イギリスは,「高能力個人」向けのビザを新しくつくった.高能力個人ビザの制度では,次の3つの大学ランキングシステムの少なくとも2つに該当するトップ50大学を卒業した人物は,誰でもイギリスに2年間(学士または修士)あるいは3年間(Ph.D)滞在できる.3つのランキングは次のとおり―― “(1) Times Higher Education World University Rankings, (2) Quacquarelli Symonds, (3) Academic Ranking of World Universities”.さらに,ビザ取得にあたって雇用やスポンサーは必要とされず,配偶者や扶養家族も同じ扱いを受ける.
アメリカも,ゆっくりと――すごくゆっくりとだけど――同様の制度に向かっている.ぼくが下記の一節を書いたのは,もう12年も前(!)のことだよ
ドア #1 に並んでいるのは,並外れた能力の持ち主たちだ:科学者・芸術家・教育者・企業人・運動選手たち.一方,ドア #2 に並んでいるのは,無作為に取りそろえられた人たちだ.どっちのドアを,合衆国は開くべきだろう?
2010年に,合衆国がより多く選んだのは,ドア #2 の方だった.傑出した能力の持ち主たち 4万人と,クジで無作為に選ばれた5万5千人の人たちに,それぞれビザが確保された.
これもまた,高技能移民を扱う合衆国の奇妙な政策のささやかな一例にすぎない.毎年,だいたい14万人の雇用ビザが認められている.対象となるのは,傑出した能力の持ち主たち,高い学位をもつ専門職たち,そしてその他の熟練労働者たちだ.合衆国にいる労働力が1億5000万人であることに照らして見ると,この人数は馬鹿らしいほどに小さい.その結果として,高技能の人物がアメリカのビザを発行してもらうまでに何年も,ヘタすると10年20年もかかってしまっている.さらに,こうした14万件のビザは,高技能人物の配偶者やその未婚の児童たちも対象にしなくてはならない.このため,こうしたプログラムのもとでは,高技能労働者の実際の人数は合計の〔14万人という〕人数の半分にも満たない.もしかすると,いちばん奇妙なのは,人口規模によらず一国当たりに許されたビザの件数に上限があることかもしれない.人口が10億人以上もいる中国からやってくる傑出した能力の持ち主たちに割り当てられたビザの件数は,いくつだと思う? きっかり,2,803件だ.まったく同じ数が,グリーンランドにも割り当てられている.
上の抜粋に書いたことの大半は,今日でも当てはまっている.ただ,下院で可決された「アメリカ競争法案」(The US Competes Act) によって,高技能移民に発行されるビザは増えるだろう.
また,同法案は,合衆国の大学または外国でそれらに相当する大学の科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学 (STEM) の Ph.D をもつ外国籍の人たちとその家族に関しては,グリーンカード(永住者カード)の年間上限の対象外に指定している.また,この法案の条文では,合衆国の国家安全保障・経済安全保障にとって重要な専門職や医療専門職も,STEM の Ph.D 保有者の定義に含めて,上限対象外にしている.