タイラー・コーエン 「我が子に珍しい名前を付けるべきもう一つの理由」(2006年10月7日)

●Tyler Cowen, “Another reason to give your kid a weird name”(Marginal Revolution, October 7, 2006)


ケヴィン・ドラム(Kevin Drum)が次のように報じている

テロリストの可能性ありと疑われる乗客をあぶりだすために、空港当局(運輸保安庁)が活用している「搭乗拒否リスト」。そのコピーを、『60 Minutes』の制作に携わる記者のスティーブ・クロフト(Steve Kroft)がどうにかして手に入れたそうだ。リストに載っている氏名とは?

ゲイリー・スミス、ジョン・ウィリアムズ、ロバート・ジョンソン。搭乗拒否リストに載っている氏名の一例だ。クロフト記者が総勢12名の「ロバート・ジョンソン」氏に取材したところ、ほぼ毎回のように、空港での保安検査で引きとめられた経験があると全員が異口同音に語ったという。厳重な身体検査を要求されるなどして、旅の計画が遅れに遅れることも。

「そうですね。『ロバート・ジョンソン』がリストから削除されることは、絶対に無いと思います」。そう語るのは、ドンナ・ブッセラ(Donna Bucella)。搭乗拒否リストの作成を取り仕切るとともに、2003年からFBIのテロリスト監視センターのトップを務めている人物だ。搭乗拒否リストに氏名が載っている方々には、不愉快な思いをさせて申し訳ないと陳謝しながらも、「9・11」以後の世界で安全を守るためには、必要な代償だとも語る。「搭乗拒否リストに氏名が掲載されている方々は、空港を訪れるたびに不便な体験をされることでしょう。それもこれも、テロリストであることが確定している人物だったり、テロリストの疑いのある人物だったりと同姓同名なためなのです」とブッセラ。

言いたいことはわかる。例えば、上院議員の中に「ロバート・ジョンソン」がいたらどうなるだろう? その場合、搭乗拒否リストがいくらか乗客に優しくなるように、FBIはあれこれと工夫を凝らすに違いない。我々有権者一同は、「ロバート・ジョンソン」を上院選で当選させるべきなのかもしれない。

これから生まれてくる息子が悪ガキ(悪人)に育ちそうだと予想する親は、我が子に「ジョン」という名前を付ける(息子の名前がデート相手にグーグルで検索されても大丈夫なように [1] … Continue reading)。その一方で、犯罪と関わり合いたくない市民は、「ジョン」という名前の持ち主を避けるようになる。かくして、ほんの数世代もすれば、新しい「分離均衡」が定着するに至る [2] 訳注;「ジョン」という名前が、善人か悪人かを識別する有効なシグナルとなる、という意味。わけだ。

References

References
1 訳注;悪ガキである息子の名前が珍しいと、デート相手にグーグルで名前を検索された場合に悪事がすぐにばれてしまう恐れがある。その一方で、息子の名前が悪人に多い名前(例えば、「ジョン」)と一緒だと、グーグルで検索してヒットした悪ガキの「ジョン」が、これからデートする予定のジョン君その人のことを指しているのかどうかわからない。
2 訳注;「ジョン」という名前が、善人か悪人かを識別する有効なシグナルとなる、という意味。
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