Bladford Delong”Larry Summers:TheFive Best Books on Globalization” Grasping Reality with at Least Three Hands, September 17, 2018
ラリー・サマーズが挙げている「グローバル化に関する最も優れた5冊」は次のとおり [1]訳注:以下では原文のGoogleへのリンクをamazon.co.jpのものへと差し替えた。 。
- ジョン・メイナード・ケインズ ”The Economic Consequences of the Peace”(邦訳:「平和の経済的帰結」山形浩生訳 [2]訳注:ほかに「ケインズ全集 第2巻」収録の早川忠訳と救仁郷繁訳「講和の経済的帰結」があるがどちらも絶版。 )
- チャールズ・キンドルバーガー “Manias, Panics, and Crashes”(邦訳:「熱狂,恐慌,崩壊-金融危機の歴史」高遠裕子訳)
- ジョセフ・スティグリッツ “Globalization and Its Discontents”(邦訳:「世界を不幸にしたグローバル化の正体」:鈴木主税訳)
- マーティン・ウルフ “Why Globalization Works” (未邦訳:「グローバル化がうまくいく理由」)
- リチャード・ボールドウィン “The Great Convergence” (邦訳:「世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション」遠藤真美訳)
「平和の経済的帰結(1919年)」は,これまで書かれた経済に関する本の中で最も影響力のある12冊,おそらくは6冊のうちの1つに入る。100年もの間,ヴェルサイユ条約に関する議論の枠組みはこの本が基となっている。この本が第一次世界大戦後に何が起きるかということに関する政策議論に与えた衝撃は大きい。この本とその後に起きた出来事が相まり,第二次世界大戦後の国際システムを創りあげるにあたって敗戦国に対してとられた第一次大戦後よりもずっと寛容なアプローチが形作られたのだ。…
「熱狂,恐慌,崩壊-金融危機の歴史」…は,金融バブルと多幸感に関する歴史の決定版だ。金融バブルと多幸感は歴史が紡がれるなかで大きな影響を及ぼしてきた。…政策や経済環境は移り変わることがある一方で,人間の心理や恐怖と強欲の間の揺れ動きといったものはいつも私たちとともにあるのではないかというメッセージをキンドルバーガーの本は含んでいる。…
「世界を不幸にしたグローバル化の正体」は,グローバル化に関する見解について賛否両論含めて一通り知りたいという人はみんな読むべきだ [3] … Continue reading 。彼の批判…は貿易に対する人々の抵抗…を予見するものだった。
「グローバル化がうまくいく理由」…は,開放化に関してこれまで見た中で一番ぐっとくる古典的な経済的主張を行っている。…ウルフは交易によるあらゆる便益について説明している。…ウルフは世界市民として書いており,中国で数億人が貧困から抜け出したというような経済的な出来事の重要性について強調している。つまるところ,貧しい国が貧しいままに留まり,豊かな国が積極的に貧しい国を貧しいままにしておこうとする政策を追求するような世界が安定したりうまくいったりする見込みはほとんどない。だからこそウルフの本による教訓は非常に強力だ。
最後に…リチャード・ボールドウィンの「世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション」は,…グローバルサプライチェーン…知識共有における貿易とグローバルの役割…というグローバル化の最新局面についてとても力強く記述している。…ある国のあるサッカーチームが別の国のとあるサッカーチームと対戦を行うというのと,ある国のコーチが多くの国でコーチを行い始めてそれによって収斂が促進されるというのでは,話は全く異なる。ボールドウィンは後者の類の開放化は前者の類のそれよりも問題となりうると主張している。そして,貿易はそうした方向にどんどん進んでいる…
References
↑1 | 訳注:以下では原文のGoogleへのリンクをamazon.co.jpのものへと差し替えた。 |
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↑2 | 訳注:ほかに「ケインズ全集 第2巻」収録の早川忠訳と救仁郷繁訳「講和の経済的帰結」があるがどちらも絶版。 |
↑3 | 訳注;なお,デロングが省略している箇所でサマーズは「この本の内容の多くに賛成できない」が,「この本は開かれたグローバルシステムに対する批判の多くについて主導的な役割を果たしたもので,注意を向けるに値する」としている。 |