スコット・サムナー 「階級バイアス」(2016年1月16日)

●Scott Sumner, “Class bias”(TheMoneyIllusion, January 16, 2016)


1930年代の新聞を読み漁っていた時に驚かされたことの一つは、下流階級に対する強固な偏見だ。さらに数百年前に遡ると、下流階級に対する偏見――「階級バイアス」――は、輪をかけてひどかったろうと思う。貴族が農民のことを家畜並みの存在と見なしていたわけだから。

今ではいくらかマシになってはいるが、近ごろ施行されたばかりの法律 [1] 訳注;リンク切れを見てつくづく思い知らされたのは、「階級バイアス」の問題は完全に払拭(ふっしょく)されたとは言い切れないらしいということだ。

キャンパス安全法(大学構内での性暴力撲滅法)は、ドメスティック・バイオレンス(DV)、デートDV、性的暴行、ストーカー行為といった一連の問題に対処する一環として、学生および職員に対して教育プログラムを施すことを大学に求めている。教育プログラムの具体例は、以下の通り。

  • 新入生ならびに新入職員に対する一次予防・意識向上プログラム
  • 第三者介入トレーニング(第三者としての立場から性被害を予防するための安全で積極的な対処法の指南)
  • 性被害に遭うリスクを減らすための指南(性暴力の危険信号を察知する術などを学ぶ)
  • 学生および職員に対する予防・意識向上プログラムの継続的な実施

間違っているようなら指摘してもらいたいが、私なりの仮説がある。政策当局者の多くは上流階級出身であり、中流・下流階級の利害よりも自分が属する階級(上流階級)の利害を一番に気にかける傾向にあるように思われるのだ。他の階級のことなんて完全無視って言いたいわけじゃない。お金に余裕があることもあって、そこそこの額であれば、所得を他の階級へと再分配する政策に賛同する向きも多い。とは言え、政策当局者の多くは、自分も属する上流階級の利害を何にも増して気にかけているに違いないように思われるのだ。別に過激な主張だとは思わない。自分と似た相手のことを優先的に気にかけるというのは、人間の脳に埋め込まれている先天的な傾向なんじゃなかろうか。

先に引用した法律にも「階級バイアス」が反映されているというのが私の考えだ。というのも、大学に進学していない若者は対象外になっているのだから。いくつか指摘しておきたいことがある。

  1.  大学構内での性暴力の問題は、かなり深刻なものなのかもしれない。しかし、性暴力の問題は、大学生以外の学生(小・中・高校生)の間でも同じくかなり深刻らしいというのをどこかで読んだ記憶がある。
  2. 大学生以外の学生に、プログラム(性被害を防ぐことを意図したプログラム)を受講するために大学まで赴くよう求めるのは難しいだろう。では、いくつかの「チェックポイント」でプログラムを受講させるようにしたらどうだろうか? 運転免許を更新する時だとか、お酒を飲むために提示する必要のある身分証を手に入れる時だとか、公的な給付制度(フードスタンプだとか、失業手当だとか)の恩恵にあずかる時だとかに、同時にプログラムの受講を求めるようにしたらどうだろうか? 全員をカバーすることはできないだろうが、大多数をカバーすることにはなるだろう。

大学生だけがプログラム(性被害を防ぐことを意図したプログラム)の対象になっているのは、法律を作った政策当局者が「階級バイアス」を抱えているせいなんだろうか? それとも、何か別の要因が働いているんだろうか? 支配階級は、性被害の問題で上流階級と同じくらい貧困層のことも気にかけているかというと、そのようには見えないのだ。

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1 訳注;リンク切れ
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