Mark Thoma, “Paul Krugman: Health Reform Realities“, (Economist’s View, Monday, January 18, 2016)
単一支払者制 [single-payer] 医療制度の制定に取組むべき価値は在るか?:
医療制度改革の現実: ポールクルーグマンの論考 (ニューヨークタイムズ): …オバマケアは…忙しなく働く可動部分が山ほど付いた、幾分ごたごたぎこちない制度である。だから費用は本来あるべきところより高くついてしまっているし、そのせいで制度の隙間に落ち込んだまま見過ごされてしまう人が将来にも常に相当数出て来るだろう。
そこで進歩派にはこの問いが突き付けられることとなる。いまや民主党予備選挙の中心的論題ともなっているその問いとはすなわち、以上のような欠点が故に、進歩派は自らが成し遂げた、ほぼ半世紀に亘る期間中で最大の政治的成功を一から検討し直し、何らかのより優れた制度の確立に向け取り組む必要が在るのか、それとも無いのか、これである。
私の答えは…否、その必要は無い、進歩派は医療制度の漸次的変更を目指すべきである (公的医療保険 [public option] を復活させよ!)、そして他の問題への取組みに専ら力を割くべきである、となる…
仮にまた一から始めることとなれば、医療経済学者の多く、いやきっとその殆どが、単一支払者制度の採用を推奨するだろう。つまりメディケア型の制度であらゆる人をカバーする方が良いという訳だ。しかし [アメリカにおいて]、単一支払者制度は政治的に実現可能な目標ではない。それには3つの大きな理由が在る…
第一に、好むと好まざるとに関わらず、既存勢力が大きな権力を握っているという事実が在る。…
第二に、単一支払者制度を採用すればかなり大きな追加的税収が必要となる – したがって中間層の租税を議論の俎上に載せねばならぬこととなろう。…
最後に、またこれが最も重要な点ではないかと疑っているのだが、単一支払者制度への切り替えは、現在すでに雇い主を介して良好な保険適用を確保している何千万もの世帯に大きな混乱を生じさせることになりそうなのだ。…
これが意味するのは、医療政策の専門家Harold Pollackも指摘している点だが、全くの純然たる単一支払者制度はどうにも実現しそうもないということである。…
そこでアフォーダブル・ケア・アクトの話になる。というのも、同制度は前述の障碍を回避できるように設計されたのだった。…それでもなお、本改革の実現は際どいもので、民主党員は合衆国議会の主導権を握ったのほんの束の間に辛うじて同法案を通過させることが出来たに過ぎない。したがって、何か抜本的な改革案をそう遠くない時期までに、例えば続く8年以内にでも、制定させる現実的見込みが幾らかでも在るかと訊かれれば、 否と答える他無い。
やってみるだけの価値はあるのでは、そう仰る方もいるかもしれない。だが政治というものも人生と同じで、何かを得る為には何かを犠牲にしなければならないのだ。
進歩派の政策課題事項は多い。効果的な気候変動政策をはじめ、大学を誰もが手の届く所にする事、失われた労働者交渉力を幾らかでも回復させる事にも取り組まなくてはならない。これら事項の何れを進展させるにせよ、道のりは辛く険しい。この点はもし仮に民主党員がホワイトハウスを手中に収め、さらに、可能性は低くなるが合衆国上院までも再び自らのものとした場合でも、変わらないのである。…
したがって、進歩派は幾つかの優先事項を設定してゆかねばならない。そして、こういった情勢の下では、せっかくの政治的資本を一旦やり終えた事項のやり直しそうというドン・キホーテ的試みに費やすべき理由を見出すのは困難といわざるを得ない。それも失政を挽回しようというでなく、医療制度改革を、民主党の久方ぶりの大成功をやり直そうというのだから、尚更だ。
せっかく興味深い記事なのだから、訳すならきちんと訳してほしい。これではGoogle翻訳と大差ない。よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
訳文を読み返したうえ何点か修正しましたので、ご確認下さい。