Tyler Cowen “Anti-Russia sentiment is the new McCarthyism” Marginal Revolution, March 1, 2022
というのがBloombergに掲載された僕のコラムのテーマだ。以下はそこからの引用。
ニューヨークのメトロポリタン・オペラはロシアのプーチン大統領を支持した演者は出演させないと発表した。カーネギーホールも同じ対応をしていて、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスは予定されているボリショイ・バレエ団の公演をキャンセルしようとしている。これからももっと多くの団体が後に続くだろう。ロシアの現代美術界はそもそも資金面で苦境に喘いでいたが、主にプーチンの最近の行動によって美術館や収集家から追放を受けることを恐れている。
賢いやり方じゃない。
公正もしくは正確な境界線を引くのはまず不可能だ。2003年のもっと穏健だった時期のプーチンは応援していたかもしれないけど今は疑いの目で見ていて、けれど家族は今もロシアで生活しているという人についてはどうすればいいだろうか。彼らに立場の表明を迫るべきだろうか。
もう一つ問題がある。ロシア人って正確には誰のことをいうんだろうか。民族的にロシアの人?ロシア国民?元ロシア国民?民族的にはロシア人で生まれはウクライナの人は?ソ連時代に生まれた少数民族のソ連時代のパスポートには、所持人はロシア人ではありませんと明確に書いてあるんじゃないかな。
それにベラルーシ人はどうだろうか。一部の情報によればウクライナに軍隊を送ろうとしているようだけど。彼らも同様の非難を受けるんだろうか。中国国民はどうだろう。中国はロシアの侵略に対する国連の非難決議を棄権した。ルワンダやコンゴ民主共和国からの演者が非難しなきゃならない戦争はどれのことだろうか [1] 。
このご禁制は具体的にどの時点で終わるんだろうか。
最後にこれも引用しよう。
どちらかといえば、1950年代のマッカーシズムのほうが現在のキャンセルカルチャーよりかは少しは説明のつくものだった。少なくともマッカーシズムは、当時大きな脅威とみなされていたものに対処しようとしていた。とはいえ、マッカーシズムはアメリカが復活させるべき習慣じゃない。魔女狩りは、そのまさに本質上、人間の一番いい部分を引き出すものではないからだ。アメリカ人の多くもそこに含まれる。
実際誰がキャンセルカルチャーに反対で誰が賛成なのかがそのうち見えてくるんじゃないかな。
タイラー・コーエン「ノルウェーチェス大会がロシア人選手を排除」(2022年3月3日)
Tyler Cowen “Norway Chess cancels Alexander Grischuk” Marginal Revolution, March 3, 2022
アレクサンドル・グリシチュークが今度行われるトーナメントから排除された。彼はウクライナでの戦争を批判してきたにも関わらずだ [1]訳注;wikipediaによれば、ウクライナ人チェスプレーヤーと結婚している模様 。ちなみにグリシチュークは国籍上はロシア人だ。こんなやり方は全く間違ってるし、公正でもない。
グリシチュークやほかのロシア人プレーヤーについて、嫌な気分になるとても不公正な話はここから読める(ドイツ語だけど、戦争反対を表明したネポ、スヴィドラー、デュボフなどのプレーヤーについて触れられている)。はっきりさせておきたいのだけれど、国際チェス連盟(FIDE)がやったように、ロシアとベラルーシを全てのトーナメントから排除することを僕は強く支持している。僕が反対しているのは個人を対象にすることだ。
こんな話があちこちにあふれてる。以下はメールで届いた情報:
「哲学史研究(Studies in the History of Philosophy)」編集部は、ロシア宗教哲学の特集号を出すという計画の中断を決定した。
こう言わざるを得ないよね:アメリカで働いているロシア出身者は、その政治信条がどうであろうと大きく昇進する可能性はなくなってしまった。チェコフがエンタープライズ号の艦長 [2]訳注;スタートレックのネタ になることはなくなったんだ。少なくとも今の時点では。
オリガルヒについては、僕は法を犯したロシア人に対して国内裁判所なり国際裁判所なりで訴追を開始することに全く賛成。それによってそうした個人の罪が認定され、裁判においてヨットの差し押さえが適切な補償措置とされるのであれば、差し押さえればいい。でも真に正当なプロセスなしにヨットを取り上げる?そんなことはノーサンキューだ。
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