●Alex Tabarrok, “Perceptions of Corruption”(Marginal Revolution, October 23, 2007)
世界各国の汚職の実態に厳しい監視の目を光らせている非政府組織(NGO)のトランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)が毎年公表している腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index;CPI) [1] … Continue readingは広く知られているが、興味深いというか何というか・・・まあ、こんな話があるようだ。
「トランスペアレンシー・インターナショナルは、CPIの作成をヨハン・グラフ・ラムスドルフ(Johann Graf Lambsdorff)教授に依頼している」とのことだが、CPIの「生みの親」を自任しているラムスドルフにはもう一人別の「子供」がいるようだ。その「子供」というのは、Anti-Corruption Training and Consulting(ACTC)。ラムスドルフはこの会社の共同設立者なのだ。
さて、ACTCはどんな事業を手掛けているのだろうか? ACTCのサイト [2] 訳注;リンク切れ。会社名で検索してもヒットしないので、会社は既に無くなっている可能性が高い。では、最近の業務実績について次のように報告されている。
ラムスドルフ教授とマティアス・ネル(Mathias Nell)の2名は、中華人民共和国監察部からの招きを受けて、2007年7月22日から29日までの計8日間にわたって中国に滞在することになりました。両名は、中国滞在中に、北京、南京、成都市で汚職撲滅に向けたコンサルティング業務を手掛けました。また、ラムスドルフ教授の著書である『The Institutional Economics of Corruption and Reform: Theory, Evidence and Policy』の中国語訳の出版を記念して、清華大学で出版記念セレモニーが催されました。
ところで、中国の(2007年度の)CPIの数値はというと・・・、10点満点 [3] 訳注;数値が大きいほど、腐敗のレベルが低くてクリーンなことを示している 中で3.5点だ(180カ国中72位)。最下位のソマリア(1.4点)に比べるとましではあるが、かなり腐敗しているとは言える・・・よね? [4] … Continue reading 最後は、ACTCによるコンサルティング業務の様子を収めた写真で締め括るとしよう。
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●Tyler Cowen, “Just how bad is corruption in China?”(Marginal Revolution, December 10, 2012)
ジョージ・メイソン大学の同僚であるカルロス・ラミレス(Carlos Ramirez)が最新の論文(“Is Corruption in China ‘Out of Control’? A Comparison with the U.S. In Historical Perspective”)でスクープを報じている [5] 訳注;Journal of Comparative Economics誌に掲載されたバージョンはこちら。。論文のアブストラクト(要約)を引用しておこう。
本稿では、過去15年間における中国での汚職と、1870年から1930年にかけてのアメリカでの汚職の比較――両国が1人あたり実質所得で測ってほぼ同じ発展段階に位置していた時期における汚職の比較――を試みる。そのために、アメリカ国内の主要な新聞で報じられた汚職事件に関する記事の件数に基づいて、新たに汚職指数を作成した。指数の頑健性をチェックするためにいくつかの検証を試みた結果、本稿で新たに作成された汚職指数は両国の汚職のレベルを測る上で信頼の置ける指標であることが確認された [6] … Continue reading。本稿での分析を通じて明らかになった主要な結果をまとめると、次のようになる。1870年代初頭のアメリカ――当時の1人あたり実質所得はおよそ2,800ドル(2005年時点の貨幣価値で換算)――の汚職のレベルは、1996年時点の中国――1人あたり実質所得はおよそ2,800ドル――よりも、7~9倍程度高い [7] 訳注;1870年代初頭のアメリカでは、1996年時点の中国よりも、汚職が7~9倍程度多く発生している。。1928年時点のアメリカ――当時の1人あたり実質所得は7,500ドル――の汚職のレベルと2009年時点の中国――1人あたり実質所得は7,500ドル――の汚職のレベルを比べると、ほとんど差は見られない。以上のことから何が示唆されているかというと、中国での汚職は注目に値する出来事ではあるが、かつてのアメリカの経験に照らし合わせて考えると、そのレベルは驚くほど高いわけではないと言えるだろう。加えて、両国の経験は、『汚職のライフサイクル理論』――経済発展の初期の段階では、経済が発展するにつれて汚職は増加する傾向を見せるが、近代化が成し遂げられて以降は、経済が発展するにつれて汚職は減少に向かう――と整合的とも言えそうである。『汚職のライフサイクル理論』が妥当する可能性が高いとすると、中国の発展が今後も続くようであれば、それにあわせて中国国内での汚職は減少に向かう可能性が高いと予想されることになる。
References
↑1 | 訳注;民間部門も含めた一国全体の腐敗(汚職)のレベルを測るものではなく、政府部門(政治家や官僚)の腐敗(汚職)のレベルに焦点を合わせているとのこと。加えて、ビジネスマン等がその国の政府部門の腐敗具合についてどのように認識しているかに照らして、数値の計測を行っているとのこと。 |
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↑2 | 訳注;リンク切れ。会社名で検索してもヒットしないので、会社は既に無くなっている可能性が高い。 |
↑3 | 訳注;数値が大きいほど、腐敗のレベルが低くてクリーンなことを示している |
↑4 | 訳注;ちなみに、最新のデータ(2013年度版)によると(2012年から、10点満点ではなく100点満点に変更)、中国は40点で177カ国中80位。トップ(最もクリーンな国)はデンマークとニュージーランド(91点)、最下位はアフガニスタンと北朝鮮とソマリア(8点)。日本は74点で18位という結果になっている。 |
↑5 | 訳注;Journal of Comparative Economics誌に掲載されたバージョンはこちら。 |
↑6 | 訳注;例えば、上のエントリーで取り上げられているCPI(腐敗認識指数)との相関がチェックされているが、この論文で新たに作成された汚職指数とCPIとの間には高い相関が確認されている。 |
↑7 | 訳注;1870年代初頭のアメリカでは、1996年時点の中国よりも、汚職が7~9倍程度多く発生している。 |
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