タイラー・コーエン「著作家が賞味期限を長く延ばす方法」(2020年2月6日)

[Tyler Cowen, “How public intellectuals can extend their shelf lives,” Marginal Revolution,February 6, 2020]

知識人が質のいい著作活動を続ける期間がああも短い理由について, Scholar’s Stage が長文記事を書いている.著作家が賞味期限を延ばすコツについて,ぼくなりにいくらか書いてみよう.べつに,ぼく自身がそういうコツを全部きっちりやってってわけじゃない.ぼくのやってることじゃなくて言ってることを参考にしてもらいたい.

  • #1. コービー・ブライアント〔バスケットボール選手〕を見習おう.年をとればとるほど,若いとき以上にいっそう批判的に考えるようつとめないといけなくなる.たいていの人は,だんだん批判的思考の習慣をさぼりがちになっていくものだ.
  • #2. 他の著作家を批判するのを避ける.というか,できるかぎり否定的なことを避けること.どれほど差し迫った社会問題や経済問題があるにしても,自分が書こうとしてる文章を肯定的かつ建設的なかたちにあらためる方法ならほぼいつでも見つけられる.それには,いっそうがんばって考え続けなくちゃいけない.悪しき行状を見つけたときには,いかにも正当な否定的批判をぶつける方がラクだからだ.
  • #3. おそらく,自分で思い込みたがってるほど,自分の影響力はそれほど大したものじゃない.それに,名声には便益とコストがついてまわるものだ.そこで,自分なりの品質基準に合格するようにモノを書くこと.「自分ならこれくらいの影響をおよぼさなきゃいけない」と思ってその基準に合わせて書かないように.
  • #4. 余暇がたっぷりあるときに,新しい研究分野を選んで学び続けること.
  • #5. いままで行ったことのない旅行先に出かけよう.あんまりきっちりと計画を立てたりしないこと.たとえば,一般向け講演をギチギチにつめた日程を立てたりしてはいけない.
  • #6. 学生と交わること.とはいっても,「有名なセンセイが学生たちと言葉を交わす」モードではダメ.自分が何者なのか必ずしも気にかけてない相手に,興味をかきたてながら物事を説明しなきゃいけない経験の値打ちは大きい.
  • #7. 政界の候補者たちと議論するのはできるかぎり控えよう.「逃げる」ことができればなおよし.
  • #8. それほど分析的でも知的でもない人でも書けそうなことは,書かないようにする.ツイッターでもそういうことは書かない.
  • #9. 「ボタン」を押すべからず.〔ポール・サミュエルソンみたいな鋭敏な知性の持ち主でも,たまに気を抜いたかどうしたのか,「一時的におつむを弱くするボタン」を押したかのような言動をすることがある.そういうボタンを押すな,という話〕
  • #10. 楽しそうで陽気な人たちと付き合おう.そのうえで言うと,自分の(知的な)生活を難しくすること確実な気むずかしい友人ももつこと.両方とも必要だ.
  • #11. 真面目なフィクションをいくらかでもずっと読み続けよう.ジャンル・フィクションにはまた別の用途があるけれど,たいていは,この戒めを守る役には立たない.
  • #12. 友人・知人が知的・政治的にダメなことをやらかしたと思っても,その人との縁を絶つのはくれぐれも控えること.

他になんかあるかな?

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