Mark Thoma, Paul Krugman: Health Reform Lives!, (Economist’s View, November 23, 2015)
最近の 「医療制度改革に関する良くない、少なくともいまいちパッとしないニュース」 の為にオバマケアが頓挫する事はないだろう:
医療制度改革は死んでない!, ポール・クルーグマンの論説 (ニューヨークタイムズ): 右翼陣営には残念なこととなったが、種々の脅し作戦も -『死の審議会』 の件をまだご記憶だろうか?- またでっち上げの法律問題も、ついに我が国を医療保険の保証適用範囲 [訳注: guaranteed health coverage] がもたらす厄災から守る事能わなかった。しかしオバマケア反対者は依然として、これがいずれ低い保険加入者数と高まるコストが織り成す『死のスパイラル』に陥ると主張し続けている。
しかしながら、同法律の最初の2年間は頗る好調だった。保険に加入していないアメリカ人の数は激減した…そしてコストの方も予想よりかなり少なく済んでいる。…
以上の点に言及したのは全て、嬉しい驚きが続く中で合間合間の小休止となった最近の情勢について、一定の見通しを紹介する為だ。確かにこの頃オバマケアは幾つかの難局を迎えた。だがそれは諸般の報道、ましてや右翼陣営がその反動を以てあなたに信じ込ませようとしているほど深刻なものでは全く無い。医療制度改革は依然として大躍進を続けているのだ。…
第一に、来年には保険料 [premiums] が値上げとなる見込みだが、これは自らのリスク・プールが幾分不健全 [somewhat sicker] になっている事、したがって予想していたところより高くつく事に諸々の保険会社がその気付き始めた為だ。州単位ではかなりの差が在るが、平均増額はおよそ11%分となろう。まあ少しがっかりといったところだが、大ショックという程ではない。これまでの2年間の好報と、長期的にみると保険料には毎年5%から10%上昇する傾向が有る点を併せて考えればそういう結論になるだろう。
第二に、低価格保険プランの購入に踏み切った一部のアメリカ人は、高額の年間自己負担額 [deductibles] のせいで嬉しくない驚きを被る事となった。実際これは問題だが、誇張は避けるべきである。許諾されている全ての保険プランが自己負担額無しの予防サービスをカバーしているし、また多くのプランではその他の医療サービスもカバーされている。それだけでなく、低収入世帯には追加的な財政援助が利用可能となっている… こういった緩和的要素の事を知らない人もいるかも知れない…が、徐々に周知のものとなってゆくだろう。…
ああ、他にも公式の予想によれば、こういった医療保険取引所 [exchanges] で保険に加入する人はこれまでの予測より少なくなる事が見込まれるという。しかしその理由は主として、保険適用範囲を削減した雇用者が驚くほど少なかった点にあった。つまり、全体的にみた、保険未加入のアメリカ人の数についての予想はまだまだかなり良好なのだ。
となると、いま我々はどういう状況に置かれているのだろうか? オバマケアの予想だにしない好報ラッシュに終わりが来たのは疑いない。かような大躍進が何時までも続かないのは当然なのだ。…道すがらの二三の失策も避けようのないものだ。
だがしかし、我々はここにあの『死のスパイラル』 の始まりを見出すのだろうか? そう言う人も一部には居るが、私の見る限りこの人達は、オバマケアが一歩踏み出すたびに破滅を予言し続けてきた様である。…
現実を直視しよう。オバマケアは不完全な制度である。しかしそれは機能しうる制度であり – 現に機能しているのだ。