タイラー・コーエン「Netflix経済学とNetflixの将来」(2022年2月9日)

Tyler Cowen “Netflix economics and the future of Netflix” Marginal Revolution, February 8, 2022

以下はテッド・ジョイアの記事から。

Netflixの市場シェアは一貫して下落してきており、今や50%を下回った。ある推定は、同社が消費者に占める割合が1年間で30%以上も下落したとしている。Netflixの最近の四半期報告書は悲惨なもので、同社株式の売りを招いた。この結果についてブルームバーグが歯に衣着せぬ評価の中に書いたように、「待ちに待ったネットフリックスの葬式がついにやってきた」と結論するのは簡単かもしれない。

もちろんながらNetflixには今も相当の価値がある。だから僕自身の考えは市場が示す以上にも以下にも楽観的じゃない。とはいえ、この問題における均衡がどんなものか考えてみる価値はあるだろう。Apple TV、ディズニー、Showtime、HBOMax、Hulu, Amazonプライムやほかにもサービスがあるけれど、最終的に僕らがこうしたサービスすべてに加入することになるというのは無理がある。じゃあどうなるだろうか。いくつか考えられる。

1 Netflixとその競合相手は、すべてのレントが尽きるまで新しい番組を生み出し続け、これらの会社は単に実勢の資本リターン率を稼ぐだけになる。実質的価値のある息の長い資産(例:昔のディズニー作品)によるレントは引き続き得られるかもしれない。このようなシナリオでは、新規参入や現職のプロデューサーによる多くの(より優れた?)番組もありえる。

2 規模の経済により、1社か2社の企業が最良の番組を作って最良の作品を買い上げる。ストリーミング配信市場は独占もしくは2社寡占となるけど、ほかのメディア媒体との間には激しい競争が残る。

3 配信企業は何らかの形で結託が可能になる。ひとつの可能性は、適切な割合で配分される共通料金で「フルアクセス」できるコンソーシアムを形成することだ。反トラスト当局がこれを許すだろうか。それとも反トラスト当局の介入の単に可能性があることで、結託ではあるけれども強力な独占と利潤最大化価格を伴わない結託となる可能性はあるだろうか。

4 配信企業はもっと部分的で曖昧な形での結託が可能となる。完全なコンソーシアムではなく、一部の比較的小規模な企業は1社か2社の規模の大きい企業への「提供」サービスへと進化する。こうした小規模な企業はどんどん提供契約に依存することになってサブスクによる収益への依存はどんどん下がっていく。これはたぶんよく見てみると2社寡占と似たようなものだけれど、頭数だけ数えるなら市場には2社以上いることになる。

Netflixにとってとても具合が悪いのは最初のシナリオだけのように思える。とはいえ、すべてのシナリオで短期的なレントの枯渇が進んでいて、短期的なレントの枯渇はNetflixにとっては高くつくものだ。彼らは視聴者の注目を維持するために「モノ」を提供し続けなきゃならない。新しい番組が安くても意味はない。市場に利益がある限り、顧客を維持するための「ハードル」は高まる一方だからだ。彼らの番組のうち、長く続く顧客の忠誠心を生み出しているはほとんどない。対照的に、未だにみんなが「刑事コロンボ」について語っているのにね!

法律を脇に置いて、どの結末が続くかを決める経済要因はなんだろうか。僕の直感では、マーケティングには規模の経済があるけど、番組制作には規模の不経済があって、メディア企業は大きくなりすぎて動脈硬化を起こしている。このことはシナリオ4に有利に働くかな。また、これはNetflixにとっては「まあOKではある」未来であるように思える。Netflixは投資とマーケティングと使いやすいウェブサイトを続けるけど、もっとよいコンテンツを探しによそへ行くことが増えるだろう。

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