スコット・サムナー「平時に戻る?」(2021年3月30日)

[Scott Sumner, “Back to normal?” TheMoneyIllusion, March 30, 2021]

去年のいまごろ,ぼくはこう言ってた――Covid-19 の初期段階では対応が不足してしまった一方で,パンデミックの終局では過剰対応がなされるだろう.その過剰対応がいま起きているようだ.

先日,母親に会いに行った.彼女は高齢者向けの共同住宅で暮らしている.そこに住んでいる人たちはみんな,ワクチン接種を2回とも受けている.それなのに,ありとあらゆる制限がいまだにかけられている.マスク着用は必須だし,外から来訪した人は一度に2人までしか入れない.受付係には,「最近外国に行ってきましたか」と何度も質問された――まるで,外国に行ってたらぼくがいっそう危険になるかのように.

ブライアン・キャプランが,ワクチン接種を追えたら社会が平時に戻るよう励ます Tシャツを宣伝している:

こんな記事が目にとまった:

世論調査:バイデンに COVID-19,移民対応,銃問題で高支持率(…)

国民のかなりの割合が,COVID-19 ワクチン配布におけるバイデンの取り組みを支持している.支持はアメリカ人の4人に3人という割合にのぼる.

証拠を見ると,アメリカ政府のワクチン配布は手際がわるいし,国境ではなんら異例なことは起きていない.

じゃあ,どうして世論調査はこういう結果になってるんだろう? おそらく,メディアが国民に「ワクチン配布は見事にすすんでいます」「国境はひどいありさまです」と伝えているからじゃないかと思う.メディアの物語では,トランプは国境で強硬な姿勢をとる一方でコロナウイルスでは無能をさらしたと考えられているので,「バイデンは移民受け入れには柔軟な一方でコロナウイルスではトランプより有能」という自分たちの先入観を裏付ける情報をリポーターたちはとにかく探し出しているんだろう.

ちょうど,2008年のときみたいだ.当時,これは住宅/金融危機だというのがメディアでの物語で,メディアにいる誰一人として,リーマンが破綻したあとになっても連銀が金利をいっこうに切り下げようとしないでいる理由を調査しようとしなかった.それは,あらかじめ決まった物語には含まれていなかったわけだ.

PS. たしかに,大半の国々はアメリカよりさらにワクチンでヘマをやってる.でも,だからといってアメリカが手際よくやっているってことにはならない.

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