Paul Krugman, “Lies, Damned Lies,” Krugman & Co., October 25, 2013.
ウソだよ,くそったれなウソだ
by ポール・クルーグマン
先日,フォックス・ニュースのコメンテータのショーン・ハニティが自分の番組で《本物のアメリカ人》による実話を特集した.適正価格医療保険法のせいでいかに苦しめられているかという体験談だ.そこで,モンタナ知事ブライアン・シュヴァイツァーのために働いたこともあるエリック・スターンは,冴えた考えを思いついた:実際にハニティ氏のゲストたちを呼んで,詳しい話を聞くことにしたんだ.
当然ながら,スターン氏が『サロン』に書いた記事によれば,オバマケアのせいでコストが跳ね上がって,従業員のレイオフを余儀なくされたと主張したビジネスマンは,いま4人の従業員を雇っている――つまり,オバマケアは彼の事業になんら影響をもたらしてないわけだ.プレミアム価格が急騰していると不満を語った2つの家族は,実際に提示されているものを確認していなかったし,それどころか,スターン氏の推計では,2つの家族とも,大幅な倹約になりそうだという.
不思議な話じゃないか.全米に放送される番組に出演して,いかに苦しい思いをしているか不満を語った人たちの論拠が,よそで聞いた話でしかないなんて,彼らの内心には,いったいどういうものの考え方ができあがっているんだろうね.
それに,相手の言い分にどういう根拠があるのか確認せずにこういう人たちを取り上げてしまうなんて,ニュース番組を自称してるくせに,どういう番組なんだろうね.
© The New York Times News Service