タイラー・コーエン 「直近バイアスを克服せよ」(2022年1月27日)

●Tyler Cowen, “Overcome your recency bias”(Marginal Revolution, January 27, 2022)


・・・っていうのが、ブルームバーグに寄稿したばかりの拙コラムのテーマだ。その一部を引用しておこう。

政治的な信条だったりメディアだったりが現在進行中の出来事に対する認識をどのように歪めるかについてはよく語られるが、人の認識を歪めることにかけてはずっと大きな役割を果たす可能性があるもう一つのバイアスがある。直近(ちょっきん)バイアス(recency bias)がそれだ。今後のことを予想したり、これから先のことについて計画を立てようとする時に、つい最近起きた(直近に起きた)出来事に過度に引っ張られてしまう傾向、それが直近バイアスだ。

もうちょっとだけ引用しよう。

核兵器関連の話題――核兵器の拡散にまつわる政策だったり、核兵器が使用される可能性だったり――に対してあまり注意が払われずにいるのも、直近バイアスの一種なんじゃなかろうか。原子爆弾は1945年以降一度も人に向けて使用されていないが、そのためもあってか、核兵器という存在は多くの人にとっては大きな懸案事項じゃない。それよりも、気候変動の方が脅威と思われている。しかしながら、利用可能な武器があれば、誰かが早晩それを使おうとするというのが、人類の長い歴史から得られる教訓なのだ。

直近バイアスを克服するための術は、割と単純だ。ネットでニュースを漁(あさ)る時間を減らして、その代わりに本を読む時間を増やせばいい。ネットで情報を入手するのであれば、あなたが関心を持っているテーマについて遠い昔にまで遡って歴史的に跡付けているサイトを訪れるようにすればいい。あなたがまだ若いようなら、お年寄りと話す機会を増やして、「あなたが僕くらいの年齢の時は、世の中はどんなでしたか?」って尋ねてみればいい。たった今紹介したようなテクニックを実践していたら(そのおかげで、直近バイアスから逃れられたら)、ロシアがウクライナの領土を分捕ろうと企んでいるらしいと知っても、大してビックリしないだろう。

どうか全文に目を通してもらえたらと思う。

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