タイラー・コーエン 「貨幣を介した間接交換と肥満気味の象」(2012年12月18日)

●Tyler Cowen, “Elephants engage in Mengerian indirect exchange”(Marginal Revolution, December 18, 2012)


インドのポンディシェリにある寺院では、象があなたを祝福してくれる。ただし、お金と交換に。お金をいくらか手渡せば、その見返りに象が長い鼻であなたの頭をトンと軽く叩いてくれるのだ。

寺院で飼われている象は、メンガー(Carl Menger)の教えに忠実な象でもある。象にとっては、お金それ自体は無価値な代物だ。しかしながら、象にはわかっているのだ。お金というのは、誰もが受け取ってくれる交換手段だ――それゆえ、お金を支払えば、自分が欲しいものを手に入れることができる――ということを。象は、誰もが受け取ってくれるお金という交換手段のおかげで食事にありつける。参拝客から受け取ったお金を住職に手渡すと、その見返りに食事を用意してもらえるのだ。

象が行っているのは、単なる交換じゃない。貨幣を介した間接交換 [1] … Continue readingなのだ。

以下の写真をご覧いただきたい。貨幣を介した間接交換を禁止する(象にお金を渡さないでくださいと訴える)張り紙が写っているが、どうやら象は張り紙の存在に気付いていないようだ。

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この話には、続きがある。タミル・ナードゥ州にある多くの寺院では、象が健康上の問題を抱えているという。寺院で暮らす象たちは、貨幣を介した間接交換のおかげでかなり裕福な生活を謳歌しているだけでなく、運動もせずに暇を持て余しているという。その結果として、寺院で暮らす象たちの間で、肥満が深刻な問題になっているというのだ。

References

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1 訳注;象は、参拝客を祝福するのと引き換えにお金を手に入れ、そのお金を住職に手渡すのと引き換えに食べ物を手に入れている。象が交換を通じて食べ物を入手できているのは、「お金」が間に介在しているからである。象が物々交換(直接交換)で食べ物を入手しようとするなら、参拝客の頭を鼻で軽く叩くのと引き換えに食料をもらうか、住職の頭を鼻で軽く叩くのと引き換えに食料を手に入れねばならない。以下の写真に写っている張り紙によると、参拝客が象に食料(および、お金)を与えるのは禁じられているようだが、そうだとすると、住職の頭を鼻で軽く叩くのと引き換えに食料を手に入れるしかないが、この取引が成り立つためには、住職が象に祝福してもらいたがっている必要がある(いわゆる「欲望の二重の一致」が成り立つ必要がある)。
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