〔1918年のインフルエンザ・パンデミックは〕たしかに酷い悲劇だったにはちがいないけれど,多くの地域では,近い年に起きた他の出来事の方がずっと酷かった.
1917年から18年にかけて,ニューヨーク市のおおまかな死亡率は,1,000人あたり 3.173名増えた.悲劇的ではあるものの,図1 の○で示した他の12の年では,前年比で見た死亡率の増え幅が,1917年から1918年のそれを上回っている.1832年,1934年,1849年,1854年のコレラ・パンデミックは,1918年〔スペイン風邪の年〕に比べて,前の年からの死亡率の増え幅が 3~5倍も大きい.他にも比較対象を挙げよう.ニューヨーク市の死亡率は,1800年から1905年のほぼすべての年で,1918年を上回っている.
〔※この図は訳者が補足して当該論文から引用したもので,元のブログ記事にはない〕
同じことは他のアメリカ都市の多くにも言えるけれど,ここではニューヨーク市の図を見ておこう:
さらに――
20世紀前半のどの年をとってみても,都市部に暮らすアメリカ黒人たちが伝染病で死亡する率は,都市部に暮らす白人たちが1918年インフルエンザ・パンデミックで経験したものを上回っていた.
これと関連した別の話題:
(…)証拠を見てみると,1918年パンデミックは合衆国の株価変動の大きな決定要因ではなかったことがうかがえる.
上記の引用は,いずれも Brian Beach, Karen Clay, & Martin H. Saavedra が新たに公表した非常に興味深い NBER 論文「1918年インフルエンザ・パンデミックとそこから COVID-19について得られる教訓」から.