職場での差別が不可能だったりありそうにない市場ですら,男女の賃金格差があるようだ.たとえば,Uber の運転手は,性別を考慮しないアルゴリズムで賃走を割り振られ,賃走の時間と距離に基づいて対価を支払われる.だが,運転手の手にするお金にはおよそ 7% と小さいながらも男女差が長らく続いている.これは,男性運転手の方がわずかに速く,混雑した地域で働くのを選び,わずかながら経験が多いことに起因しているようだ.Litman et al. (2020) によれば,これと同種の相違がメカニカルタークでの稼ぎにも見られるという.
本研究では,ある匿名プラットフォームで18ヶ月間に見られた収入格差を検討する.この期間に,500万件近くのタスクが 2万名以上のユニークユーザーによって完遂された.「メカニカルターク」オンライン市場に固有の要因により――たとえば匿名であること・ユーザーが自らタスクを選別すること・遂行されるタスクが相対的に同質であること・柔軟な労働日程といった要因により――このプラットフォームでは性別によって収入が異なるとは予想していなかった.だが,我々の予想に反して,頑健かつ永続的な男女の収入格差が観察された.
調査期間に実際にメカニカルタームで生じたと推定される平均収入は1時間当たり $5.70 で,男女の差は 10.5% ある.
だが,この事例では,経験もタスク選択も人口動態も男女差を説明しないように見える.ここでひとつ面白い発見がある.女性の方が,掲示された対価がより低いタスクを選びがちなのだ――もしかすると,男性の方が少しばかりのんびりしてるのかもしれない.しらんけど.人はそれぞれちがってるものだ.
N.B. この論文の著者たちは,わざわざ自分から「政治的に正しくない」と申告している.