●Tyler Cowen, “Sentences to ponder”(Marginal Revolution, February 18, 2010)
幸福度の上昇幅が一番大きいのは、(旅を終えた後ではなく)旅行の計画を立てている時。学術誌であるApplied Research in Quality of Lifeに掲載された論文で、そのような研究結果が報告されている。来(きた)る旅行(休暇)について思いを馳せる行為こそが、幸福度を高める最大の効果を備えているというわけだが、その効果は8週間は持続するという。
さらに詳しい情報はこちらを参照されたい。
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●Tyler Cowen, “Claims about happiness and vacations”(Marginal Revolution, July 26, 2011)
この種の研究結果はいくらか割り引いて聞く必要があるが、興味深いことは否定できない。
オランダにあるNHTVブレダ応用科学大学で研究するジェロエン・ナーウィン(Jeroen Nawijn)は、「休暇版幸福曲線」の存在を探り当てた。長期休暇で旅に出てから最初の10%の時間にあたる局面では、これ以上ないほど気分が沈む状態が続くが、しばらくして「コア局面」を迎えると――休暇の70%の時間は、「コア局面」によって占められる――、気分も高揚する。その後は気分もやや盛り下がるが、自宅に戻る前日になると、再び気分は高揚する傾向にあるというのだ。
・・・(中略)・・・
オーストラリアにあるジェームズクック大学で研究するフィリップ・ピアース(Philip Pearce)は、グレート・バリア・リーフ周辺にある島(南の島)に観光で訪れた旅行客を調査対象に選んだ。その調査結果によると、旅行客の気分は、島を訪れてから2日目と3日目にとりわけ沈滞気味なことが見出されたという。どうやら、体に不具合が出てくる――皮膚に発疹が出たり、疲れを感じたり、アレルギーが出たり、耳の感染症に罹ったり、喘息(ぜんそく)になったりする――のが、ちょうどそのあたり(旅の2日目と3日目)のようだ。
長期休暇(旅行)の最中に気分が乗らない理由は、慣れない環境や文化の違いのせいばかりではないようだ。「自由な時間」それ自体も一枚噛んでいるようだ。オランダにあるティルブルフ大学で、「生活の質」(QOL)を専門に研究するアド・ビンガーホエッツ(Ad Vingerhoets)は、「自由な時間」が原因で気分が落ち込む現象を「余暇病」(“leisure sickness”)と命名している。「余暇病」の「患者」は、仕事の最中には気分が沈むことは滅多になくとも、週末や休暇になると(「自由な時間」が訪れると)、気分が塞ぎ込みがちになってしまうという。