〔※「結婚は通常財なのか?」とは,「所得が増えるほど結婚したいと思う人が増えるのか?」ということ.〕
男性の経済的地位と結婚するかしないかの結果との因果関係についてはほとんどわかっていない.これは,男性に生じる予期せざる永続的な所得ショックに関するデータが欠如しているためだ.本稿では,NBA ドラフトをめぐる自然実験を利用してこの問いに挑む.NBA では,大学バスケットボール選手や世界各国のバスケットボール選手を NBA チームが1位から60位まで指名して契約交渉権を獲得するドラフトを毎年実施している.選手のドラフト順位に関する専門家たちの予測は高品質であり,さらに,選手たちの初年度の給与はドラフト順位に応じて単調に上から下へと下がっていく.これをふまえて,本稿では,実際のドラフト順位と予測されていたドラフト順位の落差によって,外生的な所得ショックが生じることを示す.この状況のおかげで,新規な所得「処置」がもたらされる〔※対照実験での「処置群」に相当するものができあがる〕.この処置ではたんに多数で個々人が特定されているばかりでなく,〔所得ショックという処置が〕キャリア初期・成人期の初期に起こる.この年代の人々にとって,結婚に関する意思決定はとりわけ顕著だ.さらに,本研究では,選手たちの家族に関する主な意思決定を追跡した新規データセットを構築し,結婚が現に男性にとって通常財であることを初めて示す.他の条件が等しければ,2004~2013年の世代集団で初年度の5カ年給与が 10% 上昇すると,結婚の確率が 7.9% 上昇している.本研究結果は,男性人口全体の下限の推定を構成する.より低い方の推定給与ほど,効果量はより大きく有意になるためだ.
上記の抜粋は,トロント大学出身の Jiaqi Zou の論文から.彼女はいま求職中だ.彼女が研究目的に書いているこの一節がいい: 「人々が自分の人生でなにかを追究するのをはばむ障壁や信念を同定することにとりわけ関心がある」