるインフレの役割については、デモクラシー・ジャーナル誌の個人債務についての論文で、私は触れたことがある。こういった一連のマクロ経済の疑問に対する包括的な研究の成果として、我々は今、様々なマクロ経済的要因を含むインフレの原因についての見解を開発中である。しかしながら、本論文で提示したインフレに関する結論が、従来までの経済学的知見と異なるものであることを考えると、我々は知見をさらに洗練させるために、これら一連の観察実例についてフィードバックを得たいと考えている。

結論

世界のGDP91%を占める国々を調査した結果、マネーサプライの急激な増加に続けての高インフレが発生することは稀であり、逆に、マネーサプライの急激な増加が先行していない高インフレが頻繁に発生していることが示唆された。アメリカ経済は来年、なんらかのインフレの上昇を経験する可能性があるが、上昇するとすれば、金融政策以外が要因となっている可能性が高いと考えられる。

いかなるフィードバックをも歓迎します。ご意見をお待ちしております。

本論文は、“Institute for New Economic Thinking”で最初に発表された。

〔※訳注:本エントリは、リチャード・ヴァーグ氏の許可に基づいて翻訳している。〕

  1. 原注:M2の名目値が5年で60%以上増加した場合を、「M2の膨張」と定義したが、これは他と比較すれば短期のものが多い。しかし、非常に長期間続いたものもある。例えば、中国では、1982年から現在までこのような膨張期間が続いている。この期間では、インフレ率が3年以上連続して5%を超えた時期が2回あった。1987~1989年と、1992~1996年である。我々の定めた定義では、これはマネーサプライ(M2)の急増加に引き続いての高インフレが起こった1件の実例としてカウントされる。表1では「高インフレを招いた(実例ごと)”Led to high inflation (per instance)”」の列に記載されている。我々の研究を再調査するアナリストの便益を考慮して、同じM2の膨張期に発生した高インフレ期間の合計数も「高インフレを招いた(総数)”Led to high inflation (total)”」の列に記載している。 []

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