●Mark Thoma, “‘The Light Bulb Cartel and Planned Obsolescence’”(Economist’s View, October 09, 2014)
今日は忙しくてブログまでなかなか手が回らないのだが、とりあえず目に留まった記事をいくつか急ぎ足で紹介しておくとしよう。今回取り上げるのは、ティモシー・テイラー(Timothy Taylor)のブログエントリーだ。
“The Light Bulb Cartel and Planned Obsolescence”:
1951年に製作された『白衣の男』――主役を演じたのは、アレック・ギネス――は、愉快なSFコメディ映画というにとどまらず、テクノロジーや「計画的陳腐化」についてのよく練られた物語でもある。アレック・ギネス演じる主人公の研究員(シドニー)は、まったく新しい画期的な繊維の開発に成功する。汚れもしなければ、擦り切れもしない究極の繊維。この繊維のおかげで、今後は洋服代や洗濯代が節約できるようになるに違いない。そんな未来像を心に描くシドニー。シドニーが発明した繊維は、当初のうちこそ世間から驚きをもって迎えられたものの、瞬く間に風向きが変わって、シドニーに対する風当たりは強まる一方に。「シドニーが発明した繊維を素材とする衣服が商品化されてしまったら、倒産待ったなしだ」と恐れる繊維・衣服業界の重鎮たち。繊維会社の工場で働く労働者たちも、「我々の職が失われてしまう」と戦々恐々。「我々の職も失われる」と洗濯(クリーニング)を生業とする面々も追随する。エンディング間近の場面で、登場人物の一人がしかめ面で指摘する。製品の出来が良すぎると、商売はうまく回っていかない。曰く、「あれやこれやの発明はその後どうなったと思う? 切れ味が落ちないカミソリの刃だとか、ほんのわずかの燃料で水上を疾走する車だとかはどうなったと思う? [1] … Continue reading 」
企業の経営陣が売り上げを伸ばすために、製品の質をあえて落とす決断を下した――「計画的陳腐化」に手を染めた――「これぞ」という例を、現実の中から探すとなるとなかなか難しい。現実の市場に出回るのは、「低品質で低価格」の製品か、あるいは「高品質で高価格」の製品かのいずれかというのが通例であり、企業による商品化の決定には、消費者の声(世間の人々が何を買いたいと思うか)が大いに反映されるものなのだ。しかしながら、「計画的陳腐化」の実例もないわけではない。マルクス・クライエフスキー(Markus Krajewski)がIEEE Spectrum誌の2014年10月号でその一例を詳しく取り上げている。題して、“The Great Lightbulb Conspiracy: The Phoebus cartel engineered a shorter-lived lightbulb and gave birth to planned obsolescence”(「白熱電球をめぐる大陰謀:ポイボス・カルテルによる計画的陳腐化の試み ~『白熱電球の寿命を縮めよ!』~」)。〔以下続く〕
References
↑1 | 訳注;そんな夢のような発明は、どれもこれも結局のところは(消費者が買い替えをする必要がなくなり、そのために会社の業績悪化を招くと懸念されて)商品化されずに終わったんだよ(そして、君が発明したその繊維も同じく商品化されないことだろう)、という趣旨のコメントが後に続く。 |
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