●Tyler Cowen, “The Great Chocolate Boom”(Marginal Revolution, July 14, 2016)
世界全体のカカオ豆の生産活動を襲った劇的なショックの例としては、1880年代以降の「チョコレートの大ブーム」(“The Great Chocolate Boom”)――チョコレートの大衆向け市場の急速な発展――に勝るものはない。その間(1880年代から1914年にかけての「チョコレートの大ブーム期」)に、西洋世界におけるチョコレートの消費量は、コーヒーや紅茶の消費量を上回るペースで増える一方で、その価格は、コーヒーや紅茶の価格に比べると、安定を保っていたのである。・・・(略)・・・1870年から1897年までの間に、カカオ豆の世界全体での輸入量は9倍も増えている。その一方で、同期間に、紅茶の世界全体での輸入量はどれだけ増えたかというと2倍、コーヒーに関しては50%増にとどまっている。・・・(略)・・・イギリスでは、1870年から1910年までの間に、カカオ豆の一人当たりの消費量は6倍近くも増えたが、紅茶に関しては一人当たりの消費量の伸びは2倍に満たず、コーヒーに至っては一人当たりの消費量は半減している。
以上は、つい最近出版されたばかりの優れた一冊である(自学用に買い求めた)『The Economics of Chocolate』(編者はマラ・スクイッチャリーニ(Mara P. Squicciarini)とヨハン・スウィネン(Johan Swinnen)の二人)に収録されているウィリアム・クラレンス=スミス(William G. Clarence-Smith)の論文の一部を引用したものだ。
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●Tyler Cowen, “Is the Great Chocolate Stagnation over?”(Marginal Revolution, September 10, 2017)
チョコレート版大停滞(チョコレートの分野における技術革新の鈍化)の時代はまだ続くというのが私の意見だが、「いや、チョコレート版大停滞の時代は終わった」という意見もあるようだ。
1930年にホワイトチョコレートが開発されてからというもの、チョコレートの分野ではイノベーションが一切起きていない(新種が開発されていない)。それはそれでいいではないかとの肯定的な意見もあることだろう。『美女と野獣』に登場するコグスワースの有名なセリフに倣うと、「下手にいじくるな」(“if ain’t baroque, don’t fix it”)というわけだ。
しかしながら、Netflixにかじりつきながらムシャムシャできる、チョコレート風のクリーミーな新種のお菓子を開発する努力は、地道に続けられていたようだ。
スイスに本社を置くバリー・カレボー社――高品質のカカオとチョコレートの製造を手掛ける世界有数のメーカーであり、カカオの年間生産量は180万トン、年間の売上高は100億ドル近くに上る――で働く研究員の長年にわたる努力の成果が実って、遂に新種のチョコレートの開発に漕ぎ着けたというニュースが飛び込んできた。新種のチョコレートの名は、「ルビー」(Ruby)。ルビーカカオ豆を原料とする(見ていると朗らかな気分にさせられる)ミレニアルピンク色のチョコレート。着色料も添加物も使われていないが、ベリーのようなフルーティーな酸味がするという。
「ルビーチョコレートは、(ミルクチョコ、ホワイトチョコ、ビターチョコに次ぐ)第四のチョコレートです。強烈な感激を伴う味覚体験を約束してくれることでしょう」。バリー・カレボー社の代理人は、上海での初披露の際に、ルビーチョコレートについてそのように語っている。
全文はこちら(偉大なるSamir Varma経由で知ったもの)。