――というのが,今回の『ブルームバーグ』コラムの話題だ.抜粋しよう:
さて,一部のユーザーグループにとどまらない問題を考えよう.合衆国は,ほぼ確実に,情報技術を用いた「追跡・記録」システムの導入が必要になる.プライバシー保護をほどこして実施するのがのぞましいところだ.追跡・記録システムの一案として,位置情報の手法を用いるものがある.人々が物理空間のどこにいるのか追跡して,COVID-19 陽性と診断された人と近接したら,該当する個々人にテキストメッセージを送信する仕組みだ.
この技術を用いるには,利用者たちがスマートフォンをもっている必要がある.連邦政府はおそらくスマートフォン利用を義務づけたりはしないだろう.義務づけは政治的に不人気だろうし,実施も困難だろう.それでも,企業は労働者たちの安全を高めるためにこうした仕組みに頼ろうとする見込みが大きい.だが,そうするとまたこれが問題になる――「スマートフォンをすでに所持している人や費用をまかなえる人は,正確に言って,どんな人たちだろう?」 サービス業など,とても密接に他人と物理的に接触する仕事に就いている人たちは,比較的に賃金が安い労働者たちだ.
企業は従業員のスマートフォン購入を支援する方針を決めるかもしれない.もしかすると,政府も助成金を出すかもしれない.だが,そうすると,小売業や公共部門も含む業種・分野でスマートフォンをもっていることが雇用条件になる.
これは新たにいくつかの点でデジタル格差をいっそう悪化させることになる.地元のショッピングモールに行ったらどうなるか想像してみよう.店舗のオーナーたちは,キミが COVID-19 追跡アプリに登録していることを求めるかもしれない.あるいは,自分の健康状態を認証するスマートフォンがなければ免許の更新ができなくなるのを想像してみよう.
突如として,合衆国に新たな分断が生まれる――スマートフォンをもっている人たちと,もっていない人たちの分断だ.この分断で不利な方に身を置いていたら,いろんな場所やサービスの利用が不可能ではないまでも困難になるだろう.
結びの言葉:
たんにしかるべき機器を利用できないというだけの理由で,アメリカ人の生活で重要な施設の多くから人口の 10% かそれ以上の人たちが閉め出される事態が,合衆国で起こりそうだ.
誤解しないでほしい.このデジタル格差は,これ独自のかたちでさらに注意を向けられるべきだ.問題をとりちがえれば,どんな解決策が提案されても,たんにこっちの格差をあっちの格差に切り替えるだけではすまなくなるだろう.
ぼくなんて,「アプリでのご利用のみ」っていう駐車場でメーターをどう使えばいいのかもわからないていたらくなんだよね.哀れんでくれていいよ.