タイラー・コーエン 「身体的な特徴と政治的な見解とのつながり ～利き腕の太さと再分配政策に対する賛否との間にはどんな関係がある？～」（2012年10月21日）

●Tyler Cowen, “Does physical strength influence male political views?”（Marginal Revolution, October 21, 2012）

エコノミスト誌で興味深い研究が紹介されている。

各人が抱く政治的な見解とその人の身体的な特徴との間には何らかのつながりがあるだろうか？　この疑問に真っ向から取り組んでいるのが、ピーターセン（Michael Petersen）氏とシュナイサー（Daniel Sznycer）氏が率いる研究チームだ。具体的には、富裕層から貧困層への再分配政策に対する賛否とその人の利き腕の太さ（利き腕の力こぶに力を入れた状態で測った腕周りの太さ）との間に何らかの関係が見出せるかどうかが探られている。

肉体的に逞（たくま）しかろうがそうでなかろうが、その人物が（経済的に）貧しければ再分配政策を支持し、（経済的に）裕福であれば再分配政策に反対しそうなものである。ピーターセン氏らの研究によると、女性に関しては確かにその通りだが、男性に関しては意外な結果が見出されている。

・・・（中略）・・・

出生国の違いやどのイデオロギーを支持しているかにかかわらず、（腕周りが太いという意味で）逞しい男性は、自己利益を追い求める傾向にあるという。どういうことかというと、肉体的に逞しくて経済的に貧しい男性は、再分配政策を支持しがちな一方で、肉体的に逞しくて経済的に裕福な男性は、再分配政策に反対しがちだというのだ。この結果は、特段驚くようなものでもないだろう。しかしながら、何とも意外なことに、（腕周りが細いという意味で）ひ弱な男性は、逞しい男性に比べると、自己利益を追い求める傾向がずっと弱い ^[1] … Continue readingというのだ。男性のケースとは対照的に、女性に関しては、肉体の逞しさと政治的な見解との間には何のつながりも見出せなかったという。裕福な女性は――肉体的に逞しかろうがそうでなかろうが――再分配政策に反対しがちであり、貧しい女性は――肉体的に逞しかろうがそうでなかろうが――再分配政策に賛成しがちだというのだ。

上の引用文中で紹介されている研究はこちら。ピーターセン＆シュナイサーが別のチームを率いて手掛けているこちらの研究（pdf）では、福祉政策（社会保障政策）に対する人々の態度の違いの源泉が探られている。シュナイサーのホームページはこちらだが、これまでに公刊された論文がすべて読めるようになっている。ありがたい限りだね。