「オーストラリア行動経済学チーム」が,雇用に関する無作為化実験をしている (pdf).実験では,オーストラリア行政府の上級職応募者が調査され,ランクをつけられた.性別・マイノリティ地位・先住民地位が推測できる場合の扱いと応募者の素性が伏せられた場合の扱いを比較することで,研究チームは素性を伏せることの効果と偏見を検証できた.
我々の調査では,公務員が女性応募者とマイノリティ応募者にプラスの(マイナスではなく)差別を行ったことがわかった:
応募者の素性がわからない場合に比べて,素性が推測できる場合,参加者たちが女性応募者を最終候補に残す確率が 2.9% 高く,男性応募者を残す確率が 3.2% 低かった.
素性が伏せられた場合に比べて,マイノリティ男性は最終候補に残される確率が 5.8% 高く,マイノリティ女性は 8.6% 高くなった.
相手を厚遇する差別がもっとも強くなったのは,先住民女性の応募者の場合で,素性が伏せられた場合に比べて最終候補に残る確率が 22.2% 高くなった.
興味深いことに,男性評価者は同等の女性評価者にくらべてマイノリティ候補者に対する厚遇差別を顕著に強く示し,40歳以上の評価者はもっと若い評価者に比べて女性とマイノリティ双方に対して格差是正措置(アファーマティブアクション)をずっと強くとった.
この研究は小規模で,しかも参加者たちはじぶんたちが研究対象になっていることを知っていた(なんの研究なのかは知らないにせよ).
この研究で思い出すのが,Williams & Ceci の重要論文だ.彼らは,大学教員の雇用で強いプラスの性別差別を見出している(平等な扱いを見せた唯一の例外を除いて):
学術界で女性が十分に存在感を示していないのは,科学文献でもメディアでも,性差別的な雇用によるものとされることが通例である.本稿では,5件の雇用実験を報告する.いずれの実験も,架空の男女応募者を学部が評価している.生物学・工学・経済学・心理学の准教授職に合わせて同一の学術業績を偽装したうえで,応募者のプロファイルは系統的に変化させた.広く信じられている想定に反して,これら4分野の学部メンバーの男女は,同等のライフスタイルと同一の資格をもつ男女候補者がいるとき,2:1 で男性より女性の採用を優先した.例外は経済学者で,彼らはいずれか一方の性別を優先しなかった.
Phil Magness に感謝.