●Tyler Cowen, “Noah Cowan interviews Tyler Cowen”(Marginal Revolution, December 29, 2016)
ブラウン大学のノア・コワン(Noah Cowan)から取材の申し込みがあって、話をしてきた。取材場所は、タコス専門店。インタビュー全文はこちら。私の回答の一部を以下に引用しておこう。
ポップカルチャーの方面では、科学が十分に重視されているとは言えませんね。科学(および、科学者)の社会的な地位は、今よりもずっと高くあってしかるべきだというのが私の考えです。科学の社会的な地位が向上すれば、(科学者を志す優秀な若者が増えるのに伴って)イノベーションも加速するんじゃなかろうかと思うんです。社会の成員一人ひとりが、科学という営みに今以上の敬意を払うようにすればいいんです。ある意味で、フリーランチ(タダ飯)が転がってるわけですね。科学の素晴らしさをみんなが今よりも強く信じ込めばいいだけの話であって、財布を開いてお金を払う必要は一切ないんですから。「科学者を敬え」と常々訴えているわけですが、今お話ししたようなことを言わんとしているわけです。お手本(ロールモデル)。小さい子供にとってお手本となる存在。そういう話にもなってきますね。この点で、テレビ番組なんかは非常に大事だと思います。『スター・トレック』だったり『ギリガン君SOS』だったりとかいうテレビ番組は、大勢の視聴者の心に科学のクールさを植え付ける役割を果たしたと思います。この方面では、オバマ大統領も大変素晴らしい仕事をしてますね。科学の大切さを訴える、科学重視の大統領。立派なお手本です。その影響力には限りがあるとは言え、オバマ大統領はとてもうまくやっていると思います。折々のスピーチを通じて、科学重視の大統領というセルフ・プロデュースに励んでいますからね。これまでの歴史を振り返ってみると、アメリカという国は、科学をそこまで重視してこなかったと思います。それにもかかわらず、我々アメリカ人は原爆の開発にも成功しましたし、アメリカという国はこんなにも立派な工業国になりおおせました。科学を重視する姿勢とナショナリズムとの間には、重なり合う部分が多いんでしょうね。「我々こそが、一番乗りで月に人類を送るんだ」という愛国的な心情が科学の進歩に大いに加勢した面もあるでしょうね。誠に残念ながら、それも長続きはしなかったようですがね。
インタヴュアーを務めてくれた切れ者のコアンの人となりについてはこちらを参照されたいが、彼はかなり若い時に(クイズ番組の)『ジェパディ!』でチャンピオンになっている強者らしい。
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●Tyler Cowen, “Very good sentences”(Marginal Revolution, October 3, 2011)
「アポロの月面着陸は、共産主義の最大の成果だ」。頭に白いものが目立つNASA(アメリカ航空宇宙局)のベテラン職員に、面と向かってそう言われたことがある [1] … Continue reading。
・・・と語るのは(SF作家の)ニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)。全文はこちら。最初から最後まで隈なく目を通す価値がある記事だ。
ところで、スティーヴンスンの最新作(2011年10月当時)である『Reamde』を少しだけ読んでみた。彼の大半の作品とは違ってうまく練られているようだが、彼の大半の作品から受ける印象とは違って面白味に欠けるところがあるように感じられる。
References
↑1 | 訳注;冷戦時代の敵国であるソ連(を筆頭とする共産主義陣営)に負けてたまるかという敵愾心(ないしは、愛国心)が、月面着陸をはじめとした西側陣営の科学技術の進歩を促す一因になった、という意味。 |
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