アレックス・タバロック 「日差しの中を散歩してインフルエンザに(新型コロナにも?)備えよう」(2020年11月15日)

●Alex Tabarrok, “Sunny Days Protect Against Flu”(Marginal Revolution, November 15, 2020)


ビタミンDのサプリメントは、安くで手に入れられる。しかし、日差しの中を散歩するのは、もっと安くで済む。私の話になるが、コロナ禍がはじまって間もないうちから、ビタミンDのサプリを摂るようにしているし、日差しの中を散歩するようにもしている。私のやっていることが無駄ではなかった証拠をスラスキー(David J.G. Slusky)&ゼックハウザー(Richard J. Zeckhauser)の二人が挙げてくれている [1] 訳注;草稿はこちら(pdf)。

日光に当たると体内でビタミンDが生成されることはよく知られているが、そのおかげでインフルエンザに感染するリスクが抑制される可能性がある。ビタミンDのサプリメントの効果を検証した計25のランダム化比較試験を総括したメタ分析の一つ(Martineau et al. 2017)では、ビタミンDのサプリメントには急性上気道炎に感染するリスクを引き下げる効果があると結論付けられている。本稿では、サプリメントを摂取する以外の方法で体内にビタミンDを自動的に生成することを可能とする「日光」(「日光浴」)の効果を検証した。本稿で得られた検証結果は、Martineau et al.(2017)の結論を補完・補強する格好となっている。

日光がインフルエンザに感染するリスクを引き下げる効果を持つのは、夏の後半から秋の前半にかけての日射量が多めの時期というのが本稿で得られた主たる検証結果である。日光に備わるインフルエンザ予防効果は、例年より日射量がだいぶ少なくて、例年よりインフルエンザが流行するのが早かった2009年に逆のかたちで顕著に表れている。本稿で得られた検証結果は、目下の新型コロナ危機に対してだけでなく、今後の新型インフルエンザ危機に対しても関連性を持つ可能性がある。新型インフルエンザが流行しかねない脅威は身近にある。H1N1型に似たウイルスが既に動物の間で広がっているのだ(Sun et al. 2020)。しかしながら、その時々の特殊な事情を踏まえると(例えば、2009年の秋は失業率が過去25年で最も高い時期だった)、安易な一般化には慎重であらねばならない。

残された疑問もある。日光は、インフルエンザウイルスの中でもH1N1型に対してだけ予防効果があるのかどうかという疑問がそれである。「H1N1型ウイルスとは異なる型のウイルスが例年より早く流行していたとしたら・・・」という反実仮想を検証することは叶わないものの、日光に備わるインフルエンザ予防効果はH1N1型に対してだけに限られないことを示唆する証拠が少なくとも二つある。一つ目の証拠は、Martineau et al.(2017)である。Martineau et al.(2017)によると、ビタミンD(のサプリメント)が急性上気道炎に感染するリスクを引き下げる効果は、ウイルスの型がH1N1型の場合だけに限られないとの結果が得られている。二つ目の証拠は、本稿で得られている(州の一つ下のレベルの行政単位である)郡レベルのデータの検証結果である。それによると、2009年(H1N1型ウイルスが流行した2009年)以外の年に関しても、秋季の日射量とインフルエンザに感染するリスクとの間に負の相関が成り立つとの統計的に有意な結果が得られている(詳しくは、表7を参照されたい)。

まとめると、本稿は、方法論(分析手法)の面で新たな貢献を果たしているだけでなく、「ビタミンDには、急性上気道炎に感染するリスクを引き下げる効果がある」とのかねてからある説を補強する格好にもなっている。ビタミンDは、サプリメントを摂取することを通じても、太陽の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ中を散歩することを通じても、体内に取り込むことができる。日差しの中を散歩する人が増えれば、ウイルスに対する免疫力が高まって、社会全体のためにもなるのだ。

スコットランドでは、政府が屋内に篭(こも)りがちな人(日光を浴びる機会が少ない人)向けにビタミンDのサプリを無料で配布しているらしい。私見を述べさせてもらえば、ビタミンDのサプリを配布するのには賛成だが、どちらかと言えば日光に当たる(日差しの中を散歩する)方をお薦めしたいと思う。というのも、日光は、ビタミンDを体内に生成する以外のメカニズムを通じても、ウイルスに感染するのを予防する効果を発揮する可能性がある――それゆえ、ウイルスに感染するのを予防する効果がビタミンDのサプリを摂取するよりも大きい可能性がある――からね。

折りよくと言うべきか、ニューロサイエンス(脳神経科学)の研究結果によると、こちらの曲(カトリーナ&ザ・ウェーブズの『ウォーキング・オン・サンシャイン』)が聴いている人を最も幸せにしてくれる曲の一つらしい。

情報を寄せてくれた“陽気な”(sunny)ケヴィン・ルイス(Kevin Lewis)に感謝。

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1 訳注;草稿はこちら(pdf)。
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