Paul Krugman, “No Reason to Fret About France,” Krugman & Co., November 22, 2013
フランスを気に病む理由なんかないよ
by ポール・クルーグマン
まずは大事なことから:フランスにはいろいろ問題がある.失業率は高い.とくに若者の失業率が高い.多くの小企業は苦しんでいる.人口は高齢化が進みつつある(ただ,ドイツも含む他の多くの国ほどではない).
でも,ぼくが見つけられるどんな尺度で見ても,フランスは欧州の基準で言われるほどひどくは見えない.国内総生産はだいたい危機以前の水準にまで回復してるし,財政赤字はかなり小さく,中期的な債務状況にはまったく懸念がない.それどころか,長期的な債務状況は,フランスの隣国たちと比べて,かなり良好だ.これは出生率が高いことによる.
なのに,フランスはむちゃくちゃな罵倒の的になっている.昨年,『エコノミスト』誌はフランスのことを「欧州の心臓部にしかけられた時限爆弾」だと宣告した.今年になると,『CNNマネー』の編集者ショーン・タリーがフランスを取り上げて「自由落下している」と述べている.
でも,タリーは具体的な話をほとんど提示しないまま,フランスが労働コストの上昇によって「競争力のギャップが大きく開く」のに直面していると主張している.ふーん.欧州委員会が出してる数字を引いてみようか.下のチャートでは,フランスをユーロ圏全体と比べてある.ちょっとばかり悪化してるように思う――けど,これで「大きく開く」のはギャップじゃなくて,あくびしちゃう口の方だ.
また,タリー氏は,「フランスの下降をいちばんよく例証しているのは,海外貿易の急速な悪化だ.1999年に,フランスは世界の輸出の7パーセントほどを売っていた.今日,この数字は3パーセントをどうにか超えているにすぎず,さらに急速に落下している.」
でも,それを言うならアメリカも含めてほぼあらゆる先進国が世界の輸出に占めるシェアを下落させている(ドイツは例外).昨年公表されたニューヨーク連邦準備銀行の研究論文(ここで読める: bit.ly/zHJvcs)では,この下落は新興経済大国が伸びるなかでおおむね先進国経済と軌を一にしたものだと述べて,フランスはだいたい典型的な国として描き出されている.
ここでも,言わんとしてることはフランスに問題がないってことじゃあない.問題は,フランスの問題は穏当なものなのに,どうしてこの国だけが,あんな黙示録めいた修辞つきで信用の格下げを招くのかってことだ.
で,答えはひとえに政治にある.フランスの罪状は超過債務でもなければとくにみすぼらしい経済成長でもないし,冴えない生産性でもないし(だいたい2000年以降のドイツと同等だ),ぱっとしない雇用の成長でもなくて(同上),とにかくその手の問題じゃない.フランスの罪状は,福祉手当を削減する代わりに増税することで財政を健全化してることだ.これが破滅的な政策だってことを示す証拠なんてない――じっさい,債券市場は気に掛けてないみたいだ――けど,証拠なんてどうでもいいんでしたっけね.
© The New York Times News Service